絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか? 更科功著 読了 | 52歳で実践アーリーリタイア

52歳で実践アーリーリタイア

52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。

人類学や進化論などの書籍を読み進めているが、最新のネタを扱っているということと、日本人が書いているということと、著者自身の解説力が高いということで、非常にわかりやすく人類史を知る上ではこの1冊読んでおけばまあいいんじゃないかという印象です。


ブルーバックスのブログでも記事を書いている著者自身の書籍。

700万年前にヒト族が誕生して以降、これまで何十種もの種が誕生しては絶滅し、現在生き残っているのは我々ホモ・サピエンスだけなんですが、その過程をわかりやすく最新の説に基づき書いているので、現時点では「このようになっている」ということを知るにはちょうど良い。

これまでは「道具が使えるから」だとか「脳が大きいから」だとか、人の人たる所以が生物学的にいろいろ言われてきたわけだが、何が人の人たる所以かといえば「直立2足歩行(鳥の二足歩行は直立ではない)」「犬歯が短いこと」の2点。

直立2足歩行というのは理解できるが「犬歯が短いこと」というのは意外な印象。犬歯については、近接種の類人猿との違いの一つとしての特徴。チンパンジーのように発情期があるとその一瞬を狙ってオス同士の争いが始まるのだが、ヒト属の場合は発情期がないのでいつでも交尾が可能でメスをめぐって他の種ほど争う必要がない。この結果、群れの中のオスとメスの割合は1対1に近くなる(チンパンジーは5〜10のオスにメス1)。この結果、喧嘩の道具としての犬歯は不要になったという説。

直立2足歩行については

1.長距離走が得意(種の中でトップ)→短距離走が苦手
この結果、汗が出やすいよう体毛が退化(もちろん文明化で服を着るようになったから体毛が退化したのではない)
*詳細はダニエル・リーバーマンの「人体」に詳しい。

2.手が使えるようになった
(1)単純に手が使える
手が使えるので食料を運ぶことができ、これがメスとオスとの1対1の関係を確立させた(一夫一妻制)。
(2)物を投げられる(これは「人類への道」より)
物を投げられるのは人間だけ。持久走で相手を追い詰めながら鋭い物体を安全に遠くに投げる「投擲の能力」を獲得でより多くの獲物を獲得可能



3.途中から(190万年前のホモ・エレクトゥスより)脳が巨大化した
手による道具使用可能によって肉食という高カロリー食品が短時間で食べられるようになり、しかも植物よりも消化がいいので胃腸の負担が少なくなり、フリーになった手との連動で特に前頭葉が大きいのがホモ・サピエンスで一番「認知能力が高く」「完全な言語が話せて」「社会的行動ができ」「象徴的思考ができる」という点がポイント。

やはり直立二足歩行によって、人間ならではの特徴が進化したというのがポイントで、こんな種は他にはいないということです。