子鉄&ママ鉄の電車ウォッチングガイド | ただのオタクと思うなよ

子鉄&ママ鉄の電車ウォッチングガイド


電車好きの子供とママとのWin-Winな付き合い方

 鉄道ファンと言えば、かつては辛気くさくむさ苦しいうだつの上がらぬ男どものしみったれた趣味(そこまでさげすまれなくてもいいって?まあ自虐ですから)と、認めたくないながらも自覚していたものです。しかしここ数年「鉄子」さんなる救世主な種族が登場し、またイケメン芸能人(例えば半田健人、え?何かが違うって?)が鉄道好きであることを堂々とカミングアウトするご時世になるや、日陰者からにわかにお天道様の下を堂々歩ける身分になりました。

 しかしそれでも、まだ鉄道とは縁遠い聖域があると、私は思い込んでおりました、それは何あろう、家庭の主婦層です。子育て中のお母さんでも、「何で子供が電車なんかを好きになるのか理解できない」なんていう話をよく聞きます。その上、子供を連れて外出すると、線路沿いでも歩こうものなら「でんしゃでんしゃ!」と騒ぎ立てる我が子に、ほどほどウンザリしているお母さん方は少なくないでしょう。

 でも、あまり不機嫌な顔ばかり子供に見せるのは、教育上よろしくないですし、何よりご自身の健康にも差し障りが出てこないとも限りません。ならば子供の立場に立って、電車好きのママへと変身してしまった方が手っ取り早いかも知れません。そんな、素敵なままに変身するためのガイドブックが、本日紹介する一冊「子鉄&ママ鉄の電車ウオッチングガイド」です。

 この不況長引く中にあって、「ディズニーランド連れてって」とか「おもちゃ買って!」とねだられるのに比べれば、「でんしゃ見たい!」といわれるほうが安上がり。首都圏近郊に住んでいる方なら、数分も歩けば何かしらの鉄道の線路に出くわすでしょうからね。でも、せっかく出かけるんだったら、ただその辺の電車を毎度毎度見に行くだけじゃ味気ないし、同じ電車ばっかり見させられる子供はあっという間に飽きてしまうもの。ということで、なるべくお金がかからず、小さい子供を連れての移動が苦にならない長くない形で楽しめるおすすめポイントや散歩コースを紹介してくれるのがこの本です。

 ビジュアル系の鉄道関連本というと、どうしてもプロカメラマンの手による眩く荘厳な新幹線や特急列車の雄姿ばかり強調されたものが多いのですが、あくまで子供の目線で楽しめるポイントに重点をおいたのがこの本の最大の特徴です。例えば、ひっきりなしに様々な種類の列車が行き交う線路脇とか、子供と一緒にランチを食べながらすぐ横に目線をやるとお目当ての電車が行き来するレストランの席とか。

 親子向けだけじゃなく、撮り鉄系の人々にも重宝する内容ともいえますが、場所によって決定的に違うのは、カメラを向けるときじゃまになる線路脇の金網など、子供が電車ウォッチングをするにはなくてはならない文字通りのセーフティネットの存在。そして、ひとたび子供がぐずり出したり、トイレに行きたいと言い出したときの「緊急避難施設」が周囲にあるかも極めて重要。その点は身をもって体験している筆者ならではの視点が活かされているといえましょう。

 そしてこの一冊を通して筆者が伝えようとしているのは、単に鉄道好きの子供を育てるだけではなく、はるか先の未来に続く鉄路に夢の電車を走らせて欲しいという、ママ鉄としての子供への願いが込められているように思えます。

 何もママも鉄道好きになっちゃえというのではありません。子供の大好きなことと母親の夢とのWin-Winの関係を造る架け橋にこの一冊がなってくれればと、鉄道を愛するものの一人として強く感じます。