増大する中国や北朝鮮の脅威を前に、国民の間では自衛隊に対する期待が非常に高まっている。


やはり最後に国を守る砦となるのは、実力組織である自衛隊であり、自衛隊への期待と関心が高まるのは当然である。


ただし、自衛隊の戦力を過大に評価し、中国軍など我が自衛隊の敵ではないと思い込むようなことは避けたい。


よく書店などに行くと「これが最強の自衛隊だ!」的な本だったり、YOUTUBEなどでも「こんなに強い自衛隊」みたいな自衛隊の強さを誇張する動画をよく目にする。


確かに自衛隊はアジアでもトップクラスの実力はあるだろう。しかし、自衛隊はこんなに強いと思い込み、客観的な視点から自衛隊の実力を判断できない人が多いのは危険だ。


自己満足な考えで、自衛隊の欠点や弱点などを直視できない人が政治家やメディアにいれば、いざ戦争になったら負けるだろう。


つい先日も、ロケットニュースというウェブ上のニュースサイトで【日本の科学力は世界一ィィィ!】という記事があったので見てみたら、案の定自衛隊の戦車を過大評価したものだった。


読むと「10式戦車は第4世代主力戦車と定義されており、他国ではまだ第4世代主力戦車を開発していない。そのためこれは「世界最新の戦車」と言っていいシロモノであり、「日本の科学力は世界一ィィィ!」と胸を張って言える戦車なのである。

また、装甲についても新規に開発した複合装甲を使用することで軽量化を図り、高速な走行も可能。とにかくレオパルド2やメルカバや99式戦車よりスゴい!」とある。


こんな主張、まともに軍事的な知識があれば、ただの誇大妄想に過ぎないことが分かる。


まず10式戦車を「第4世代」と定義しているのはあくまで自称であり、そもそも「第4世代戦車」の定義は世界的にも定まっていないのが現状だ。


10式戦車はネットワーク化に対応し、攻撃力が増大している点などは評価できるが、性能的には第3世代戦車を近代化した3.5世代相当だ。


レオパルト2や中国の99式よりすごいと書いているが、何を根拠に書いているのかも不明。少なくとも装甲については、正面だけでなく側面や車体下部の増加装甲も施せるレオパルト2の方が生存性は高い。(10式の正面装甲は相当頑丈らしいが)


99式も主砲から対戦車ミサイルを発射できる点や、強固な複合装甲、アクティブ防御システムの採用など先進技術を取り入れている点を評価すれば、決して10式が圧倒的に強いとは言い切れないだろう。


大東亜戦争開戦前、アメリカは日本の工業技術は低いと見くびっていたが、いざ戦争が始まると、日本軍のゼロ戦や隼に翻弄され、手痛い損害を被り大苦戦した。


ネット上で、保守派や自称愛国者などは自衛隊は最強と主張する記事や動画などばかりをアップして、誇大妄想に陥っているが、客観的に自衛隊の戦力や問題点、他国の戦力、特徴などを判断できないといけない。


上記で紹介したロケットニュースの記事などを見ていると「我が軍は無敵」と宣伝している北朝鮮のようである。


客観的に判断ができないと絶対に戦争に負ける。国民が自衛隊の強さを過大に評価して思考停止に陥っているようではいかんのだ。