クラウドなんて、ただの雲だよ | ただのオタクと思うなよ

クラウドなんて、ただの雲だよ

 「クラウド」「クラウド・コンピューティング」という言葉が、最近PC専門書の枠を出て一般メディアでも見かけるようになりました。新しめの言葉に飛びつこうとするのはマスコミの習性ではありますが、一方で、記者の把握能力を超えた言葉というのはなかなか世には出にくいもので、その意味で「クラウド」という言葉は、一般の記者でも説明しやすい環境が成立してきたということが言えるのでしょう。

 でも、ですね。じゃあ「クラウド」ってなんですか?と、改めて聞きたくなるわけですよ、そう言う得意げに新しげな言葉を振りかざす記事には。私もこのブログでたびたび関連書籍を取り上げて、使ってきた言葉ではありますが、実際のところ「クラウド」なる言葉を知っていようがいまいが、ネットを軸においた生活においても何ら困るところはない。これまでも、これからも。そう思わずにいられないのですよ。

 だって、例えばツイッターやブログなどで、「これからはクラウドコンピューティングの時代だあああああ」なんて台詞、恥ずかしくて書けませんよ、わたしには。そんな言葉がどうとかより、「今自分はこんな機器やあんなアプリを使って便利に楽しく暮らしてます」ということを語れば済むわけですから。

 ちょうど20年くらい前ですか、「これからはマルチメディアの時代だああああ」などと恥ずかし下もなく語っていた某マスコミ幹部が私の身近にいたのですが、それと同じことが今のマスコミで起こっているようにも思えます。

 なんでこんなことを語り出したかというと、本日発売の月刊「日経トレンディ」3月号でクラウド特集のようなものが組まれていたんで、その引き合いに出したかったのですわ。

 で、この「日経トレンディ」の中で「御社にとってクラウドの定義とは?」という議題を付けて、GoogleからYahoo!からMicrosoft、さらにはソニー、NECなどネット、ソフト、ハード系を問わず主立った企業に聞いて回っているのですが、出てきた答えはてんでバラバラ。まだ結論は出していないというような回答もありましたが、早い話、「クラウド」なんてただの「雲」、それがなんであるかなど本質的に追求することにはあまり意味がないというのが現場の感覚ではないかと、これら回答群から読み取れるように思います。

 マスコミというのは得てして何か象徴的な言葉を見つけては、その言葉で時代の傾向をひとまとめにしようと動く習性がある以上、「クラウド」という言葉を使いたいと考えるのはある意味必然。でも、マスコミ以外、つまり提供する企業も使う一般ユーザーも、聞き慣れない言葉にわざわざ寄っかかる必要はにのです。直感的に「このサービスが楽しい」ということさえわかれば十分で、そこで残るべきものが残って新たな世の中の流れができてくる。マスコミも、覚えたての言葉を振りかざすより、サービスごとの楽しさをもっと前面に出した伝え方を優先してこそ、啓蒙者としての立場を保てるのではないかと思います。