第一回 PRコンサルタント 大上敦史氏(その3) | ファッション業界転職ブログ

第一回 PRコンサルタント 大上敦史氏(その3)

こんにちは。コンサルタントの池松です。
ゲストは、ファッション業界のPRコンサルタントとして大活躍中の、
エーバルーンとのお付き合いも長い、大上敦史氏です。

最終回(その3)では、彼のプレスとしての活躍を伺います。


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* * * * * 

池松 いよいよ、ディーゼルでのプレス・デビューだね。

大上 プレスとしては初心者のスタートだったんですけど、
すぐに上の人が辞めちゃったので、
早い段階で通常の貸出業務やタイアップ撮影や
コレクションなど海外出張にも行かせてもらえて。

何もかも未経験なので、わからないことだらけでしたが、
PRの上司は大阪本社いて、
基本的に、責任は取るから全部自分でやってみろみたいな感じで
さまざまな業務をやらせてもらえたんです。

まだまだプレスしてはひよっこな25、6歳だったんですが、
ファッションショーやパーティーの企画から運営、
毎シーズン何誌もあるタイアップ撮影や、
ヨーロッパ出張、NYコレクション、プレス1年目では
普通は出来ないことをやらせてもらえました。

いろいろなことをやらせてもらえて、とても充実していたのですが、
2年経った頃にD&Gからオファーがあって。
自分の中では3年間経験を積んだら
コレクションブランドのプレスになりたいという目標があったのですが、
2年はまだちょっと早いかなって。

ディーゼルのプレスとして、本当に毎日楽しく仕事をしていたので。
ただ、チャンスなんて、いつも来るものじゃないから、
この機会を逃さず、挑戦してみようと考え
結局2年半後に転職することにしました。

池松 D&Gでのポジションは?

D&Gには、プレスのアシスタント・マネジャーで入りました。
もともとマネジャーでというお話だったのですが、
まだ年齢が若いということで。
でも、D&Gのことに関しては全て任されていたので、
ポジションはさほど気にならず。

メンズ、レディース、どちらにも携わっていたので、
コレクションの度にミラノ出張が年4回。
VOGUEをはじめ、一流モード誌など、
ディーゼルの時よりも、
お仕事をさせていただく媒体がぐっと増えました。

その分、仕事の質という部分での向上が必要であり、
当時ドルチェ&ガッバーナのマネジャーだった方に、
ものすごくしごかれました(笑)。

かなり細かいところまでチェックする方だったので、
その分仕事のやり方が丁寧になりましたし、
特集記事を作ってもらう交渉の仕方など、
本当にさまざまなことを教えていただきました。

かなりスパルタな方でしたが(笑)、今もとても感謝しています。

そして、1年半後にいろいろ人事異動があり、組織構成も変わりました。
今度こそ、マネジャーに。。。と期待に胸を膨らませましたが、
新組織の中ではいつまでたってもマネジャーになれなかった。
ならばいっそのこと、他のブランドにも目を向けてみようかなって思って。

その頃、よくいろいろなブランドから声をかけていただいていて。
その中のひとつ、ヴェルサーチから
PRマネージャーのオファーがあったんですけど、
当時の自分は、まだ古いヴェルサーチのイメージしか持っていなかったんです。

ところが、ちょうどコレクションの内容も
組織構成もかなり変わった時期で、
ミラノのショールームに行った時に、
余計なものを払しょくした
シンプルかつ、モダンで力強く美しいコレクションに、
ヴェルサーチの新たな可能性を感じて。
それでヴェルサーチに移る決心をしたんです。

池松 だって、大上くんがヴェルサーチ行くときは衝撃的だったもん。
D&G辞めるってことになって、
次どこに行くんだろうって思ったらヴェルサーチ?って。
じゃあ若い頃に、プレスも広告も全部経験したんだ。

大上 広告が出来ると(出稿する年間のメディアプランの作成など)、
プレスの中でも仕事の幅がぐんと広がります。

エディトリアル、広告関連、パーティーなどのイベント企画・運営、
本国とのコミュニケーション、
年間のバジェット管理、そしてDMなどの制作物まで、
多岐にわたって経験を積むことができました。


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池松 今もヴェルサーチに携わってるよね。

大上 はい。現在は直接ミラノ本社と契約しています。
この秋冬からスタートで、百貨店を中心に出店していく予定です。
今年の1月からは、デニムの7 for all mankind、
イタリアのナパピリなどを展開しているVFブランズの
PRコンサルタントとして全体の業務をみています。

池松 PRのディレクターとか
コミュニケーションディレクターとかで
業界では有名な方々は多いんだけど、
その中でも大上くんて、指折りだよね。
人脈述とかって何かある?

大上 基本的に腰が低いと思います(笑)。
ラグジュアリーブランドのプレスとかって、
ツンケンしている人たちが、意外と多いんですよね。

でもそれって、本人だけじゃなくて
ブランドの看板があるからでしょ?と。

ポジションが上がってくると、
態度もコロっと変わっちゃう人も中にはいます。
ブランドPRの人たちで、人によって態度を変えたり、
高飛車な態度を見たりすると、
ああちょっと悲しいなって思います。

プレスの職業は接客業でもあるので、
好き嫌いせずに、相手が誰であっても
気持ちよく仕事ができる環境をつくりたい。
スタイリストさんやヘアメイクの方のアシスタントにも敬語だし、
誰であっても丁寧に接して、態度を変えないように心がけています。

あと、男性的な目線もあるし、女性的な目線もある。
もともと雑誌が大好きだったから、
常に読者の目線も持っていると思います。
なので、タイアップ撮影などでも、
どういうのが読者に響くかとか、
いつも読者の目線になって考えるようにしています。

パーティーなどで、
たくさんの方々に来ていただくのもプレスの手腕。
ディーゼル時代から、セレブリティーやモデルさん、
トレンドセッターとの繋がりは必要だと考えていて、
いろいろなブランドのパーティーやイベントに顔を出したり、
どんなに小さな撮影などにも出向いていって、人脈を広げていきました。

池松 プレスの中で成功する秘訣、何かある?
礼儀とか接し方とか。

大上 プレスルームは、どんな時でも
整理整頓をモットーにしていました。
忙しいスタイリストさんが1日何件も、
貸出しでプレスルームを周る中、
乱雑であると落ち着いてもらえないし、
商品もよく見えない。

少しでもくつろいでいただけるように、
必ずお茶を出して、
30分くらいお話をしてから貸し出しをスタートするみたいな。

あわただしく5分10分で貸出しが終わってしまったら、
コミュニケーションも取れない。
スタイリストさんと一緒にお話しをしながら、
サンプルを見ていただくと、
より一層親しくなれるものです。

あの人とは仕事しやすいな、
また会いたいな、と思ってもらいたい。
あそこに行けば面白いなって(笑)
そうすると貸し出しが増えるし、その分雑誌等への露出も増えます。

よく「喫茶・大上」っていわれていました(笑)。
美容とかも大好きでミーハーなとこもあるので、
女性の編集者の方たちも
「今はなにに凝っているの?」といった感じで、
美容談義も盛り上がっていました。
そんなこともあって、たえずたくさんの方が
プレスルームに来てくれるようになりました。

あとは、プレスリリースなどを作成することがよくあるのですが、
文章はレイアウトなど、かなり細かなところまで気を配ります。

プレスはブランドのイメージを作り出すところでもあるので、
何に対しても
イメージに繋がるところは、
細心の注意をはらうようにしています。


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池松 今までやった失敗談は?

大上 ディーゼル時代にタイアップ撮影があった時ですかね。
撮影の立ち会いに行くことは、
ここはブランドとしてきちんと見せたいとか
撮影の時に伝えなければいけないんですけど。
一度、某メンズ雑誌でのタイアップで、
撮影スタッフが大御所の方ばかりだったので、
怖くて何も言えなかった。

そうしたら、上がってきた写真が
もともとのブランド側の意向と全然違っていて、
大問題になってしまって。

タイアップには何百万というお金がかかっているのに
なんだこれ!って当時の上司からすごく怒られて。
立ち会いに行って、何をしていたんだ!って。
絶対これじゃダメ!って。

でも雑誌側は、これはうちのクリエイティビティだからって。
最後には、編集長も巻きこんでしまって。
お互いの譲歩点を見つけて、解決したのですが、
それはとてもいい勉強になりました。

池松 未経験だからこそ起こった問題でもあるよね。
若いPRの方へのメッセージはある?

大上 みなさん、おしゃべりな業界なので(笑)
悪い評価もまわるのすが、良い評価も回るのですよ。

若いPR時代って、サンプルのピックアップとか返却とか
面倒くさい仕事もあると思うのですけど、
何事も一生懸命にキッチリすると絶対にその噂も回ります。
だから、仕事はデイ・バイ・デイで小さなことでも真剣に取り組むこと。

それから、ブランドのイメージを表現する部署なので、
そのブランドに染まること。
ファッションや着こなし、雰囲気など、
ブランドイメージにぴったりだと思ってもらえること。

だから当然ですけど、外見にはきちんと気を配る。
ファッションやビューティはそのためにあるものだから。

あとインポートブランドは、
本国のスタッフに対しても見た目の印象って、とても大事。
日本のPRはどちらかといえばコンサバな人が多いけど、
もっと表現した方がいい。

池松 本当にその通り。プレス募集の場合でも、
イメージも重要な判断要素のひとつだから。

大上 あと、会社員の頃よく思っていたんですけど、
PRって社内でも孤立しやすい部署なんですよ。
なぜかというと、PRだけが唯一
直接お金を生み出さず、
イメージを広げていくために会社の予算を使う部署だから。

基本的に社外の人とのお仕事も多いですし。
会社の景気がいい時はいいけど、
悪くなってくると、何をやっているんだPRはみたいな。
だから、社内にもPRしていました。
どんどんPRの情報を積極的に伝えて、
常に情報の共有をして、
社内の中でも応援してもらえるような環境を作るように心がけていました。

池松 大上くんにとってキャリアップって何?

大上 キャリアもそうなんですけど、
人生は長いので、上に行くことをストップしてしまったら、
あとはつまらない人生しかないなぁと。
だから、何事も向上していきたい。

常に、今が一番充実していると感じたいです。
仕事でも、ポジションや報酬も上げていきたいし、
上がっていけば自分の可能性の幅も広がるし、
自分が決められる範囲が広くなるから。


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池松 自分のブランディングについて何か意識してることはある?

大上 何かを仕掛けるには、まず女子をターゲットに考える。
なぜかというと、やっぱり女の子はパワーがあるし、
ムーブメントをまず作り出すのっていつも女の子だと思うんです。

僕の場合、ブログにしてもトークショーにしても、
見てくれは男なんですけど、
興味があることは、美容だったりお花だったり
料理だったり、全部女の子が好きなもの。
なので受け入れられやすいのかなぁと、
そのポジションは特有かなと意識してます。

ファッションも、毎シーズンミラノコレクションに直接行っているし、
常に最新のファッションの流れを知っているという強みもあると思います。
オネエ全開のテレビ番組のオファーもあったんですけどーーー

池松 え、ホントに!?(笑)

大上 仕事でもプライベートでも、
家族や友達にもセクシャリティーのことはオープンです。

実は、本の出版の話が昨年あったんですが、
いまは出版不況なので売れないとダメ。

でも、ブログのピンポイントだけじゃ知名度が足りない。
もう少し露出を多くしないとと思って、
テレビの話も受けました。

思ったより緊張せず、リラックスして楽しめました。
自分で言うのもなんですが、
意外とテレビ映りがよかったなぁと(笑)。

池松 最後に。あの頃、21歳の時に彼から
アンビシャスがないっていわれたけど、今は?

大上 昨年はある大きなブランドのPRディレクターで
オファーをいただいて。
この年齢でPRディレクターはなかなかないし、
すごく迷ったんですけど、
やっぱり、活動範囲の制限が多かったので行きませんでした。

プレスの仕事は好きなので、
現在はいくつかのブランドと契約して、
フリーランスというスタイルでやっています。

おかげさまで、個人の仕事も増えてきているので、
今はその範囲を広げていくことですね、テレビとか本とか。
プレスの仕事と、個人の活動を両立させていきたいなと思っています。

* * * * * 



「どうすればプレスになれますか?」という質問をよく受けます。
が、人のマネをしていても道は遠い。
自分で開拓していくことの大切さを、大上くんは自身の経験をもとに、
きちんと体現している優秀なプレスです。

仕事柄、たくさんのPRディレクターたちとお会いする中、
大上くんは本当に若くて、それでいて活躍しているから、
きっと、人とは違う、何か秀でた決めてがあると思っていました。
今回はその「何か」が聞けた気がします。

(文責:堀田律子)



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