今月は、現在宇都宮大学 地域連携教育研究センター 生涯学習部門の准教授で、地域と教育、生涯学習や学びあいについての研究をされている、佐々木英和さんです。大人に向けての教育を行い、教育のイメージを変えていこうとされている佐々木さんですが、教育への問題意識を抱くようになったきっかけは、どこにあったのでしょうか?学生時代の佐々木さんの経験について、今週は詳しくお話をお聞きしました。
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(もっち) 教育を変えたい、教育の常識を変えたいと、今活動されていますが、最初から「教育を変えよう!」とおもってされてきたのですか?

(佐々木) そうですね、私自身きっかけになったのはそれこそ高校時代で、こんなことがあったんです。ある男の子が「お前成績悪いじゃないか!!」と叱られているのを見て、私自身が成績良かったわけではなかったですが、その姿を傍からみて、「勉強って自分で決めて自分でやるもんだ」っていう方針があることに気付いたんです。だから、人に言われてやらされるものじゃない。

「まなび」っていうのは自分で決めてやるもんだから。私なんかはよくそうだったのですが、親が「勉強しろ」とは言わなかったけど、例えば「本を読め」って言ったら自分は絶対に読まない!って決めてましたから(笑)。なんかひねくれてて、命令されると従えないところがありましたから、「自分で決めて、自分のためにやるのが“まなび”なんだ」

そう思うと、なんか今の日本の教育って、嫌々やらされてやっていく、っていうのが普通になっていて、あまりにもやらせていると。「勉強」というのは中国語で「強制」っていう意味になるみたいなんですが、「強制されて嫌々やる」っていうのが教育の現場、というのは違うんじゃないか?という思いをずっと、高校ぐらいから抱えていたんですよね。

(もっち)それで、今まで教育について関わっていこうと考えられたんですか。

(佐々木)そうですね。ただそうはいっても、高校ぐらいのときって漠然としていて、やっぱり「自分が見えるチャンス」が受験ぐらいだったんです。私って本当に本番に弱いところがあって。今は見えないでしょ?(笑) 例えば大学入試のセンター試験とかあるじゃないですか。そうすると、残り2つで迷うと必ず逆(=間違い)のほうを選んじゃう。それで見事に点数が低くなるタイプで。なぜか本番に弱いんです。でも、それに気付けたことが、受験に失敗したことが、かえってよかったですね。

予備校も通ったことがあったんですが、在宅浪人を経験したときに、所属がないし、自分と向き合うだけ。楽しみはと言えば、週に1回、「少年ジャンプ」を読むことぐらいで。もう、出た瞬間に買いに行って、読み終わって1時間もしたら「空しいなぁ、友達いないなぁ」という経験をしたことが、かえってよかったです。

(もっち)良かったんですか?

(佐々木)つまり、「どこにも所属していない」ことで、「自分は何者だ?」って見つめるチャンスだったんです。だから、そのままの流れでどこかの大学に受かっちゃうよりも、かえってそういう立ち止まる時期に、「自分って何者だ?」と見つめるチャンスがあったことが、今の自分にすごく意味があるなぁと、考えています。

とにかく「自分は何がやりたいんだろう?」とか、見つめ直せたというか。そこで、それまでは法学部系の大学に行って、こんなことを考えていたんですよ。「法学部に行って弁護士になって、お金持ちになって塾を作って教育を変えたい!」とかって考えてたんですよ。

(もっち)そういう流れで考えていたんですね。

(佐々木)そこで考え抜いたのが、「そうじゃない。教育を変えたいなら最初から教育を研究すればいいじゃないの(笑)」と。やっぱり自分の行きたいところに直接行くべきじゃないかなということで、教育っていうことを考えて、教育に疑問を持っている自分に気づいて、今、それで食べてるといえば食べてるんですよね。大学に入るまでの間が「自分を見つめる期間」だった、ということでしょうか。

もちろん、浪人する・しないに関わらず、今だってそうですけど、いろんな物事がうまくいかないと、自分を見つめる時間を持つように、努力したいと思っています。


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(もっち) 自分が何者であるか、自分が本当にやりたいことが教育なんだ!と思うようになったのが、大学入ってからだったのですね。

(佐々木)大学入ってからですね。東大の文3(文科三類)に入ってから始めたのがフィールドワークで、とにかく、教育っぽい現場をいろいろ見て回ろう、ということで、インチキ臭いものも含めて、とにかくいろんなものを。自分が固定観念に縛られているのが怖かったといいますか、浪人時代に、「視野が狭くなる」ということに異常な恐怖感を感じたんですね。だから、自分の固定観念を壊すために、それこそ、自分の価値観と違うものを見てみないといけない、と。

そんな感じでとにかく、学生としてそこそこ勉強もしていましたが、勉強以外に社会というものを見てみようと。それが、「大人の学び」の現場だったんですよね。大人がどう変わっていくか。

そうやっていくうちに、「教育」といったときに、子供だけじゃなく大人が変わっていくということの重要性に余計気づきましたし。大学で学部・学科を選択するときに「教育社会学か社会教育学か」で悩んだんですけど、要は「枠に縛られたくない。枠というものを踏み越えて、教育というものを大きく広く、なおかつ深く捉えられたらいいなぁ」なんて思って、人生の選択になったという感じです。

(もっち)教育社会学と社会教育学...文字の順番が逆になっているだけですが、どう違うのですか?

(佐々木)確かに(笑)、それは大きいですね。

(もっち)佐々木さんが選択することになった「社会教育学」というのは?

(佐々木)教育社会学というのは、教育を広くとらえて社会学的に見るんですが、どうしても「教育」といった場合、多くの方が「学校教育」を中心に考えるものですから、実際に学ぼうと思っても、先行研究(過去の蓄積)をみると、「学校について広い視野で、社会学の視点で見よう」というのが多いんですよ。
それに対して社会教育とは何か、というと、「学校教育以外の教育」というんですね。例えば子供向けについて言えば子供会とか、ボーイスカウトとか。あとはお祭りとか、旅とか。とにかく「これ、教育なの?」って言えそうにない活動も含めて「とりあえず、教育っぽいよね」なんて広くとらえる。

(もっち)いろんなものの教育的な側面を取り上げる学問なんですね。

(佐々木)そうです。お祭りを通して人が変わっていく姿なんかは研究対象になりますし。そうすると、子供だけじゃなく大人、そしてあとは高齢者。すると、「生涯学習」という言葉、聞いたことありませんか?

(もっち)あります。高齢者の方向けに使われることが多いイメージです。

(佐々木)ところが、高齢者だけではないんですよね、本当は。「生涯」ですから。生まれてから、それこそ棺桶に入るまで全体をみるっていう考えなんです、教育とか学習というのは。

ところが世間的に「生涯学習」の実態は、例えば「カラオケ行くぞ~」「ゲートボール行くぞ~」みたいに楽しく。なんか軽~いイメージに見られて、「私の専門は生涯学習です」というと、なんか軽く見られて、少しつらいところもあるんですが(笑)、子供も含めて大きくとらえる、というやり方で、生涯学習を見ているんですよね。


(第3回に続く)


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