コーヒーとサンドイッチの法則 | ただのオタクと思うなよ

コーヒーとサンドイッチの法則


竹内正浩
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 そのむかし、私が経済記者をやってた折のこと。上場企業の決算や財務内容について取材する仕事を主にやっていたのですが、誰もが知っている企業に、意外な側面があるケースを何度も見てきました。
 例えばサンリオ。今やハローキティの成功で世界に名だたるキャラクタービジネスのトップ企業として広く知られていますが、私が取材した当時、バブル期に過剰に手を出していた財テク失敗の波をもろにかぶり、瀕死の状態にありました。ピューロランド売却、あるいは閉鎖されるんだなんてことまでまことしやかに語られたものです。その苦境を乗り越え、今や安定した業績を維持できるようになった最大の要因は、90年代後半当たりから火がつきだした「ハローキティ」旋風がうまく軌道に乗ったことでしょう。
 キャラクタービジネスの最大の強みは、自社製品開発より、様々な異業種に使用権を売りそれにより入ってくるロイヤルティー収入が得られること。円谷プロのように自前でやり過ぎて失敗する例もありますが、サンリオのようにあらゆるグッズにキティのかわいらしい猫の絵を貼り付けていくことで、きわめてローコストの中で、それこそ黙っていても利益が上がってくる仕組みが確立できてしまう。15年前まで瀕死だった業績をここまで転換させた、キャラクタービジネスにおける相乗効果の極みといえるでしょうね。
 このように、よく知っているはずの企業でも、実はどうやって儲かってるのかわからないケースというのはいっぱいあるわけです。その当たりを解説した一冊「コーヒーとサンドイッチの法則」を今回は取り上げましょう。
 マクドナルドはハンバーガーで設けている会社?多くの人がそう思っているでしょう。でも、じゃあ100円バーガーなんて売り方で利益なんか出るの?実はここがミソ。マクドに入って、ハンバーガー類単品だけ注文してその場で食べる人、果たして何人いるでしょうか(おれのことかああ)。100円バーガー1個だけ買ってその場を立ち去る勇気、あなたにはありますか。この客の心理が非常に重要で、利益の比重はハンバーガーではなく「ついでに」買うポテトや飲み物にかかってくるわけです。まあ、わかっている人には釈迦に説法なんですが、その会社、もしくはそのお店が何でもうかっているのかを深く考えてみるのはビジネス頭を鍛え、自分の商売に新境地を開くヒントをもたらすことになる。そんな盲点になりがちな仕組みを、次々取り上げていくのがこの本です。
 しかもこの本の特筆すべきは、イソップ童話のようなたとえ話を引き合いに出して、頭をほぐすように法則の本質を詳らかにするという点。幼稚園児の子供にさえわかる構成には感心しました。
 法則そのものは、どこかで聞いたというものも少なくないかもしれません。でもこういう話はいくつも例に触れて肌身に染みこませて、いざ必要なときのために引き出しを緩くしておくのが肝心でしょう。