オタク論2! | ただのオタクと思うなよ

オタク論2!


唐沢 俊一,岡田 斗司夫
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それでもオタク貴族は生き続ける!

 毎年年初恒例の「日本オタク大賞」というイベントのがありまして、ここ5回ほど続けて会場で直接みてきたのですが、どうも今年は転機が訪れた気がします。一つは、紹介されていることの大半が昨年放送されたり劇場公開されたアニメの話だけで、ほとんど話しについて行けなかった点。これほどオタク文化が多方面へ拡散しているというのに、アニメとネットだけかよ、それがオタクのすべてなのかよ、と、強いギャップを感じたのです。
 そしてもう一点、オタク第1世代の論客がイベントから完全に姿を消したこと。やはりオタク消費のメインストリームは、明らかに世代交代が起こったようです。私を含め、オタク貴族ともいえる第1世代としては、今の風潮にもはやついて行けない、というかついて行きたくない気持ちになってしまっている。そんな現状なのでしょう。
 それでも、場所を変えつつしたたかに生き続けるのがこのオタク貴族なのであります。今回はその第1世代の2大巨頭であり、長年「オタク大賞」の顔だった岡田斗司夫さんと唐沢俊一さんによる対談集「オタク論2!」を紹介します。
 月刊誌「創」に昨年まで連載されていたものをまとめたもので、2年前に出た「オタク論!」の続きの「2」な訳で、今回も様々なオタクネタを、時に大まじめに、かつ無責任に語っております。そのすべての項目についてここで触れるときりがありませんので、気になった項目をいくつか取り上げてみましょう。
 まずは「オタク論壇の老害化」。どうやら老害の対象とされているのはこのお二人ではなく、東浩紀氏あたりのオタク第2世代をさしているそうなのです、世間的には(どこの世間かよくわかりませんが)。つまりすでに第2世代と第3世代の世代間論争が中心になっているのだと。「新世紀エヴァンゲリオン」を見ていろんな意味でショックを受けて、それを土台に評論を繰り広げたり、オタクを定義しきたり仕切ったりしてきたのがいわゆる第2世代(主に30代半ば)とされていて、ネットをベースにしたオタクコミュニティが基本にある20代の連中が第3世代というのが、岡田さんの定義付けというか概念のようで、まあ一般的にもそんなとらえ方がされているようです。で、その間で何が起きているかというと、著書などで論を積み上げてきた第2世代が、ブログなど「低コストメディア」を使って主張を展開する「オレサマ度」が強い第3世代の突き上げを食らっているのだとか。
 まあ、我々貴族たちは高みの見物というか、どうでもいい内ゲバに過ぎないのですが、若いオタクたちには、我々の頃の「社会に認められたい」みたいな、オタクとしての目標というか拠り所がなくなっているという風な指摘はちょっと気になりました。
 そして、ネットに流れる情報の扱い方についての話。ちょうど、先日ここで取り上げた「ウェブはバカと暇人のもの」あたりにも通じる話で、ネット住人なるもののおおかたが、いかに情報を偏った取り方しかしていないか、正面から取り合おうとしないかについてお二方ともなかなか鋭い指摘をしております。唐沢さんというと、今この方の名前でググると必ず出てくるご自身の著書「新・UFO入門」のいわゆる「ぱくり」問題があるのですが、一連の騒ぎがあった中で、唐沢さんに直接当てた抗議のメールや手紙は一通もなかったそうです。これ一つとっただけで、いかにネット世論なるものがいい加減な、信頼性の欠片もない存在であることが見て取れる。
 岡田さんも似たような体験をしたまっただ中だったようで、ここしばらく「ネット断ち」をしてたのだとか。で、ブログにエントリーがなかったりコメントへのレスがなかったりすると、ネット世論というやつは「我々をバカにしている」とさらに叩き、もし反論するとそれはそれでまた叩く。結局は反論で疲れるより、放っておいて冷めるのを待つのがベストだと。このへんの対処の仕方、さすがパソコン通信からのネットと絡んでるだけのことはあります。
 それからもう一つ、鉄道オタクについて語っているところがあるんですけれど、ここはちょっと直接関わりの薄いお二人にはきつかったかも。鉄道オタクというのは、オタクのプロトタイプとでもいうべき、かなり特殊な世界といえますからね。正直、的外れな論調に終始している印象でした。これは編集部の振り方が不味かったのではと思います。
 まあ、全般としては、あまり目くじら立てることなく、さらっと読み流すのがいいのではないかと。それでも所々、いやが上にも引っかかる内容は用意されていますので、そこだけきっちり読まれるのがいいのではないかと。

 う~ん、どうもこのところ書き方に調子が出ないなあ。