【結月ゆかり】 午後五時半の交差点 【オリジナル】
薄暗いインテリアショップの
前においてあるベンチに
彼はいつも座っていた
人通り多い道でも気にせず
メガネ越しに前を向いて
何か見て微笑んだ
午後五時半の交差点
行き交う人は無表情
赤信号には舌打ち
“目的は忘れてしまったよ”
ベンチの彼は言うけれど
それは嘘じゃないかな
懐かしい誰かを思い出してる?
笑っている
何を見ているんだろう
午後九時半の交差点
行き交う人は大声で
赤い顔して目は虚ろ
午前三時の交差点
行き交う人はもういない
私もとっくにいないけど
ため息つく赤信号