婚姻費用分担審判の審判例(婚姻費用から住宅ローン控除の計算例) | 愛知市民法律事務所のブログ

婚姻費用分担審判の審判例(婚姻費用から住宅ローン控除の計算例)

別居中の生活費(婚姻費用)の支払いの場面で、義務者(通常は夫)が、権利者(通常は妻)や子が居住する自宅の住宅ローンを支払っているというケースについては、以前記事に書きました。
 
この論点については、実務上問題となることが多いのですが、あまり審判例が見当たりません。
参考となる審判例がありますのでご紹介いたします。
 
東京家庭裁判所 平成27年8月13日 婚姻費用分担申立審判(判例時報2315号96頁)
 
夫が、妻と子3人を残して自宅を出て別居を開始し、その後も夫は自宅の住宅ローンを支払い続けているというケースで、裁判所は、
 
「このような場合、申立人(妻)は自らの住居関係費の負担を免れる一方、相手方は自らの住居関係費とともに申立人世帯の住居関係費を二重に支払っていることになるから、婚姻費用の算定に当たって住宅ローンを考慮する必要がある。
 
もっとも、住宅ローンの支払いは、資産形成の側面を有しているから、相手方(夫)の住宅ローン支払い額全額を婚姻費用の分担額から控除するのは、生活保持義務よりも資産形成を優先させる結果となるから相当でない。
 
そこで、当事者双方の収入や住宅ローンの支払額、相手方の現在居住している住居の家賃の額や家計調査年報の当事者双方の総収入に対応する住居関係費の額などの一切の事情を考慮し、本件では、次のとおりの額を婚姻費用の分担額から控除するのが相当である。」
 
とした上で、
 
住宅ローンの支払い額が毎月約89000円であった期間については、婚姻費用分担額から3万円の控除を認め、

その後、住宅ローンの支払いを減額し、毎月45000円~50000円ほどの支払いとなった後は、婚姻費用の分担額から1万円の控除を認めています。
 
(なお、住宅ローン支払い額が6万1千円になった月があるが、その月については3万円の控除となったのか1万円の控除となったのか判例時報の記事からは不明)
 
このように、本件では住宅ローン支払い額に対して2~3割程度の金額の控除が認められていますので、実務の参考事例としてご紹介いたします。
 
実際の調停、審判等においても、本審判例が示しているように、「当事者双方の収入や住宅ローンの支払額、相手方の現在居住している住居の家賃の額や家計調査年報の当事者双方の総収入に対応する住居関係費の額などの一切の事情」を考慮して金額を決めていくことになるでしょう。
 
 
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