6月2日 口頭弁論 中村昌典弁護士 | セブン-イレブン経営被害者の会

6月2日 口頭弁論 中村昌典弁護士

平成19年(受)第1401号 書類引渡等・請求書引渡等請求上告事件
上告人  松――― 田―――
被上告人 株式会社セブン-イレブン・ジャパン


                 陳 述 要 旨


                                  平成20年6月2日
最高裁判所第二小法廷 御中


             上告人ら訴訟代理人弁護士  北  野  弘  久
                        同       近  藤  忠  孝
                        同       松  本  篤  周
                        同       神  田      高
                        同       中  野  和  子
                        同       大  賀  浩  一
                        同       近  藤  公  人
                        同       穂  積     剛
                        同       石  井  逸  郎
                        同       佐  藤  剛  志
                        同       吉  村     実
                        同       小  山  征史郎
                        同       宮  嶋  太  郎
                        同       岩  上  徹  志
                        同       中  村  昌  典



 上告人は、既に提出済みの上告受理申立理由書、上告人準備書面、上告人準備書面(2)で主張した点につき、以下のとおり口頭で補足し、陳述します。


 1 本件訴訟の意義について


 (1) 本件訴訟は、セブン-イレブン加盟店オーナーである上告人らが、フランチャイズ本部である被上告人に対して、上告人らが自店で実際に仕入れた商品のうち各3社分について一定期間の月単位の支払状況の内訳、すなわち領収書の交付に代わる報告を求めているものです。


   加盟店オーナーである上告人は、いずれも長期間にわたって実際にコンビニを真摯に経営してきた者です。コンビニは今や現代日本のインフラと目されておりますが、その経営は決して楽なものではありません。上告人らも、毎日、店頭に立ち、接客、レジ打ち、発注、品だし、清掃、清算といった日常業務を長時間自らこなしながら、オーナーとして、店舗の経営戦略を考え、アルバイトの募集・採用・教育、シフト作成、資金繰り、対外折衝、防犯対策、トラブル対応などをしてきました。昨今の加盟店オーナーをとりまく経済情勢は大変厳しく、売上高の7年連続減少、店舗数の飽和、アルバイトの人手不足等、ますますオーナー自ら深夜長時間労働を強いられており、上告人らも、現実に、他の店舗の倒産、自殺、夜逃げ、離婚、家族崩壊の悲惨な事例を耳にしてきました。そのような悲惨な事例でも違約金などに縛られて辞めることもできないコンビニオーナーは「現代の奴隷」(「コンビニの光と影」本間重紀著(1999))すなわち、個人の尊厳を奪われた状態に置かれているとまで評されております。


 (2) 上告人らが、自店の経営を少しでもよくすることを真剣に考えていた際、スーパーで取り扱っている同じ商品が、被上告人から「仕入原価」として説明されている金額よりも安い金額で売られていたという事実に気づきました。そして、一体自分は、この商品を仕入れるために実質的に幾ら支払っているのかを確認しようとしたところ、請求書や領収書が誰からも交付されていないため、いつ・いくら支払っているのかさえ、自分で確認できない事態にあることに直面し、驚愕することとなりました。
   上告人らは、独立の事業者であり、経営・会計・納税の主体でもあり、仕入先との売買契約の当事者(購入者)であります。自らが仕入れた商品につき、実質的にはいつ・いくら支払ったのかという、商売の基本ともいうべき情報から、疎外されていたものであります。これを本来のあるべき形に戻すために、本件では、通常は領収書に記載される程度の情報を報告を求めているものです。現在では被上告人の子会社となっている本家米国セブン-イレブンでは、領収書の交付を受けるだけでなく、会計帳簿の精査をする権利が加盟店に認められていることと比しても、上告人らが決して不当な請求をしているものではないことは明らかといえます。
   自店の会計処理は、最終的には上告人らオーナー自身がその責任を負わなければなりません。簿記・会計や申告を税理士に委任していても、最後は自らの責任で行なわなければならないのと同様です。ですから、その責任を果たすために、必要な、そして通常は当然と考えられている領収書の交付と同程度の情報が必要だと指摘するものです。ある意味で、当然すぎる要求をしているものであり、これが否定されることは、独立した事業者たることの否定、すなわち経営者としての尊厳(民法2条、憲法13条、憲法29条)の否定に他なりません。
   上告人らは本件訴訟を通じて、経営者・事業者としての尊厳を守りたいと考えております。


 2 本件請求の法的根拠について


   本件請求の法的根拠については、既に上告受理申立理由書、上告人準備書面、上告人準備書面(2)において主張してきたところですので、ここでは詳細は述べません。ごく要点だけ述べれば、加盟店契約第36条乃至第38条等は、第一義的には「各加盟店の会計処理のために」行なわれるものであること、したがって、被上告人の義務とされる会計・簿記サービス提供義務は、独立の事業者たる加盟店オーナーの会計処理権限を不当に奪うものであってはならず、上告人ら加盟店オーナーが自店の会計処理に必要な「資料」とは何かが問われるべきものと考えます。
   本来、被上告人が領収書の交付に代わる報告義務を負わないと主張したいのであれば、上告人らオーナーが自ら会計処理するのに必要な原始帳票類を上告人ら加盟店オーナーに戻して、会計処理を委ねればたりるはずです。というのも、被上告人は、上告人らの決済や会計処理を代行しているにすぎないからです。
   そして、直接的解釈だけでは解決しないというのであれば、契約条項の解釈原則に則り、商慣習法や任意規定たる民法の規定、条理や信義則による補充的契約解釈がなされるべきです。本件では、商慣習法や民法645条の適用ないし類推適用(準用)による受任者の報告義務等を検討すれば、本件請求が認められるべきであり、これを否定する理由がないことも明らかであると考えます。


 3 最後に  


   原判決が下した独立した事業者として当然の権利である領収書にかわる報告義務まで否定する解釈は、経営者としての独立した人格を否定し個人の尊厳を奪う解釈であり、民法2条、ひいては憲法13条、29条に反する解釈であるといわなければなりません。
   フランチャイズの語源的意味・本来的意味は「奴隷状態からの解放」であるとされています(「フランチャイズ・システム」土井輝生(1972)134頁)。領収書の交付に代わる報告といういわば事業者として当然の請求が認容されて、上告人らが自店の会計処理を自ら確認できることにより、事業者としての個人の尊厳を保持しえ、語源的意味どおりの共存共栄を目指すフランチャイズが我が国に根付く一歩となるのか、それとも「現代の奴隷」などといわれる不名誉な評価が今後とも続くことになるのか。
   御庁においては、法令の解釈における正しい判断を示され、上告人らの請求を認容する正しい判決を下されるよう求めるものであります。
                                        以上