復旧作業で騒がしくなった江戸の空を、五人は見詰めていた。
青い青い空に、五人は何を思うのか……。
沈黙を破ったのは闇鴉だった。
「やれやれ、散々な目にあったもんだよ」
そう言って立ち去ろうとする闇鴉に、悠助は笑って声を掛けた。
「ありがとう!!」
闇鴉は其れを聞いて、にやりと笑った。
「良い表情になったじゃないか、悠助」
悠助は一瞬きょとんとした後、無造作に髪を掻き上げた。
何とも言えない嬉しさと恥ずかしさだった。
「予想外だったよ」
参ったと小さく笑いながら闇鴉の背を見送る悠助に、勒七は笑って悠助の肩を叩いた。
「認めてもらった証左さ。さて、わっちらもそろそろ行くよ」
そう言って椿の頭を撫でる。
「江戸に残らないの?」
綾菜は驚いた表情で尋ねる。
「嗚呼。羅刹を見届けることが目的だったしね」
だから椿と一緒に旅をすると言う勒七に、綾菜は寂しそうに口を開いた。
「そう。二人は居なくなっちゃうのね」
「また逢えるよ!!」
椿はにこにこと笑って言った。
其の当たり前の様な言葉に、綾菜と勒七は目を丸くし、悠助は笑った。
「だって生きているんだもの。逢おうと思えば逢えるでしょう?」
綾菜と勒七は先よりも目を丸くし、悠助は今までで一番であろう笑顔で三人を見た。
「椿の言う通りだ。何時でも逢える」
俺達は
仲間なのだから
幕末の生きる道~苦界されど我は笑ふ~
『羅刹篇』
完