少年マガジンの黄金時代~特集・記事と大伴昌司の世界 | ただのオタクと思うなよ

少年マガジンの黄金時代~特集・記事と大伴昌司の世界

少年マガジンの黄金時代 ~特集・記事と大伴昌司の世界~/週刊少年マガジン編集部

¥1,200
Amazon.co.jp
 21世紀に入ってもう7年たつわけですが、何かが違う、いや、我々の思い描いていた21世紀はこんなのじゃないと、昭和30~40年代に生まれ育った年代は感じるのであります。21世紀といったら、大都会には透明のチューブが張り巡らされ、その中を超高速リニアモーターカーが行き交い、空にはエアカーが飛び回り、家ではすべての家事をロボットがやってくれる、文字通りのオートメーションの時代がやってくる。私たちはそんな未来を目指して生きてきたはずです。そんな夢を与えてくれていたのが、当時の少年雑誌でした。
 私を含め当時の子供が何を夢見、現実社会がどう写り、どう世界観が形成されていったかをまとめたのが、本日紹介する一冊「少年マガジンの黄金時代~特集・記事と大伴昌司の世界~」です。
 「少年マガジン」といえば、昭和34年創刊の、「少年ジャンプ」と並ぶ日本を代表する(ということは世界を代表する)マンガ雑誌です。しかしこの本では本編であるマンガではなく、雑誌冒頭のカラー特集や各マンガ作品の合間や巻末に書かれていた情報記事をまとめ、時代の変遷を描いた形になっています。
 まず本の前半では、我々子供の知識の礎となった情報記事の変遷。子供向けの情報ですから、黎明期にあったテレビ界の話や、スポーツの話題、いつも読んでるマンガ家の私生活はどうなってるのかといった内容が多いわけですが、昭和30年代頃だと時折、経済問題など堅い話も出てきたりします。
 そして少し時代がくだり、新幹線が開通しアポロがつきに行くようなころになると、未来を描く記事から、UFOや心霊もの、超常現象といった方向へ変化していきます。思えば、人が宇宙にまで進出してしまったことで、一つの未来の到達点を、この時期に迎えてしまっていた、その反動が、なんだかよくわからない超常現象への興味となって現れたのかもしれません。
 そして後半、第2部では、少年マガジン編集部に君臨した稀代の天才編集者・大伴昌司氏の功績がまとめられています。当時(もちろんいまもそうですが)子供たちの話題の中心だったウルトラマンやサンダーバードを、事細かな図解を使って紹介していったのが、この大伴昌司氏でした。その細かすぎるまでの描写は、ウルトラマンを極端に現実的にされるのを嫌った円谷英二氏と軋轢を生むといった問題もあったようですが、この、あとづけの超お節介な記事の数々こそ、我々のオタク文化を生み出す源泉になったわけです。
 今回、改めてこれらを見返してみると、芸術の域にあるといえる小松崎茂画伯らによる絵の数々もさることながら、大伴氏の守備範囲の広さに驚きます。ウルトラマンなどの特撮作品に始まり、恐怖感を煽りまくる超常現象、小松左京の「日本沈没」を彷彿とさせるパニック描写、大阪万博の建築現場のルポや、ラジオの深夜放送の現場取材まで、まさにこの本で指摘されているビジュアルの革命児の名にふさわしい。昭和40年代はまさに大伴昌司の時代だった、そう思えてなりません。
 ちなみに、この本に引用されている少年マガジンの記事の数々は、あくまでいまの商用書籍に使える範囲のもに限られます。そう、当時はもっと強烈な内容を、子供向け雑誌でやっていたのです。その、この本に載せられない曰く付きの内容については、唐沢俊一さんが書かれた同人誌にて見られるのですが、ご興味があれば次回の冬コミにて手に入れてはいかがでしょう。こっちはもっとすごいですよ。

追記:唐沢さんの同人誌の件ですがこちらで手にはいるようです。ご興味があればどうぞ。