五木寛之の新作小説『親鸞』がベストセラーに | 歴史ニュース総合案内

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 鎌倉新仏教の一つ浄土真宗の祖親鸞(11731262)の半生を描いた小説『親鸞 』(上下巻、講談社)が2009年末の刊行以来大きな話題を集め、2010年上半期までに65万部を発行するベストセラーになり、売上では文芸部門で村上春樹『1Q84』、冲方丁『天地明察』に次ぐ部数を記録した。

 この小説は西日本新聞などの地方紙27紙に連載された小説の書籍版で、誕生してから比叡山での修行、法然との出会いを経て、念仏の教えが朝廷に疎まれて越後に流罪になるまでが描かれている。小説用の脚色として悪の限りを尽くす黒面法師が登場し、親鸞の主眼「悪人正機」の理念をより一層際立たせている。身近な題材である上に、宗教小説に特有の用語を減らして読みやすくしたのが功を奏したようだ。

 同小説は電子出版の世界にも話題を提供した。講談社誕生100年企画の一つとして刊行された同小説は、6月から7月まで上巻がオンラインで無料公開されていた。

また、新聞連載時には講談社の担当編集者豊田利男が地方紙の編集局長に対して積極的に掲載を働きかけていた。出版社が新聞社に連載小説を依頼するのは珍しいとのこと。掲載紙が支払った原稿料を合計すると、世界的にみても最高クラスの金額になるとされる。しかし、共同掲載で原稿料が掲載紙の発行部数に応じて分割されたため、1紙当たりでみるとそれほどの額にはならないというのが、豊田の発案した新システムのみそである。地方紙が単独で一作家に連載を依頼するより安上がりになるそうだ。

今回の好評を受け、親鸞の後半生を描く第二部が来年1月から最低48紙で連載される予定。