ラマダン中のヨルダンの1日 | アーディで行こう

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「普通」を意味する便利な言葉、「アーディ」 地元の足として、とことこ走るバスなんかを「アーディ バス」、エジプトではエアコンなし列車を「アーディ」 そんな方法での旅を紹介しましょう。
え、そんなの自分には無理だって? 大丈夫。「アーディ、アーディ」

ムスリム(イスラームに帰依した人々)が黎明から日没まで一切の飲食(と性行為)を断つ月がرمضانラマダーン。今年2010年は8月11日から9月10日の予定です。イスラム暦は太陰暦なので、地域によって異なります。月の満ち欠けが確認できないと変わったりします。が、雲がなくても、事前に言われていた日時より、1日くらいずれるのが常で、このご時世に不思議なことです。
ラマダン中の断食صومサウムは、子ども、妊娠中の女性、旅行者は除外されるのですが、ヨルダンでは世の中全てがラマダン一色なので、旅行者とて影響なしではすまされません。
では、ラマダン中のヨルダンの1日を紹介します。

日の出の前1時間頃 断食に備えて食事をとる。
 断食は日の出からと思われていることが多いですが、暁の時間帯はすでに断食タイムに入ります。
 食事後、礼拝します。

日の出後~午前8時  二度寝
 夏は暑いのと、昼間断食で動かない分、夜遊びが長くなるので、ここで寝ないと睡眠が取れない。

午前9時 出勤
 通常8時始業がヨルダンの標準ですが、ラマダン中は1時間繰り下げです。

$アーディで行こうアーディで行こう日中 
 外に出ると体力を消耗する&水も飲めないので、外出している人は少ない。
 飲食店は日没まで全て閉店。
 アンマンのダウンタウンだと、ハーシェミ通りのアンマンザマーンが2006年にラマダン中の営業をしていましたが、いまはどうだか。ほかの店で開いているところは知りません。
 写真は1枚目がラマダン中の午前のアンマン、ローマ劇場前のようす。
 2枚目はシリアのダラア駅前です。こっちはわりと人が出ています。

 バスは動くが、客自体少ないので、満席になって出発するヨルダンのバスは運行頻度が減ります。
 アンマン~アカバなどの定時発車バスも、ラマダン中は特別ダイヤになっていたりします。
 エアポートリムジンは動いています。

 また、事故は多発。大学の通学バスが横転どころか、タイヤを上にしてひっくり返っているのをみたことがあります。この日はその後、幼稚園のバスがこれまた横転していて、いやはや事故をよく見る一日でした。こっちの運転手(といっても職場の公用車)は「俺は運転手だから断食はしない」という人でしたので、リスクは半減です。ちなみに、2年間であちこち行きましたが、うちの職場の運転手(3人ほどいる)が事故を起こしたことはありませんでした。見ていると、運転もけっこう上手です。

午後2時前後 退社時間帯
 終業時刻も1時間繰上げでこの時間帯に帰る人が多く、しかもみんないらついているので道路は大渋滞。クラクションが音楽のように節をつけて鳴っています。アンマンならワディ・サクラ~中央郵便局前の道路が一番ひどく、ほとんど動きません。

アーディで行こう午後4時~日没 夕食準備
全ての人がメインイベント、イフタール(断食明け食事)に向けて、スタンバイです。
食事を作らない人はどうするかって? テーブルについて断食明けのアザーンが鳴るのを今か今かと待っています。日中のアザーンがきれいに聞こえるのはラマダン中だけです。
道路はガラガラ、客もいないのでバスは走らない。タクシーもいません。アンマン市内の大型市内線バスだけは、なんとか走っているが、運転手の機嫌はもちろん悪く、スピード出しまくりの荒い運転です。

酒について
 酒屋は1ヶ月間休業。酒を扱う雑貨屋も商品撤去。ラマダン中は夜でもレストランで酒を出しません。
酒を売ってくれる店を確保することが、酒飲みにとっての至上命題です。雑貨店だと奥から持ってきてくれますが、ムスリムの前では体裁が悪くて売りません。なので、このイフタールの時間帯に買いに行くのが一番いいです。ムスリムが店にくるわけありませんから。ちなみに、ヨルダンでは酒の販売許可を取れるのは、イスラム教徒以外(つまりキリスト教徒)です。店員は、ムスリムだったりしますけど。

アーディで行こうアーディで行こうアーディで行こう日没から1時間 全ての人が食事をしている。
 安食堂から高級レストランまで、すべてが「ラマダンスペシャル」という特別メニューになります。
 ハシミテ広場には王族や財閥をスポンサーとして無料で食事を振る舞うテントが出ます。
 イスラム教徒以外でも食べられる。が、すごい雰囲気。
 見知らぬ他人でも一瞬にして友達と化し、一緒に飯を食べる。もともとヨルダンでは「個食」自体がありえません。みんなでわいわいと食べます。
 重要施設の警備をしている警官などはさすがに食事に入れないのですが、たまたま車からみたときは、アザーンが鳴ったまさにその瞬間にペットボトルの水を顔に浴びていました。
こっちの車中もそうでしたけど。予定より帰りが遅くなって日没までに家に着けなかったんです。その日の出張はキリスト教徒のドクトーラがボスでしたが、朝から車の中でタバコは吸うわ、シャーイは飲むわ、「ラマダン? そんなの関係ねえ」状態でした。
しかしラマダン中に約350キロ離れたアカバまで日帰り出張するのはきついわ。
 
およばれ
 ラマダン中は、親戚や友人を呼んでイフタールを一緒にする「お食事会」が盛んです。
 右の写真は私の同僚の家でのイフタール。ヨルダンなら、やはり「マンサフ」です。
 この時は妻も行ったのですが、男性は男性だけで屋上、女性陣は客間でと、結婚式と同じく、セパレートです。
 マンサフのウマいマズいがわかってこそ、楽しみも増えます。
 食事をしたあとは、シャイを飲みながらつれづれにしゃべります。

日没1時間後 全ての人がいっせいに町に繰り出します。

夜間 
夏のラマダンだと暑いので、この時間帯が最もそぞろ歩きに適しており、深夜まで家族連れでにぎわいます。一般に、ヨルダンの家庭は小さな子どもでも同伴するので、夜の11時12時になっても、0歳児から就学前くらの子どもが親にひっぱりまわされているのをよく見ます。
夏だと、断食前の食事まで寝ない人が続出します。

こんな感じです。私がいた数年前はラマダンが秋でしたけど、今年や来年は暑くて大変だろうなあ。