「絶対帰還。」、を読了 | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

「絶対帰還。」、を読了

「絶対帰還。 宇宙ステーションに取り残された3人、奇跡の救出作戦」 、を読了。

原題は「Too Far From Home」。


スペースシャトルコロンビアの空中爆発によって、宇宙ステーションから地球に帰ってくる術をなくした3人の宇宙飛行士を。

いかにして地球に連れ戻すか、というノンフィクション。


極めて狭い空間で、酸素が失われたり軌道から外れたり、といった究極の事態が発生するという訳ではなく。

地上から迎えに来る、スペースシャトルが来られなくなった状態の中で。

どうやって地球に生還するか、というお話。


もちろん切羽詰まってはいるのだが。

宇宙飛行士たちは、このトラブルのせいで宇宙にいられる時間が延びたことを実は喜んでいたりして。

単純な、「狭い空間の中で危機的状況が発生、さてどうやって乗組員は生還できるか」というお話では、実はなくって。


私が昔読んで、心の底から感動した「敵対水域」 のような話とはちょっと違う。

(「敵対水域」は、ロシアの原子力潜水艦がアメリカ沿岸で原子炉のトラブルを起こし、原子炉のメルトダウンを防ぐためにロシアの乗組員が必ず死ぬと分かっているのに、制御棒を自らの手で差し込みに行く、というノンフィクション。私の人生最高の本の一冊。)


最近では。

日本人の宇宙飛行士がスペースシャトルで宇宙に飛び出した、なんて聞いても。

何とも思わなくなったが。


ほんの数年前に。

こんな危機的な状況に3人の宇宙飛行士が置かれていたことなんて。

全然知らなかった。


そして。

アメリカとロシアが、宇宙ステーションの建設・維持に関して、ここまで密接に協力していたことなども知らなかったよ。


ロシアの技術は、アメリカの最先端の技術よりはもしかしたら遅れているかも知れないが。

古い技術であったとしても、確実なものであればそれを尊重する、という彼らの哲学から成功する確率は高く。

ロシアの技術なしには、3人の宇宙飛行士は生きて地球の土を踏むことはなかった。


宇宙に対して、実は私はあまり興味を持たなかったのだが。

どんなに「生命の危機」的な状況に置かれたとしても。

宇宙飛行士たちが持つ、宇宙に対する畏敬の念や。

宇宙空間にいられることに対して、心の底から惹かれるか、について、綿密なインタビューで明らかにしていて。


自分が地球に戻れないかも知れない、という究極的状況に置かれても。

それでも宇宙にいられることを幸せに思う、というほど、人を惹きつける宇宙の魅力について、生き生きと描かれていて。


単純な「生還ストーリー」とは、ちょっと違って。

すごく、魅力的な読み物でした。


ハラハラドキドキを最初から期待して読むと、ちょっと肩すかしを食らうが。

いい本でした。夏休み読む本に、是非。


(何で「絶対帰還」ではなく、「絶対帰還。」なのか良くわからないが。

「モーニング娘。」みたいで。)



「絶対帰還。 宇宙ステーションに取り残された3人、奇跡の救出作戦」  2008年7月 \2415

絶対帰還。




「敵対水域」 1998年 \700


敵対水域