京都市営地下鉄民営化の可能性 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。
なお、記事と無関係なコメントはご遠慮ください。

これまでに紹介した対策を実施した場合、京都市内交通における市営バスと民営バスの役割分担は明確になりますが、鉄道は都心部だけでも依然として京都市交通局・阪急・京阪の3つの事業者が混在することになります。

 

バスに限定せず、異なる鉄道事業者同士、例えば地下鉄の四条と阪急の烏丸、阪急の京都河原町と京阪の祇園四条を乗り継ぐ場合にもそれぞれ60円程度の割引を行うのが効果的ですが、さらに踏み込んだ改善策はないものでしょうか。

 

例えば、大阪市交通局のように地下鉄だけ民営化するといったことです。ただし、大阪の地下鉄は2018年の民営化時点ですでに累積赤字を解消していました。2020年度時点で累積赤字371億円を抱える京都市営地下鉄とは比較になりません。

 

現在、京都市営地下鉄は烏丸線・東西線の全区間を交通局が第1種鉄道事業者として所有・運営しています。これを、所有のみ行う第3種鉄道事業者に変更して第2種鉄道事業者に運営を任せ、その対価として得られる線路使用料で地道に累積赤字を返済していくしかありません。いわゆる上下分離方式です。

 

なお、2013年度の時点で烏丸線は営業係数77%の黒字、東西線は営業係数116%の赤字でした。赤字路線の東西線だけを民間の第2種鉄道事業者に押し付けるのは虫が良すぎる話であり、烏丸線とセットで運営権を譲渡することが絶対条件です。

 

では、第2種鉄道事業者として烏丸線・東西線の運営を委ねるべき相手はどの民間会社でしょうか。結論から先に示すと、京阪が適任でしょう。

 

東西線の運営権が京阪に移れば、長年大津線を苦しめてきた運賃合算問題が解消されます。また、京都駅や四条烏丸に直接アクセスできないのが京阪の弱点でしたが、烏丸線を手に入れればそれも緩和されます。もっとも、近鉄丹波橋―竹田間を挟まなければ京阪線との乗り継ぎは不可能ですが、烏丸線との運賃を通算する「通過連絡制度」を適用すれば利用者の負担が減り、競争力も向上します。

 

その烏丸線と相互直通運転を行っている近鉄も当然第2種鉄道事業者の候補ですが、自社線だけで京都駅にアクセスできるので、京阪ほど参入の動機は強くありません。買収と合併を繰り返して私鉄最大の路線網を築いたのが近鉄なのも事実ですが、昨今は拡張路線の反動とコロナ禍で経営が悪化し、2023年4月1日に大幅な運賃値上げを行って再建を図っている最中です。烏丸線や東西線に構っていられる状況ではないでしょう。

 

旧国鉄を前身とし、近鉄をはるかに上回る路線網を抱えるJR西日本も、京都市内交通のような地域密着型の輸送には不向きです。JRには特定の都区市内を発着する場合の特例として、中心駅から営業キロが201km以上ある場合は中心駅を基準にして運賃を計算するというルールがあるためです。

 

京都市内の場合、中心駅は京都駅であり、市内にある駅ならどこで乗降しても京都駅を起終点として運賃が算出されます。よって、例えば新幹線の長距離客が京都駅から嵯峨嵐山駅へ向かう場合、事実上この区間はタダ同然となります。近年、嵯峨野線の混雑が深刻化している大きな要因の1つはここにあります。

 

烏丸線と東西線にこのルールを適用すれば、乗車率が上がる一方で利益率は確実に低下します。何よりも、赤字の責任の所在が曖昧になってしまうのが問題です。

 

残りは阪急ですが、四条烏丸と四条河原町に直結している一方、京都駅へは並走するJRを主に使うという役割分担が確立しているので、やはり烏丸線と東西線を手に入れる動機は弱いのが実情です。そして何より、第2種鉄道事業者として運営を任せるには、阪急は有能すぎて危険なのです。その詳細は次回に譲ります。