シリアとトルコの国境越え 各国境の特徴とアクセス(1) | アーディで行こう

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「普通」を意味する便利な言葉、「アーディ」 地元の足として、とことこ走るバスなんかを「アーディ バス」、エジプトではエアコンなし列車を「アーディ」 そんな方法での旅を紹介しましょう。
え、そんなの自分には無理だって? 大丈夫。「アーディ、アーディ」

シリアとトルコの国境を越える旅行者は意外と多い。ヨーロッパ側からだけではなく、イランなどアジア側からも、イラクがこんな状態ではトルコ経由で中東に入るしかないからです。

シリア・トルコの国境線は長く、877kmもあります。国境は各地に散らばっています。西から順番に、国境名とその特徴、アクセスなどを簡潔にまとめましたので参考にしてください。国境名は左側がシリア、右側がトルコの最寄りの町の名称です。
なお、シリア・トルコの道路国境は徒歩での越境が認められています。

シリアビザと出国税
シリアビザを取れない国境というのは聞いたことがありません。ビザの値段は2009年10月時点でも、2週間観光ビザ24米ドル(2番のバーブ・アル・ハワだけ28ドル)、足掛け3日間有効のトランジットビザは8ドルです。ビザ代を払う際は、ドルのお釣りがない場合が多く、シリアポンドでのお釣りはレートが悪いので、きっちり用意して行くことをお薦めします。ちなみにヨーロッパ人だと30米ドルが相場と、日本人、韓国人より高いです。
シリアの陸路出国税は500シリアポンド。場所によっては50~60SPの用紙代を取るところがあります。イミグレの建物に入ったら、先に出国税の印紙を払いましょう。窓口に行っても、「先に払ってこい」と追い払われるだけです。税を意味する「ضريبةダリーベ」と連呼しましょう。誰かが連れていってくれます。

1 カサブكسب ~ ヤイラダーYayladağı
アーディで行こう
シリア地中海岸の都市ラタキアと、かつてはシリア領だったアンタクヤを結ぶ街道にある国境です。
カサブはアレッポ石けんに含まれる月桂樹の産地として有名。石けんづくりもしているアンタクヤでもカサブの名はブランド的な響きがあります。海岸線ながら国境は標高800~1000m急峻な山の上にあり、ヤイラダーは避暑地としても知られています。カサブに行った人からの話だと、のんびりしていて、とってもいいところだそうです。そして外国人観光客は皆無とのこと。
カサブまではラタキアのミクロバスターミナルからセルビスが、ヤイラダーまではアンタクヤのドルムシュ乗り場からセルビスがかなりの頻度で走っていますが、シリア側国境はカサブの手前でセルビスを降りれば400mほどですが、トルコ側はヤイラダーの町外れから4kmくらいの道のりがあります。急ぎの人はラタキア~アンタクヤを直接結ぶ国際セルビスを利用しましょう。4人集まれば出発します。右の写真はアンタクヤのドルムシュ乗り場。手前が次の項で紹介するレイハンル行き。奥がヤイラダー行きです。

2 バーブ・アル・ハワباب الهوا ~ レイハンル Reyhanlı
アーディで行こう-バーブアルハワゲートアーディで行こう-バーブアルハワアーディで行こう-レイハンルを見下ろす
アレッポとアンタクヤを結ぶ国境です。シリア~トルコ間の旅行者のほとんどがここを通るくらいメジャーな国境。午前中はひどく混みます。夕方にかけて空いてきますので、その辺を考えて通りましょう。国境は24時間開いています。
トルコ側のイミグレは建物内ではなく、写真のような検査ホームに建っているブースにパスポートを見せて手続きします。

アレッポとアンタクヤ間のバスは午前~昼発くらいしかありません。あとは国際セルビスになります。バーブ・アル・ハワまではセルビスが、レイハンルまではドルムシュが頻発してますが、バーブ・アル・ハワとレイハンルの町の間は20kmほどもあり、国境を越えるタクシーを捕まえると割高です。国境イミグレの間も4kmほどの山道なので、国境まで何らかで乗り付けて、そこから歩くのもしんどいです(やってみましたが、出国したところでギブアップしました) ヒッチハイクは容易にできますが、タダということはないです。

バーブ・アル・ハワとはアラビア語で風の門という意味です。その名の通り、ここは周りに比べて山が低く、ハタイから海風がアレッポに流れ込んでくる風の通り道になっています。右の写真のように、古いイミグレのところにゲートが建っています

ハタイはアスィ川に沿った肥沃な農業地帯。トルコ国境ではシリア側は全く警備の軍隊がいないので、写真撮り放題です。右上はシリア側の田舎を訪れた時に、運転手のシリア人が「撮れ撮れ」とうるさいので撮りましたが、ちょうどレイハンルを真上から見るポイントでした。。

アレッポ~アンタクヤのバス・セルビス
アーディで行こう-アレッポ国際ターミナルアーディで行こう-トルコのセルビスアーディで行こう-シリアのセルビスアレッポ発
アレッポでは観光案内所向かいの国際セルビス・バス乗り場から。右の写真のように、柵に囲まれた敷地に黄色いタクシーやらバスやらが所狭しと並んでいるのですぐわかります。

下は2009年10月末の現地での情報です。
バス 5:00発 300SP  14:00発 350SP (このほかに10:00発もあったはずだが...)
バスは早朝が一番安いので、旅行者がよく利用していますが。100円の違いです。

セルビス 4人集まればいつでも出発 750SP
右の中央の写真はトルコの車。小型のワゴンが多いです。シリアの車は右下のような乗用車タイプ。ナンバーも違います。

ちなみに車の後ろ側、建物にはタクシーやバス会社のオフィスが並んでいます。

アンタクヤ発
エスキ・オトガルから。トルコ・リラの信用低下に伴い、バス、セルビスともシリアポンド建て(ないしはドル換算)となっています。バスは6:00~12:00の間に各社とりまぜてアレッポ行きが30分~2時間に1本、ダマスカス直行が2本くらい。朝早くの方が頻度が多いです。10時発の次は12時発といった感じ。バス会社は4社くらいあります。アンタクヤ拠点のメジャー、HASはちょっと値段が高いです。

この国境だけ(と思いますが)シリアビザが28ドルします。また、トルコ側のスタンプは、HATAI(ハタイ)と表記されています。

この区間のバスについては、こちらに追加情報をまとめてあります。

3 メイダンエクベスميدان اكيس ~ イスラヒーエ İslahiye
アーディで行こう-メイダンエクベス駅列車アーディで行こう-メイダンエクベス国境アーディで行こう-イスラヒーエ駅
シリアとトルコを結ぶメインの鉄道国境です。なので、列車を利用しないと出入国できません。列車はほとんどが貨物列車で、週に1本づつ、アレッポ~イスタンブール、ダマスカス~テヘランの国際列車が走ります。ただし、イスタンブール便はトルコの国鉄線路改良工事の影響を受けて運休したり走ったりを繰り返したあげく、最近は2008年夏からまたずっと走っていないようです。2009年夏に、アレッポ~メルスィン間という国際夜行列車が週2本走り出したんですが、これも秋になるといつのまにかトルコ国鉄、シリア国鉄のHP時刻表から削除されたので、たぶんやめちゃったんだと思われます。

このほかに、トルコ国鉄のHPには、アダナ(時期によってはフェフジパシャ)~メイダンエクベスという夜行列車が毎日運行と掲載されていたことがありました。実はメイダンエクベス駅は国境線からたった500mシリア側に入ったところ(右中央の写真が国境線)なんですが、駅のなかにトルコ国鉄の事務所もあるんです。そして、通るたびに観察していると、どうやらこの駅からトルコ側の列車は全てトルコ国鉄の管理下なんですね。なのでシリア国鉄が知らないところでそんな「国際列車」が走っていてもおかしくはありません。だれか、イスラヒーエ駅あたりでチェックしてみてください。
ちなみに、上の写真は2008年6月にイスタンブール行きに乗ったときのこと。メイダンエクベスからトルコの客車を1両だけつないで、行商人が数人乗っていました。イスラヒーエで切り離して、行商人も降りてしまいましたので、国境間だけの区間列車を併結していた格好になります。

トルコ側の出入国はイスラヒーエ駅で行います。イスラヒーエ駅は典型的なトルコの田舎の駅の風情。右側がイミグレです。
イスラヒーエはガジアンテプ県では主要な町のひとつなので、ガジアンテプやカフラマンマラシュKahramanmaraş、ナルルNarlıからドルムシュが出ています。たぶんアダナ行きなんかもあると思います。

4 アザーズاعزاز ~ キリス kilis
アーディで行こう-アザーズ国境ゲートアーディで行こう-ビリラムーン
アーディで行こう-キリスのガラージュアレッポとガジアンテプGaziantepを結ぶ街道にある国境で、小規模ながら24時間オープン。イミグレ間は平坦で見通しもよい1本道を1kmちょいという、とっても越えやすい国境です。ただし、イミグレまではタクシーで行かなければなりません。アザーズ~シリア側国境までが6km、アザーズ市内でこの間だけを専門に走るタクシーを拾って100SP。トルコ国境~キリスのカラージュ・ドルムシュまでが7km。こっちはタクシーは高いです。5ドルとか。私はシリア側から越えて、イミグレ内で適当に車をヒッチして、それでも5ドル払いました。

アザーズまでは、アレッポの北側のカラージュ・ビリラムーンكراج اليبيلليرامونからセルビスに乗って行きます(右中央の写真)。40分くらいでアザーズに着きますので、運転手にトルコに行きたいと言えば、カラージュではなく、街中のドワール(円形交差点)にいる国境専門タクシーを紹介してくれます。

キリスまでは、ガジアンテプのカラージュ・キリスという、町の南側にあるドルムシュ専門ターミナルからドルムシュが30分おきくらいに出ています。ここはカフラマンマラシュ行きやイスラヒーエ行きのドルムシュも出ていますが,なぜか名称はキリス。しかもシリア風のカラージュと呼ばれています。
右の写真はキリスのガジアンテプ行きドルムシュ乗り場。この向かいに国際セルビスの事務所もあります。

アレッポ~ガジアンテプ間の直行国際セルビスを使う人は少なく、運転手は40ドルとか、とってもお高いことを言ってきますので、めんどうでも乗継ぎの方がいいでしょう。この辺の人はシリア人もトルコ人もとっても親切なので、途方に暮れることはありません。日が暮れたら民泊できるくらいです。