東方神起小説♪WITH♪#08









「…あれ、ヒョン、瑠衣子さんは?」


「明日の準備があるから帰るって。」


「…そうですか。」


「……うん。」


「あの、ヒョン…」


「何も聞かなかった。」


「え?」


「俺何も聞けなかったんだ。」


「……そうですか。」


「瑠衣子さん、なんか疲れてるみたいでさ。」


「……ヒョン。」


「…ん?」


「俺、瑠衣子さんに電話していいですか?」


「……………」


「ヒョン。」


「そういうのはいちいち俺に聞かなくていいよ、チャンミン今朝だって瑠衣子さんに電話したんだし。」


「……そうですね、俺あとで瑠衣子さんに電話します。」







チャンミンは、ユノと東方神起というグループで活動をする事が決まった頃の事を思い出していた。


ユノは、チャンミンに言った事があった。


”もしも万が一俺がメンバーの誰かと同じ人を好きになったら、その時はたぶん俺が引くと思う、まぁ万が一だからそういう事はないと思うけどさ。”


東方神起としてデビューする前の、ユノもチャンミンもまだ10代だった頃の事だ。








AM0:15


チャンミンがちょっと電話して来ますと言い残し、携帯を持って打ち上げ会場から出て行った。


チャンミンが、今から瑠衣子に電話をする。


ユノは打ち上げの輪の真ん中から、チャンミンの後姿を見送った。







”もしもし瑠衣子さん?起きてました?”


”…うん、チャンミン、打ち上げは盛り上がってる?”


”盛り上がってますよ。今からでも来ますか?”


”……………”


”冗談です。”


”ごめんね。”


”なんで謝るんですか?”


”だってせっかくチャンミンが…”


”俺そんなに優しくないけど。”


”え?”


”瑠衣子さん、キャラ変わりましたよね。”


”そっ、そんなこと…”


”ははっ、冗談です。”


”………………”


”瑠衣子さん。”


”ユノは?”


”え?”


”ユノはどうしてる?”


”気になるなら来ればいいでしょ。”


”チャンミンこそキャラ変わったよね、前のチャンミンならそんな言い方…”


”………………”


”……ごめん、私はチャンミンが…”


”別に謝らなくていいですよ、そういう瑠衣子さんも好きですから。”


”……チャンミン……”


”つまり、瑠衣子さんはユンホが好きなんですよね。”


”……チャンミン、私は…”


”俺からユンホに言っておきましょうか、瑠衣子さんの気持ち。”


”チャンミン、もう冗談はいいよ。”


”今のは冗談じゃないですけど。”


”………………”


”ユンホに言われました、俺と瑠衣子さんはお似合いだって。”


”え?”


”ユンホは俺が瑠衣子を好きで瑠衣子さんも俺が好きで、俺と瑠衣子さんが付き合えばいいと思ってるから。”


”……そうする?”


”は?”


”……チャンミン、私と付き合う?”


”……俺は構わないけど。”


”……………”


”瑠衣子さん、俺と付き合う?”









…続く
東方神起小説♪WITH♪#07









「さすが瑠衣子さん、俺の事分かってるな。」


「はいはい、…もうすぐに行くから早く車に戻って。」







会場を出て5分余り、瑠衣子の運転する車は広い駐車場を有するコンビニに到着した。


ユノを後部座席に残した瑠衣子が一人で店に入ると、手早く飲み物をカゴに入れた。


そして瑠衣子が雑誌を横目にしながらレジに向かっているところに、サングラスを外したユノが店内に入って来た。


自分が飲みたかった炭酸飲料を瑠衣子が持っているのを確認すると、ユノは瑠衣子に近づき微笑んだ。


店内には数人の客がいたが、ユノが気付かれ騒がれることはなく二人は店を出た。







「俺もう隣でいいよね。」


「うん。」


「…ディスク聴いていい?」


「いいけど、何のディスク?」


「明日歌入れする曲のガイド。」


「あぁ、どうぞ。」







瑠衣子は助手席のバッグを後部座席に移し、ユノは後部座席の自分のバッグを持って助手席に座った。


瑠衣子は、ユノがディスクを聴くと言った事にややほっとしていた。



ユノと二人きりの数十分間をどう過ごせばいいのかと思いつつ、ユノが何度も言っていた”話”が出来るのも、きっと今なのだろうと思う。


ユノが知りたがっている”誰”に自分がユノだと言ったとしたら、ユノはどんな顔をするのだろうと瑠衣子は思う。


あと数週間でユノとはしばらく会えなくなるのだし、ユノが望む本当の気持ちを言うべきなのだとも思う。


その先はユノが考えて決めることで、瑠衣子は聞かれたことに誠実に本気で応えようと決めていた。


ユノが明日のレコーディングのためにディスクを聴くというのなら、それはそれでいい。


ユノと話す機会は、少ないだろうがまだあるのだから。


瑠衣子はとりあえず、大スターであるユノを打ち上げの会場まで安全に送り届けることを考えた。


ユノのバッグから取り出されたディスクはガイドであるため、もちろんユノが歌っているわけではない。


ユノがレコーディング前にガイドを聴くのはいつもの事なのだが、瑠衣子が今までそれを目にする事はほとんどなかった。







「めっちゃいいでしょ?」


「…うん。」


「俺が歌ったらもっと格好いいから。」


「…うん。」


「……まだ1曲目のイントロなんだけど。」


「…うん。」


「ねぇ、瑠衣子さん、聴いてる?」


「…うん、……え?」


「あっははっ、いいから。」


「なに?」


「ちゃんと前向いて運転して。」







ユノはサングラスをかけ、シートをめいいっぱい後ろに下げると、少しだけ倒した。


そして持っていたバッグを後部座席に置くと、長い脚と腕を組んだ。


瑠衣子からユノの顔は見えないため、目を閉じているのかは分からない。







「ユノ…」


「ん?」


「眠ってもいいよ。」


「寝ないよ、曲を聴きながら明日のイメージトレーニングする。」


「……そう。」







ユノは、きっとそのうち目を閉じるだろう。


その美しい横顔は、手を伸ばせば届く所にある。







「…ユノ?」


「……ん?」


「コーラは?」


「あぁ、ありがとう。」







それを受け取った時に微かに触れたユノの手は、やや熱を帯びていた。









…続く