「金融商品」の特殊性に基づく金融機関との付き合い方 | 52歳で実践アーリーリタイア

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52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。

金融商品とは、株式・債券・保険・リート(不動産投資信託)・金や穀物などのコモディティ商品のこと。それでは金融商品とふつうの商品の違いってなんでしょうか?

 

それは、二つあります。

 

一つ目:金融商品はそれ自体の使用や所有を目的としていないこと

二つ目:損するかもしれないこと

 

■一つ目:金融商品はそれ自体の使用や所有を目的としていないこと

ふつうの商品は買って食べたり、(服を)着たり、(スマホなどを)使ったり、(車を)運転したり、と必ず「使用することがその目的」。またはなんかの「推し」にまつわる商品であれば「所有すること・所有して集めることが目的」

 

ところが金融商品は、使うことや所有することが目的ではありません。

 

目的は一つ。「儲けること」です。

 

なんらかの金融商品を買って配当金・金利収入を得たり、株主優待の特典を得たり(間接的な儲け)、金融商品そのものを売買(キャピタルゲイン)して儲けたりするわけです。

 

■二つ目:損するかもしれないこと

私たちは、ふつうの商品を買って「たまに失敗したな」と思うこともありますが、基本的には1回使ってみたり所有してみたりすれば、その対価を味わって、またリピート購入したりして、確実にその対価を享受することができます。

 

ところが、金融商品はこうはいきません。顧客は皆間違いなく「儲けること」のみを目的として買うにも関わらず、必ず儲かるわけではありません。損することもあるのです。ふつうの商品は、ほぼ損することはありません(詐欺まがいの商品の場合は別)。

 

ここが問題なのです。金融商品は本来は儲けるために買うのに、損することも多々あるからです。

 

■金融機関との付き合い方

以上、金融商品の特殊性を確認したうえで、やっと本題です。

 

ここで私が特に言いたいことは、ふつうの商品と金融商品を販売する販売員(銀行員や営業マン・ウーマン)の根本的な違いを知ること。

 

ふつうの商品の販売員は、一般に顧客にとって良いと(信じている)商品をお薦めしますし、必死に顧客ニーズを掴もうと日々、努力しているわけです。つまりふつうの商品は、顧客が欲しいものと小売業が販売したいものが一致する方向でベクトルが動きやすい。だからセブンイレブン実質創業者の鈴木敏文が「変化対応」とひつこく言っていたのです。しかも顧客自身が自分自身が欲しい商品を明確化可能です。購入前のネットリサーチは当たり前の世の中です。

 

ところが金融商品の場合は、こうはいきません。顧客が買いたい商品と金融機関が販売したい商品が一致しないことが多いのです。そして顧客自身がふつうの商品と違って、その商品の特性をよく理解していないことが多い。金融商品は難しいからです。いわゆる「金融リテラシーが低い」というやつです。

 

*顧客が買いたい商品とは

顧客にとって金融商品を買う目的は「儲けること」ですが、どのように儲けたいか、は人それぞれです。

 

私の場合は、資産が稼ぐ儲けだけで生活できるよう、年間3.5%程度の配当金+金利+評価益(キャピタルゲイン)が得られる目標値で運用しています。利幅が大きければ大きいほど、その分損するリスクも大きくなるので、自分の目標値をまずは定めることが大事です。

 

インフレ影響を受けない程度でいいという高齢の年金生活者の場合、今の日本はインフレ率0.5%前後ですから、0.5%前後で運用すればインフレ影響をカバーできます。普通預金では0.5%の金利はつきませんので0.5%に見合う、なんらかの低リスクの金融商品を買うわけです。更にインフレに連動する金融商品も併せて買っておけば、高インフレ時に安心です。

 

または老後の資金を運用したい若い人だったら、短期での評価損はあまり気にしなくていいかもしれません。思い切って資産の一部を6%ぐらいの高率で運用したいという人もいるでしょう。この場合は新興国系の株やベンチャー系の投資信託を買ってチャレンジしても良い。

 

このように顧客は、それぞれの顧客ニーズによって購入する金融商品が変わってきますが、顧客自身が自分のニーズを明確化していない場合、資産運用はしない方がいいと思います。なぜなら損するかもしれない商品だからです。

 

*金融機関が販売したい商品とは

金融機関が販売したい商品は一言でいって「利幅の大きい金融商品」です。金融商品の利益とは二つあって「販売した時に得られる販売手数料」と「運用を管理することによって得られる管理費用」。この二つが大きい商品を顧客に販売しようとします。そして売買回数が多ければ多いほど儲かります。

 

具体的には大きく2種類あって、

①ハイリスク・ハイリターンの商品

外貨で運用する株式・保険、新興国の株式・保険、ベンチャー系中小企業に特化した株式・債権など。

 

②テーマ型投資信託

今でいえばESGだとか、バイオだとか、AIだとか、何らかのテーマに沿って運用のプロがさまざまな金融商品をコーディネートしてセット化した投資信託。

 

更にこれらを短期で顧客が繰り返し売買すればするほど儲かります。

 

以下、楽天証券の投資信託を「管理費用」が高い順にソートしてみました。ご参照ください。

 

小売業の販売員も利幅の大きい商品は志向しますが、ほとんどは今日の売上を日々求めて、顧客ニーズに沿った商品を販売しようとします。ところが金融機関の販売員の場合は、どうしても顧客ニーズよりも利幅の大きい商品を販売する方向に行きがちなのです。別に金融機関の販売員が悪いわけではありません。

 

その理由は何かといえば、二つあって

 

①金融機関の販売員のノルマは、売上(預り資産)ではなく利益(販売手数料や管理費用)だから

②金融商品は分かりにくいから

 

ではないかと私は思っています。

 

売上目標は顧客ニーズと一致しやすいのですが、利益目標は顧客ニーズと一致しません。その商品の利益がいくらか、なんて顧客には全く意味がないからです(本当はありますが)。しかも金融商品は顧客に分かりにくいので、販売員はノルマを必死に達成しようと、ついつい利幅の高い商品を頻繁に売り買いさせる誘惑に駆られます。顧客側は自分のニーズもよくわからずに、大手銀行・保険会社・証券会社・郵貯だから問題ないと思って安易に銀行員・販売員を信用してしまいます。ここに不幸が生まれてしまうのです。

 

なので、金融機関の販売員が、金融商品の販売手数料や管理費用をちゃんと顧客に積極的に自分から伝えようとしない場合、ちょっとそれますが保険会社が数十年にわたる「総支払額」をちゃんと顧客に伝えない場合、我々顧客は注意が必要だと思った方がいいと思います。

 

そして何よりも大事なのは、自分のニーズを明確にすることです。大きく儲けようと思えば大きな短期では損失リスクを覚悟する必要がありますが、若い方の30年後の資金であればその分リスクは小さくなります。一方で年金生活者が運用する場合は、すぐに使う資金なのでハイリスクハイリターンの商品で運用する理由は殆どありません。損失リスクが低い債券型インデックスファンドやバランス型投資信託などインフレ率をカバーする程度の低リスク商品でいいわけです。

 

【最後に私の知り合いへの某メガバンクの営業の事例】

最近、私の知り合いの年金生活者が某メガバンクの営業マンに、毎月数十万円の受け取りが亡くなるまで続くという保険商品を一括払い(数千万円規模)で購入しました。

 

本人は亡くなるまでお金がもらえるという安心を得ましたが、一方で「何歳まで長生きしないと損するかもしれない」「中途解約したら損する場合がある」などの説明はされなかったようで(したかもしれませんが金融リテラシーのない本人は忘れているか、よくわかっていない)、果たしてこんな複雑な商品を、数千万円持っていてしかもそれなりの年金も入っていくる80歳になろうかとする金融に無知な老夫婦に販売する必要があるのでしょうか?

 

きっと目の前の数千万円の普通預金に目が眩んだメガバンクの営業が、ノルマ達成のために販売したのではないか、と疑ってしまいそうです。

 

これはほんの1年前の出来事です。どことは言いませんが三つのメガバンクのうちの一つです。もちろん買ってもいいのですが、ちゃんと中身を理解した上で買うべきで、顧客が理解できない場合は購入すべきではありません。

 

なぜなら金融機関の販売員は本当にあなたのことを思って商品を販売するわけではない場合があるからです。