トルンカの「手」 | チェコチェコランドのイベント・商品情報ブログ

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チェコアニメのキャラクターたちを中心にチェコの絵本などを紹介しているチェコ・チェコランドのイベント・商品情報ブログです。

8/14(日)13:00~

大阪のロフトプラスワンウエスト

「午後のまどろみとチェコアニメvol.4」

”夏休みスペシャル!

とっても怖いチェコアニメ!”

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/west/43440

 

少し間が空きましたが

少しずつ上映作品をご紹介させていただきております。

 

今回は、怖いアニメ特集ということですが、

驚かすことが目的のアニメではございません。

 

社会や環境により、

人間の欲望・恨みなどが、

とんでもない感情になっていきます。

それらをチェコアニメの作家たちが

ものすごい画で描写します。

 

そして、監督や美術は、

チェコアニメ史上、

いや、世界の映像史に

ものすごい足跡を残すような

作家たちばかりです。

 

本日、ご紹介する上映作品は

イジー・トルンカの

「手」(1965年)です。

 

ここでなんどかご紹介させていただいておりますが、

イジー・トルンカを今、一度ご紹介させてください。

 

チェコアニメが”東のディズニー”とよばれ、

”チェコのアニメは芸術だ”と世の中に認識させ、

その多彩で突出した表現力、

そして、大いなるチャレンジ精神、

今もなお、

多くのクリエーターに影響を与え続けている

チェコアニメ。

 

以上のことは、すべて

イジー・トルンカからスタートしたといって

間違いないと思います。

 

イジー・トルンカ(1912年~1969年)

 

1930年代から40年代、

彼は、絵本の挿絵画家として

国内で名を馳せていました。

そして、人形劇団を率い、

人形作りの職人として、

非凡な才能を魅せていました。

 

しかし、1940年代、ナチス支配下のチェコにおいて

トルンカは強制的に美術労働を強いられたそうです。

 

しかし、戦後、ナチスから解放され

新たにプラハに設立された

国営のアニメーションスタジオの

”トリックブラザーズ・スタジオ”の

責任者に任命されました。

挿絵画家と人形作りの実績を買われての

抜擢でしたが、

トルンカには、”アニメ制作”の経験がありませんでした。

というより、プラハには、

アニメ制作の経験者がいなかったのです。

 

しかし、戦争中、表現の自由を奪われていた

トルンカや彼のスタッフは、

”アニメ”という未知の分野の表現であっても

表現できる喜びにあふれ、

取り組みました。

 

トルンカは1年間で

「おじいさんと砂糖大根」

「ばね男とSS」

「動物たちと山賊」

「贈り物」

という4本の短編アニメを作りました。

 

未経験の作家たちの

制作スピードとしては、

驚異的でした。

未経験ゆえ

判断に迷い、

決断に悩んだことも多かったと思います。

でも、それすら喜びとなって

トルンカは創作に没頭しました。

アニメ制作を始めて1年後の

1946年、戦後初のカンヌ国際映画祭で

制作した4本のうちの1つ

「動物たちと山賊」が

最優秀賞を獲得しました。

そのとき、参加していた

ディズニーの作品を破っての受賞でした。

 

しかし、この受賞は、

偶然の快挙ではなかったと思います。

 

ナチスから解放されたとはいえ、

社会主義国家へ向かっていた

当時のチェコスロヴァキア政府下において、

表現の規制が強かった当時、

国に対する説得力

必要でした。

トルンカはカンヌのグランプリを

狙っていたと思うのです。

トルンカの目論見が大いに当たり、

彼は、

”詩的”で

”ファンタック”なアニメをどんどん作り、

多くの国際映画祭の大きな賞を獲得していきました。

政府は、アニメ制作、とりわけトルンカの制作に関しては

その実績により、表現のかなり寛容になりました。

 

「コントラバス物語」1949年

 

「バヤヤ」1950年

 

「チェコの古代伝説」(1952年)

 

「クチャーセクとクティルカ」(1954年)

 

「真夏の夜の夢」1959年

 

独創的で、

ファンタジックなものを

作り続けました。

 

”詩的”で

”ファンタジック”で

”高い芸術性”

これがトルンカのアニメであり、

チェコアニメのスタイルとなったのです。

 

しかし、彼がこの世を去る

4年前の1965年に発表した

「手」は、

ファンタジーでも

ポエティックでもありません。

 

チェコのあるカメラマンによると

「『手』に関しては、トルンカは

そのまでの作品にあったカメラワークを

一切、無視しました。

彼のスタッフは大きな違和感を感じたはずです。」

 

私は専門的なことはわかりませんが、

この作品は、

明らかにそれまでのトルンカ作品とは異質でした。

主人公は、花と陶芸を愛する道化師

 

そんな彼の家に突然

 

「手」がやってきました。

 

「手」は道化師の活動をいちいち邪魔をし

干渉します。

 

特に激しい暴力があるわけではないのですが、

 

道化師の毎日に干渉します。

 

作った陶芸も

「手」によって作り変えられます。

 

 

「手」の存在の圧迫感に

道化師は、消耗します。

 

そして…

 

トルンカは、

20世紀のチェコスロヴァキアにおいて

世界的に評価を受け、

最も成功した芸術家だと思います。

 

しかし、彼はこう言ったそうです。

 

「本当の自由を得たと思ったことはない。」

 

「手」を発表した4年後、トルンカは

この世を去っています。

 

「手」は明らかに

社会主義の世の中を批判した作品です。

でも、それを発表できたのは、

トルンカの存在が、政府も

押さえつけられないぐらいになっていたからでしょう。

しかし、彼の死後、

社会主義政権が崩壊する1989年までの20年間

「手」は、国内で一切の放送・上映を禁じられました。

 

トルンカの遺作となった「手」ですが、

セリフは全くなく、

トルンカらしく

映像ですべてを表現しています。

それまでのトルンカらしい

ファンタスティックな内容は皆無ですが、

それでも、この作品が

トルンカの代表作だという専門家は多数です。

 

視られるということの圧迫感と恐怖が、

伝わってきます。

 

映画等、映像がお好きな方には、

是非、一度ご覧いただきたい作品です。

 

チェコチェコショップで「手」を収録したDVDも販売しています。

http://czech-czech.jp/SHOP/AD-DVD1012.html

 

他の作品も、

”怖い作品”ばかり集めました。

 

8/14(日)13:00~

大阪ロフトプラスワンウエストで

お待ちしております。

ご予約受け付けております。

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/west/43440

 

8/13の渋谷アップリンクの

”怖いアニメ特集”は

満席になったようです。

ご予約いただきましたみなさま

ありがとうございます!

 

大阪のほうもよろしくお願いいたします!

 

【上映作品】
「復讐」(1968年/13分)
監督イジ―・ブルデチカ 美術ミロスラフ・シュチェパーネク

http://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12174984893.html

「ある粉屋の話」(1971年/11分)

http://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12177020192.html
監督イジ―・ブルデチカ 美術エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー

「アッシャー家の崩壊」(1980年/16分)
監督・美術ヤン・シュヴァンクマイエル

「手」(1965年/18分)
監督・美術イジ―・トルンカ

「雪女」(2012年/14分)
監督・美術イジ―・バルタ

http://ameblo.jp/a-a-agallery/entry-12181333835.html