デヴィッド・クローネンバーグ監督、ヴィゴ・モーテンセン主演のサスペンス。

ダイナーを経営するトム(ヴィゴ・モーテンセン)の店に強盗が押し入る。危機を察知したトムは咄嗟の判断により正当防衛で強盗を倒し一躍有名人になる。数日後、フォガティ(エド・ハリス)がやってきてトムと顔見知りかのように話し始める。フォガティはトムのことをジョーイと呼ぶがトムは否定して追い返す。トムの暴力的な過去を知るというフォガティ、妻のエディ(マリア・ベロ)は夫の知られざる過去に不安を抱き始める。

ここからネタバレあり。序盤はサスペンス色が強いけれど終盤はサスペンスとは違う。現在の幸福、過去の過ち、その間での不安と葛藤。夫は本当に人殺しだったのか、もしそうだったとして今まで通り幸福に暮らしていけるのか…という妻エディの視点。現在の幸福を手放したくないという想いはトムも同じで、過去の過ちを必死で隠そうとする。そして過去を封印するためトムは再び銃を手にする。他に手段が無いのかも知れないけれど、この行為は過ちを繰り返しているだけにしか映らない。ダイナーの客を守ろうとした正当防衛とは異なる。すべてが済んだトムが帰った家族の食卓は幸福だった頃の空気ではなくなっている。唯一の救いは、たとえ人殺しであったとしても、子供にとっては父親以外の何者でもないという事実を表す子供の行動かな。

銃社会アメリカならではの物語。個人的には、(家族に罪は無いけれど)何の贖罪もしていないトムが(心に後ろめたさなどがあったとしても、表面的には幸福に)何事も無かったかのように暮らしている事が怖いです。

Official HP
http://www.hov.jp/


ヒストリー・オブ・バイオレンス [DVD]
¥1,895
Amazon.co.jp