株式会社Oens(オーエンス) 高橋みどりさん(その2) | ファッション業界転職ブログ

株式会社Oens(オーエンス) 高橋みどりさん(その2)

こんにちは。コンサルタントの池松です。

今回のゲストは、前回の(その1)に引き続き、
イメージング・ディレクターの高橋みどりさんです。

ファッション業界転職ブログ-01

「メルローズ」、「バーニーズ ニューヨーク」、
「ジョルジオ アルマーニ」を経て、
今回の(その2)では、「エストネーション」立ち上げから
ご自身の会社である株式会社Oens(オーエンス)の事業内容、
そしてイメージング・ディレクターとしてのご活躍を伺います。

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池松 「アルマーニ」さんは何年ぐらいいらっしゃったんですか。

高橋 3年ですね。

池松 それを経てエストネーションですね。

高橋 はい。アルマーニにいたときから、仲間と一緒に
「大人の私たちが行くお店がないよね」とか、
「海外にあんないいお店があるのに、なんで日本にないのよ」とかそんな話をしてたんです。
「もったいないね、何かやりたいね」から始まって、
セールスプランを作るようになり、いろんな会社を回り始めたんです。
「そんな私たちの夢を一緒に実現してくれる会社、人を探したい!」ということで。
色々な方々のご紹介を通じて、サザビー(現株式会社サザビーリーグ)の
鈴木陸三さんにお目にかかることになったんです。
そうしたら、「僕たちも大人のお店をやりたいと思ってたから、
もうちょっと話せるといいな」というお話をいただきまして。

池松 それが経緯なんですね、それはすごいですね。

高橋 そうなんです。会社が終わってから話し合って、
実現するための宿題や課題を作っては潰していく作業を続けました。
そうするうちに、仲間も1人増え、2人増えていき、
土日の時間も使って資料を作っていきました。
「こんな店にしたい」とか、「あんな店にしたい」とか
頻繁にアイデアを出しては話し合い、
そうして、丸4年ぐらいたった頃に、やっと実現に至ったんです。

池松 100%出資を受けて?

高橋 そうです。自分たちが直接やりたいという想いで。
サラリーマンだった私たちが、エストネーションを実現できたのは、
もの凄くいい経験でしたし、本当に夢のようでした。

池松 まさに「夢の実現」ですね。有楽町店をオープンさせて、
次に六本木ヒルズ店。大きい売り場でしたしね。

高橋 そうですね。だから投資額もとても大きかったと記憶しています。

池松 完成したときに、やり遂げた!っていう気持ちはあったんですか。

高橋 やり遂げたというよりも、やっとスタートラインに立てたという気持ちでしたね。
有楽町店が実現した時、やっとこれで大人のお店が東京にできたかなと実感しつつ、
その時はすでに、これをどうやって広げていくべきかという気持ちに切り替わっていましたね。


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エストネーションのオープン当時、取材を受けた掲載ページ

池松 ノンストップですね。

高橋 そうです、エストネーションが始まってからは、
自分たちが作ったお店という気持ちが強かったので、
全然苦にならずに走ってきた感じですね。

池松 六本木ヒルズ店は2003年オープンでしたよね。

高橋 六本木ヒルズ店では店長も1年間兼務していました。
有楽町店がスタートした当時は、メンズのバイヤーチームが強力だったので、
先にメンズがヒットしていくだろうと思っていたんです。
ですので、私はレディースの方に注力していました。
インタビューがあったらお受けしたり、
お店には実際に売っている洋服を着て雑誌や色々な媒体に出たり。
そしたら、親近感を持たれたのかもしれませんが、
こういうお店なかったよねということで、30代前後の働く女性たちが
エストネーションのファンになっていってくださったんです。
その結果、レディースが一気に伸びていったんですよ。
当初はメンズが引っ張る予定だったのに、
レディースが引っ張り始めて、それで売上もエストネーションという名前も広がっていったんですね。

池松 レディースを見ながら店長兼宣伝をやるっていうのは、
想像を超える業務量ですよね。

高橋 例えば、有楽町店のときは、バーニーズの立ち上げ当時と同様で
知り合いの知り合いや、コンセプトに賛同してくれた人から広がっていきましたけれど、
大きくなればなるほど、熱意を持った人だけが集まるわけではないですよね。
初期のスタッフの場合、「ここで働きたい」とか「お洋服が好き」とか、
そういう気持ちで話すことができるから、仕事の進め方も早いんですけど、
規模が大きくなって人材を増やしていく段階になると変化が出てきます。
「会社として良さそう」とか「儲かってそうに見える」とか「これから伸びそう」とか。
面接に来る人も、そういったモードを持って来ますので、その辺はすごく大変でしたね。
最初から頑張っている人もいる中で、そのお互いの溝を埋めていかなきゃいけない。
お客さまから見れば、同じお店にいるわけですから、
同じようなサービスと熱意で接客してもらう必要があるわけですので。

池松 確かに。お給料の高いところから移ってくる人もいるだろうし。

高橋 私は、エストネーションを
販売職の方々のお給料をたくさん支払える会社にしたかったんです。
それが大きな夢の1つでしたね。
たくさん売ってくれる販売員がいたら、いっぱいお給料を出すべきだと。
そういった評価基準を作ってたんですね。実際は難しいことがたくさんありましたけれど。

池松 そうですよね。経営していかなくてはならないという側面もあるし、
利益も出さなくてはならないし。

高橋 そうです。でも、今でもファッション業界の中で
それをやりたいと思ってますし、やるべきだと思ってますね。

池松 そういう想いが集まって、
ようやく今の会社についてのお話になりますよね。
今の会社の事業内容というと?

高橋 一番得意としているのは、もちろんPR業務ですね。
今までの経験値があるので、そういったお話をいただくことは多いです。
ただ、PR業務だけをやるというお仕事はあまり受けておりません。
それをやる上では、ブランディングや
商品・店舗のプロデュースという仕事も必ず付いてきますから。
ですので、私のところに来るのはリブランディングや
ブランドの初上陸というお仕事が結構多いですね。
もう一度日本で再スタートさせたいと思っているものや、
より広げていきたいと思っている際に、
商品やPRも含めてそのプロジェクトの全体を見る業務ですね。
ですので、トップの方や担当の方と2人3脚で、スピーディに話を進めていきます。

池松 肩書きに書かれているイメージング・ディレクターというのは
あまり聞かないというか、自分たちは目にしたことがないのですが。

高橋 これは、5、6年前に独立したときに付けたタイトルです。
私、これからは企業でも、人でも、何かものを作る際には
感性がとても問われる時代だと思っているんです。
例えば、すごくいい会社で、社長もお仕事が出来る素晴らしい方だとしても、
プレゼンスという意味で格好悪かったら、その会社全体のイメージが悪くなる。
もしくは、会社が儲かっていって、どんどんいいオフィスに変わっていって
すてきな会社を作りましたといっても、会議室がボロボロだったら
あるいは受付の女の子の印象が悪ければ
逆に企業のイメージは下がってしまうと思うんです。
以前、不動産業界のある企業でお手伝いしたことがあるんですけど、
最初は数千万円程度のマンションを販売していたのですが、
数億円のマンションも手がけるようになったのです。
そうなると当然買う方のライフスタイルまったく違ってくるので、
働いている人たちに対しても、ファッション・コーディネートのワークショップやセミナーを実施したり。
そういうことをすることによって、企業のイメージが上がり、売上も上がり、
ひいてはグローバルな仕事もできる企業に変化しいてくと思っているんです。

池松 セミナーの実施について、もう少し詳しく教えてください。

高橋 私は「ミッドルーム」という自分のウェブサイトを2000年からはじめていまして。
そこでは、自分がやってきたことや、今取材にお答えしているようなお話とかを
1週間に1回書いてはアップしているんです。
そしたら、その読者の方々から、もう少し詳しくお話を聞きたいという声があがってきたんです。
コーディネートを載せていると、そういう服を自分はどう着たらいいのかとか、
仕事で本当に役立つことは何かとか。
その質問にお答えしたいという思いもあって、
読者の方々を対象に、色々なテーマでセミナーを行うようになったんです。
そうすると、1回目に来たときは黒いお洋服を着てこられ、
いつも黒や紺しか着てないんですという方が、
3回目ぐらいのセミナーにはピンクを着てきたりとか、
「こんなスカート買っちゃいました」とお話しされたり。
「顔も髪の毛ちょっと切るだけですごく元気そうになりますよ」と助言したら切ってこられたり、
皆さん、とても素敵に変わっていくんですよ。
働くときに元気があるっていうのは、周りに対してもすごくいい影響を及ぼしますよね。
初めて会って、まだその人のことが分からない時、やっぱり第一印象って大事だと思うんです。
そういうところで、ちょっとでも後押しというか、アドバイスして差し上げると、
皆さん、自信を持って買ったり、着たり、新しいものにチャレンジするようになっていくんです。

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年に何回か自らのサイトのメンバーに向けて開催しているmidroom salon(ミッドルームサロン)

池松 なるほど、イメージング・ディレクターというお仕事が理解できてきました。

高橋 皆さんがよくご存知の楽天の社長の三木谷さんとも、
もうかれこれ5年くらいイメージングのお手伝いをさせていただいています。
そういった高いポジションに付かれている方は、やっぱり時間がないんですよね。
ですので、他の方の場合もそうですが、
最後に必ず「コーディネートブック」を作って差し上げているんです。
秘書の方に渡しておいて、何かあった時には、
「何ページのあの感じがいいんじゃない、今回は」とか、
「外国人が多いって言ってるから、今回は赤っぽいネクタイでもいけると思います」とか。
これからの日本を引っ張っていくリーダーの方々が格好良くなっていくことは
私はとても良いことだと思うし、企業にとっても、日本にとってもメリットのあることだと思っています。

池松 YouTubeでもスタイリング講座を掲載していますよね。

高橋 それは、実はこの本と連動しているんです。

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http://www.youtube.com/user/Oensstaff

高橋 本当は最初、この本にDVDを付ける予定だったんです。
ところが、中身を見て買う方が多いので、
DVDが付いてると、読みにくい、めくりにくいということになって。
せっかく作ったので、じゃあウェブサイトに載せて見ていただこうかなと思って。
ですので、「レッスン4」までが、この本と連動しています。

池松 この発売された本は、どういった方に向けて、
どういうメッセージを発信されてるんですか。

高橋 この本の編集者の方は40代前半の女性だったんですけど、
私のセミナーに来てくれた方なんです。
いつも私は、セミナーに参加する方々の職業やプロフィールなどは、
あまり気にせずに実施してるんですね。
それよりも、参加にご応募くださる方の悩みなどをうかがって、
いつも着ていながらどうコーディネートしていいかわからないものを持ってきてください、
ということをお伝えしているんですね。
そのときに彼女が、トレンチコートを持ってきたんです。
「せっかく気にいって買ったんだけど、着方がいつも一辺倒なんです」と。
で、私が2つぐらいのコーディネート方法をお伝えしたんですね。
ひとつは、女性らしさがいきる着方と、もうひとつはネクタイをしたちょっとマニッシュな着方。
ジャケットっぽく着ちゃおうよみたいな。
そしたら彼女にとっては、目からうろこだったんですって。
そんなことがあって、彼女は同じように悩んでる人も多いんじゃないかなということから、
あの企画を上げてくださって、形になりました。

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2011年9月に実施した伊勢丹SORELファッションコーディネイトセミナーandトークショー

池松 では、基本的には女性に向けた内容ですね。

高橋 そうですね。ウェブサイト「ミッドルーム」の方は男性の方も読んでくださっていて、
参考になりましたとか、男性版も実施してくださいとか言われることもありますが、
今は一応、主に20~40代以上の働く女性向けに発信しています。
女性も、年齢とともに仕事の仕方も変わるんだから、
当然スタイルも変わって当たり前だよねということを伝え続けています。

池松 あとは、ぜひ読んでいただいて、もっと知っていただいたほうがいいですね。

高橋 今、スーツやジャケットを着ないで働く人も増えていますよね。
カジュアルなスタイルも許されている会社、職種もあると思うんですけれど、
実は、一番言いたかったのは、働く時におしゃれしないでいつするの?ということ。
1日のうち3分の1は働いているのだから、そんな長い時間、
おしゃれに手を抜くというのは残念じゃない?って思うんです。
何もスーツやジャケットを着なさいって言ってるわけではなく、
そういう気持ちで働けばもっと楽しいし、おしゃれもより楽しくなる。無駄なものも買わない。
そんなことを書いています。おかげさまで、もう3版まで出ました。

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2011年10月に実施した銀座三越トークショー

池松 すごい。やっぱりニーズがあるんですね。
確かに、情報があふれているって、今言われますけど、
こういうった実用的な情報は、むしろなかなか見つけられないことが多い。
あと、もう1冊、ブログを読んでる読者の方に紹介したいんですが、
あのアルマーニのことを書いた本もお出ししていますよね。

高橋 はい。5年前に書きましたね。

池松 その中で、「さらに輝くために」というところ内容の中に、
「天職は見つからなくて当然」とあったと思うんですが、あれはどういう意味ですか?

高橋 私自身、同じような仕事を長くしてきたので、
今の仕事は天職、天の職だねって言ってくれる人がとても多いんです。
インタビューなどを受けると、「今の仕事、すごく合ってますね。
いつも楽しそうにやってますね」って言ってくださるんですね。
もちろん、楽しくやってるんですけど、自分ではいまだに天職とは思っていないんです。
むしろ、天職を見つけたいから、ずっと働いてるんです、私は。
だから、常に、今やってることも楽しいし、一生懸命やってるんですけど、
まだやってないこともたくさんあって、まだ知りたいことや学ばなきゃいけないことがたくさんあるし、
できてないこともいっぱいありますから、それらを探していくうちに、
きっと、死ぬ間際に、1つでも「ああ、あの仕事面白かったな、うれしかったな」って
思えることがあったら、それが私は天職なんだろうなと思ってるんですよ。
そういう風になりたいので、そんな簡単に天職が見つかるとか、自分にはこの仕事しかないとか、
あまり決め込まないで、逆に、もっといろんなことにトライする、自分を探していくっていうんですか、
その気持ちを続けていくことが大切なんじゃないかなと、いつも思って仕事をしています。

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◆プロフィール
高橋みどり (たかはし・みどり)
1956年東京生まれ。法政大学法学部卒業。
テレビ朝日の女性向け情報番組のファッションレポーターとして活躍後、株式会社ジュン アシダ、
株式会社メルローズの企画販売促進担当としてプレスの仕事を確立する。
ファッションショー、カタログ制作、雑誌のタイアップ、貸出業務、イベント企画などの仕事を担当。
1990年のバーニーズ ニューヨーク日本進出に伴い転職。一号店のオープンスタッフに加わり、
宣伝部ジェネラルマネージャーとして宣伝、PR、プロモーションなどにかかわる。
1997年には、ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社広報室長になり、
宣伝PR、プロモーション、VMD、広報の統括を行う。
2000年株式会社サザビーリーグの子会社、株式会社エストネーションを設立。
エグゼクティブオフィサーとして、プランニング、宣伝PR、マーケティングの統括を行う。
2004年から2005年までは六本木ヒルズ店の店長も兼任。
2005年6月に独立し、Oens(オーエンス)を設立。
人、企業、ブランドを応援したいという思いから、ブランドのPR、マーケティング、
商品・店舗活用プロデュースだけでなく、原稿執筆、セミナー講師など活躍の場を広げている。
著書に、『アルマーニに学んだ仕事で輝くために大切なこと』(あさ出版)、
『働く女性のワードローブ おしゃれの教科書』(講談社)がある。

オフィシャルブログ http://www.midroom.com/ HP http://www.oens.net/