グーグルは「本音」を語る | ただのオタクと思うなよ

グーグルは「本音」を語る

くちやまだ とも
PHP研究所
発売日:2010-02-13


Googleの「本音」はどこに?

 Googleで検索するものというと人の名前や企業とか、固有名詞というケースが私の場合多い気がします。普通の言葉は辞書で調べればいいですからね。で、ある特定の人の名前を検索にかけると、関連語が添えられた組み合わせがいくつか、画面の最上部に並ぶわけですが、それを見ただけで、少なくともネット上でその人物がどう扱われている存在なのかが、図らずもわかってしまうものです。例えそんなことに興味があって検索したのでなくとも。

 これがいいことなのか悪いことなのかはわかりません。ただ、確実に言えることは決してその表示結果は自然現象ではないということです。集団知の恐ろしさというか、レッテル張りのすさまじさというべきか。

 そんな人為的であるはずの現象を、固有名詞でなく一般名詞においてまとめてみたのが、本日紹介する一冊「グーグルは「本音」を語る」です。

 早い話が、例えば検索窓に「夫」などと単純な名詞や形容詞を入れたとき、お節介にもずらっとプルダウン形式で並ぶ関連ワードの組み合わせをながめながら、「検索人類」の総意を読み取ろうというのがこの本の狙い。安易といえば安易ですが、なかなか、企画力の勝利といった一冊です。

 で、帯にもある通り、「夫」と入力すると筆頭に出てくる言葉は「死んで欲しい」。これ、妻の本音にしてはあまりに残酷に映るわけですが、私、ふと考えました。この組み合わせを検索窓に入力する動機は何なんだろうと。

 本当に「死んで欲しい夫」であるなら、そもそも検索枠に書いて何になるのだろうと。「大様の耳はロバの耳」よろしく、木の穴に叫ぶ代わりがGoogleのトップページなのでしょうか?やり場のない不満のぶつけどころが検索窓なのでしょうか?私がGoogleを使う習慣性からはかけ離れた使い方が、世の中では拡大しているということなのですかねえ。

 実際のところ、今ではこの組み合わせはプルダウン選択から削除されているようですが、「死んで欲しい」と入力すると、今でも筆頭に来るのは「夫」、次が「旦那」と。ただ、その横にでいる数字は両方を足して約100万件のところ、それを遙かに上回る数字がついていたのが「彼氏」の198万件。そんなに死んで欲しいならハナからつきあうなよ、とずっと独り身男の私は思うのですが。男女の関係って、よくわからないですねえ。

 そんなこんなで、男への本音、女への本音、上司への本音、部下への本音等々、人間関係のいやーな部分から、仕事、会社、巨人ファンに阪神ファン、合コンに婚活など、関連語を2つずつ並べて人々の視点を横から眺めていくと、実に生々しいネットの使い方が見えてくること。

 そんな中で、私が引っかかったのは「妹」。べっ、別に変な意味じゃなくて、ここに出てくるあらゆる検索語の中でこの「妹」だけが関連語が一切ついてこない。「姉」の方は「誕生日プレゼント」などほほえましい言葉が並ぶのに。

 これは、とりもなおさずオタクどものせい(だと思う)。要するに、「妹萌え」なんて言葉がネット上にあふれ出ているのは周知の事実なわけですが、これがGoogle的に「18禁」ワードに牴触するわけですわ、なぜか。これ、なんかおかしいですよね。「夫」+「死んで欲しい」がOKで、「妹」+「萌え」がNGという倫理観。そもそも言葉に倫理を求めることの方がナンセンスではないんですかね。それともこの、何も出てこない部分にこそ、「Googleの本音」が現れているのでしょうか。