『さよなら、小津先生』


第9話 再放送
「小津先生、キレる」

高校バスケット連盟が光蔭学園に対して新人戦の男子出場を認めないと通告してきた。
チームのマナーが悪いからだという。
以前の練習試合で、章夫(池田貴尉)が試合中に相手チームのキャプテンの首を絞めたのだ。
小津(田村正和)、加藤(ユースケ・サンタマリア)、みゅー(瀬戸朝香)の3人は困惑した。
が、加藤が
「メンバーに言わないで下さい。おれ、連盟に掛け合ってきます」と飛び出していった。
一葉(京野ことみ)に促され、みゅーも後を追った。

その間、小津と一葉が練習を見守った。
練習を終えた遙(一戸奈未)が浩二(森山未来)のもとへ近寄った。
「1年生が、先生が話しているのを聞いたんだけど・・・・・・」

浩二たちは小津を追った。
「おれら、出られないのか?」。
小津に詰め寄るメンバーたち。諦め顔のメンバーに小津は
「カトケンがなんとかする。体育館で待ってろ」と言うのが精一杯だった。

加藤とみゅーが連盟に行くと、連盟の職員は、実質上の運営を行っている柳沼教諭の高校へ行けと言う。
二人がバスケ強豪で有名なその高校へ出向くと、柳沼は、体育館で竹刀を手に厳しい練習を行っていた。

そんなころ、小津は娘の絵理(水川あさみ)に呼び出され喫茶店へ現れた。
絵里と一緒にいたのは島谷(大杉漣)だった。
島谷が、小津と出会う機会を、絵里に頼んだのだ。
「銀行に戻って来てくれ」。
島谷は言う。
銀行が金融再建の部署を作り、島谷と小津が呼ばれたのだ。

「お前がやるべき仕事だ。俺は、俺のすべき場所でやる」。
小津は席を立った。

絵里は理解し、島谷は言葉なく見送るしかなかった。

加藤とみゅーは柳沼を説得していた。
頑固な柳沼を攻略できずにいると、
みゅーが
「叩いて指導しているんですか?」と訊ねた。
「大人が押さえつけてでも正しい道へひっぱる必要がある」と柳沼。
怒りに燃えたみゅーは、突然、加藤を引っ張ってその場から出て行くのだった。

二人は、小津や浩二たちが待っている体育館へ入った。
「みんな、明日朝九時集合。道場破りだ」

翌朝、光蔭学園男子バスケ部は、柳沼の高校へ向かった。

「マナーが悪いかどうか、試合で確かめて下さい」とみゅー。

「マナー違反をしたら出場は辞退します」と加藤。

「10分終わって10点差ついても辞退します」と小津。

渋々柳沼は認めたが、自校のチームに、浩二たちを挑発するように小声で指示した。試合が始まった。
柳沼のチームは、徹底して汚い手を使ったが、浩二たちは。
我慢に我慢を重ね、残り3秒で9点差まで詰めたのだ。

「新人戦でお会いしましょう」。
小津は、柳沼に首を掻き切る挑発ポーズを見せ、余裕の表情で立ち去るのだった。

だが、柳沼は、次の策を練った。
小津がいるならば、出場を辞退するというのだ。
柳沼に仕切られている連盟の強豪校たちも同調する。
これでは新人戦が成り立たない。
小津は一人で考え始めた。
家へ帰り、加藤に作戦を教え始めた。
何か思いを固めたようである。

翌日、小津は連盟の「新人戦ルール会議」に乗り込んだ。

「出て行け」と柳沼。

「私の犯罪と子供たちが何の関係があるのだ。あの子達のためなら学校を辞めましょう。思い出して下さい。私たちも子供だった」。
小津は静かにその場を立ち去った。

小津が、事の顛末を鹿松校長(谷啓)に話していると、校長宛てに連盟から電話が入った。
「あなたが辞めるなら、出場を認めるそうです」と鹿松。

「あの子達に救ってもらったんです。今度は私の番だ」

小津の目には強い意志が浮かんでいた。