「煙管?」
「へい。現場だと思われる場所に落ちてたんでぃ」
そう言ってお茶を啜る親分。
今回の事件の新たな情報を提供してくれたのだ。
其れが煙管。
羅刹の事件で役に立てなかったことが、余程悔しかったらしい……。
「でも、煙管なんて誰でも持っている物でしょう?」
綾菜の言う通り、身近にも持っている人間がいる。
しかし親分は首を横に振った。
「どうやら特別製みたいなんでぃ。随分と良い物だったねぃ。黒地に金で装飾されてたんでさぁ。そういや、“永遠”っていう文字が彫られてやした」
そう言って菓子を口に放り込む。
にゃあ にゃあ
庭に入り込んだ猫の鳴き声が、いやに大きく聞えた。
「特別製の煙管か……」
水無瀬の親分が帰った後、ぽつりと呟く悠助。
「下手人、捕まるのかしら……」
綾菜は少し不安そうだ。
此の不安は事件に対してであり、親分に対してではないと思いたい……。
「情報が欲しいのなら、彼所に行けば良い。そうだろう?」
そう言って立ちあがった勒七は、何処か嬉しそうだった。
第壱章 『新たな事件』 完