二宮春将小説:帰り来る青春第32回 | 二宮春将の世界

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小説、エッセイの世界です。

「私は本当の愛を知らずにこの人生を終わるのだろうか」
 春久の元には全国からこのような言葉が送られてくる。
「六十を過ぎるともう恋の喜びは味わえないんでしょうか」
 女性からのメールにはこの声が実に多い。
こんなメールに春久は、
「自分の気の持ち方ひとつで人生は変わります。私も妻が死んでしばらくは死ぬ事ばかり考えていましたが、気を取り直して生きる事を決め積極的に生きてみるといい結果がでてきました。あなたもがんばってください」
 こう返事を返すのだ。
「六十歳くらいで人生を投げてしまうと、『いける屍』こうなる」
 春久は全国の六十代の人たちに、
「がんばって」
 こうエールを送った。