文部科学省は30日、09年度の教科書検定結果を公表した。小学校と高校で11年度から使われる教科書が対象。小学校は、授業時間を増やし「脱ゆとり」路線に転換した新学習指導要領に対応する初めての教科書で、全教科の平均ページ数(B5換算)は6年分で計6079ページと、現行教科書(05年度から使用)に比べ24.5%(1198ページ)増えた。今回申請は小学校が9教科280冊、現行指導要領に対応した高校教科書は2教科5冊で、すべて合格した。

 ◇「大転換」に教師不安

 来春から小学校の教科書が格段に厚くなる。児童が消化不良を起こさないためには、「教科書とはすべて教えきるもの」という発想からの大転換が求められる。神奈川県内の公立小学校に勤務する女性教諭(29)は不安を隠そうとしない。「教科書の内容はすべて大事だという意識でやってきた」。要点だけを教えることを求められても、取捨選択する自信がない。「中途半端になってしまわないだろうか……」

 文部科学省は今回、「必ずしも教科書すべてを取り上げなくてもよい」(森晃憲・教科書課長)という姿勢を明確にした。これは大きなスタンスの転換だ。「ゆとり教育」の時代は教科書内容の「厳選」が叫ばれ、教師や保護者の間にも「最低限教えなければいけないもの」という意識が広まった。

 教科書発行法は教科書を「教科の主たる教材」と定義。他の教材との組み合わせが前提で、それだけを全部教えることは求めていない。ある文科省OBは「現場が『全部教える』と思い込み、それが文科省職員の意識にも逆流していた。背景には保護者の意見があった」と明かす。

 指導法の選択を教師に任せることを、不安に思う保護者は少なくない。「教科書をやっていてくれれば安心」という意識もある。埼玉県朝霞市立第十小の霜村三二教諭(60)は「教科書をきちんとやらないと、親から批判される」と指摘する。

 自治体によっては、指導計画通り授業が進んでいるかどうか校長が見回り、そこに教育委員会からの指示が入る。保護者を気にして現場管理を強め、教室の自由度は下がり続けてきた。そこに「1・4倍教科書」が登場すればどうなるか--。「ますます教科書に縛られるだろう。特に若い先生が心配だ」。霜村教諭は悲観する。【加藤隆寛、内橋寿明】

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