冬の京で 料理展示会と庖丁式 | 季節のひとこと ~サロンレポートとライフスタイルデザイナーの仕事~

冬の京で 料理展示会と庖丁式

師走も残り少なくなり、今年も幕を閉じようとしています。
今冬初めての寒波がやって来た13日に「京料理展示会」に足を運びました。京都は晴れてはいましたが、時折雪がちらつく天候でした。

会場には、京都の老舗料亭、仕出し屋、寿司屋等、100店舗以上の冬の料理、年末年始の料理がずらりと並びます。千年の歴史の中で継承されてきた料理と共に、時代を読み新たな要素を加えた料理も一堂に鑑賞できる会場は迫力あり!
二日間のイベントですが、実際に調理されたものを盛り付けているため、料理の美しさを保ちながら見せる工夫は大変だろうと想像します。
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私は過去4回ほど訪れていますが、今回の開催は何と112回目!展示会は、明治期に始まり、今では京料理は世界の注目の的となっていますから、古都京都の力はやはりダントツに凄いです。

会場内では庖丁式を見ることができます。
平安時代から続く伝統儀式である庖丁式は、烏帽子、袴、狩衣姿の庖丁人が、左手に真魚箸、右手に包丁を持ち、魚を見事にさばく流儀です。決して素手で魚に触れてはいけません。
庖丁式は、平安時代前期に藤原山蔭が、鯉をさばいたことに始まり、光孝天皇が宮中行事に取り入れたとされています。
今では山蔭は、庖丁の神、料理・飲食の祖神とされています。

安土桃山時代には、支配者層の身に付けるべき教養の一つに庖丁があるとされたと、ポルトガル人イエズス会司祭であったジョアン・ロドリゲスによる『日本教会史』に記されているのは、興味深い事柄です。
現存する流派は、生間、四條、大草ですが、本家である高橋流は今はありません。

今回は生間流による鯉と鯛を捌く儀式でした。
儀式の始まりは場の清めの儀式の後、庖丁人が、大まな板の前に座し、まず舞を舞うように、五色の帯の付いた鈴を振り鳴らし、清めの所作をした後、魚をさばきます。
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鯉はあらかじめウロコと腹を取ってあり、まず胴を切り頭を外します。三枚におろした半身を四手(注連縄に下げる紙)のように細長く切り、長く広げて盛り付けます。
包丁は日本刀のような形をしており、切れ味は素晴らしく、スパッと!一刀両断に鮮やかに切り分けていきます。その所作は潔く美しく格式を感じさせます。
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続いて鯛です。同じくウロコと腹を取った見事な本鯛が三方にのせて運ばれてきます。
庖丁人は、体の背の中央から包丁を入れ、尾は切り離さないように骨と身を外し、裏返して同じく身を外し、三枚におろします。骨も皮もしっかりと硬い鯛の裁きにはかなり力がいるようでした。
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見事な手さばきで、鯛の頭を立て、中骨を連なるように並べ、その前後におろした身を盛り付けると、海底で海草の陰で静かに休む鯛の姿になります。節会に催されてきた有職の伝統料理は格式高く美しいものでした。

一昨年には、京都の寺での庖丁式を見ましたが、寺では精進が原則のため魚は使わず、大きな10丁ほどのサイズの豆腐をさばきました。(15年5月ブログ参)
同じく伝統の所作を美しく見せてくれましたが、魚の庖丁式は一味違った迫力です。
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展示会会場には、加工食品・酒・京野菜と道具類の販売もあります。これはお楽しみです。
私は、お正月用に使うための栗の渋皮煮を一瓶と、雑煮や煮しめ用の雪輪の型の抜き型、そしてワサビ用鮫皮のすりおろし器を購入しました。
鮫皮おろし器は、今ではなかなか手に入らない品となってしまいました。作る職人さんがいなくなりつつあるからです。しかしワサビにはこのざらざら感と素材感が抜群に良いのです。程よく粘りを出しながら、適度に滑らかに擦ることができます。
今夜早速、大好きな山葵をこの道具で摺って、針イカのお刺身を頂きました。う~ん!美味。

帰り路に立ち寄った手作り小物屋さんでもお買い物。
店内に鎮座する商品に目が留まったとたん、一目惚れして思わず連れて帰ることになったのがこの狛犬です。
我が家の新年を寿ぐ干支の子犬ちゃんとなります。
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かわい~い、うれし~い出会いでした。
寒さ厳しくなってきましたね。風邪などひかれません様に…