Googleの正体 | ただのオタクと思うなよ

Googleの正体

牧野 武文
毎日コミュニケーションズ
発売日:2010-01-23


ヒントは「一心不乱さ」

 どこの誰かは知らないけれど誰もがみんな知っているもの、なーんだ?って、ベタな入り方をしてしまいましたが、ネットで稼いでいる会社って、実際のところどうやって儲かっているのか、わかりにくいケースが多いですよね。最近流行のTwitter(ってこのブログで白々しく言うなって)も、そろそろテレビでも話題を聞かない日がなくなってきたくらいに名前だけは知れ渡りつつありますし、実際、関連書籍もどんどん発売されているわけですが、Twitterが儲かっているという話はどうも聞こえてこない。YouTubeもまたしかりです。

 そこへ行くと、日本のネット企業というのは案外儲けどころがはっきりしているケースが多いような気がします。国内では最大手の部類に入るYahoo!Japan(アメリカのYahoo!とはいろいろ事情が違う)も、ソフトバンクという強力なバックがあるし、広告収入もそれなりにあるのだろうなと、表のサイトを見ただけでも何となく伝わってきます。ニコニコ動画も商売っ気は前面に出しつつあり、当のひろゆきは黒字にしたくないとか何とかいっているようですが、そこそこ儲けは生みそうなにおいはします。実際の決算書を見ないことには明確なことは言えませんがね。

 そんななかで、一番儲けどころがわかりにくい極みと言えるのがネット界最大のオバケ、Googleではないでしょうか。きょうはそのGoogleの謎を赤裸々にするべく挑んだ一冊「Googleの正体」を紹介します。

 Googleがどうやってもうけているかというと、「広告収入」といわれていること自体、百も承知ではあるのです。ただ、日本のGoogleに乗っかっているアフィリエイト広告とかって、あれ見て不思議に感じやしませんか?何であんなしょぼい広告ばかりなのかと。確か神田敏晶さんでしたか、「Googleの広告はタクシーの車内の広告みたい」と表現されていましたが、私の印象もまさにそれ。誰がこんな広告の商品に引かれるんだと。でも、広告って読んで字のごとく、広くばらまいてなんぼなわけですよ。

 Googleの検索画面やGmailやGoogle CalendarやGoogleマップが世界中で1日に何億回、パソコンや携帯端末のディスプレイに表示されるのかはわかりませんがGoogleの規模ほどに大量にばらまかれれば、どこかでクリックする人がさすがにいるという理屈なんですよ。だからそういう媒体に、トヨタだのソニーだのといった大企業の広告が載っかる意味は逆にない一方、中小企業やベンチャーにとっては、安い広告費で広大な世界のどこかにいる勘違いかも知れないけれどクリックしてくれるお客さんが釣れるなら安い投資なわけで、そういった小さな粒をがばっとかき集めた結果がGoogleの収益に繁栄をもたらしているんですね。

 ふむなるほどそれは何となくわかった。じゃあ何でAndroidだのChrome OSだのNexus Oneだのとただ同然のアプリケーションや携帯電話まで作って、今まで幸せに暮らしていた既存市場をぶちこわしにかかろうとしているの?というとべつに「Google帝国」を打ち立てて世界征服を企んでいる訳じゃないんです(いや、最終的にはそれに近いものを目指しているようですが)。

 あくまでGoogleが目指しているのは、全世界をオンラインでつないで森羅万象を検索できる世界を構築すること。この目標に対してバカみたいに一心不乱なのです。そのために携帯電話を売らなければならないというのが彼らの回答なのです。なぜ携帯か。地球上には線でつながってない地域がつながっている地域より圧倒的に多いからです。森羅万象をつなぎ合わせるには、その穴を埋め合わせるツールとして、線がなくてもネットにつなぐことができる携帯機器が必要になる(電力などのインフラはまた別に考えているのがGoogle思想のの遠大さでもあり)。まさに彼らは、バカみたいに一心不乱に、検索にこだわり続けているのです。

 数年前、世界中に出回ったフラッシュ動画「Epic2014」というのがあって、そこではGoogleとアマゾンの統合が予言されていましたが、たぶんこの組み合わせは実現しないでしょう。なぜなら、バカみたいに一心不乱の方向性の中に、たぶんアマゾンは引っかかってこないからです。アマゾンがGoogleを欲する理由はなくもないのでしょうが。

 そんな解釈も、この一冊を手にできたからこそ、はじき出すことができました。今年中に登場するというChrome OSが、次にネット上にどのような変化をもたらすかはまだ見えてきません。ただ、想像できないすごい変化が訪れるであろうことは、この一冊を読むことでより明確に予測することができます。この本は、その大変化に備えて、今絶対読んでおくべき一冊です。