おっさんマンガ第三弾(苦笑)。

最近、ずっとおっさんマンガ続きだなあ。
おっさんマンガをおもしろいと感じてしまうというのは、それだけ自分がオッサン化してるという事だろうか…?。

うーん、マズイ傾向だなあとは思いつつ、おもしろいものはおもしろいんだからしかたない(苦笑)。

というワケで、今回読んだのは、武内力を主演に何度もVシネマになったりしてる「ミナミの帝王」を代表作とする(というより他に描いた作品、あるのか?)漫画家・郷力也が短期連載した、バンパイアの末裔が刑事になって事件を解決する妖怪もの。
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正直、この漫画家がまったく違うジャンルのものを描けると思ってなかったので驚いた。

自分がダークヒーロー好きなのは、いつもブログを読んでくれてる方はご存知かと思うが、妖怪や悪魔などはその最たるもので、「ゲゲゲの鬼太郎」や「どろろんえん魔くん」が好きだった自分にとって、やっぱり妖怪ものは外せないジャンルのひとつ。

とはいえ、これもすべてを好むというワケじゃなく、怪奇ものの代表作家、楳図かずおの作品は好きになれず、唯一、まあまあ好きになれたのは「猫目小僧」だけだったし、つのだじろうや古賀新一のものになると、好きになれたものはなかったなあ…。
基本的に不気味なだけの画は苦手なんだと思う。

子供の頃、まだあちこちに工事現場やデカい公園があり、外で遊ぶのが当たり前だった中で育った少年には、妖怪は想像のものではなく、夕暮れ時や夜になると現れる恐い対象のひとつで、しかし、一度は見てみたい好奇心を掻き立てられるユーモラスな容貌をもった存在でもあった。

そんな自分から見たこの作品は、意図的なものかはわからないが、昭和の少年時代のノスタルジーを感じる雰囲気をところどころに散りばめられた秀作だった。
主人公の伴π亜は、都内の警察署に勤務する新任の警部。
管轄の地域の巡回から戻ったπ亜の横を通った設計士・竜巻から邪鬼に取り憑かれている事を感じ、その発信元である京へ飛ぶ。

同じように邪鬼を退治しようと京にやって来た陰陽師・安倍橋はπ亜と邪鬼の戦いが丑三つ参りの願掛けをしていた女の精神世界で行われている事から、彼女の精神を破壊する危険を感じ、π亜を彼女の体内から引き戻す。

呪いをかける為に打つ藁人形に、「愛」という文字が貼られている事に疑問をもったπ亜と橋は、彼女の本当の憎しみを知り、閉ざされた心の扉を開く為、それぞれに彼女の過去を探り始める。

π亜は祖母から聞いていた話を頼りに、谷中霊園を訪れ、そこに住む妖怪達が開いてくれた宴の席で、父のバンパイアが過去に行け、満月の夜、よく月を見上げていた事を聞いた。

家に戻ったπ亜が父と同じように月を見上げていると、スカイツリーのライトアップが終わった時、磁場に乱れが生じ、父がそれを利用し過去に行ってた事を知り、π亜もこれを利用して過去へ飛ぶ。

過去の世界では、警察に来てた藤巻が一級建築士の試験前、愛する藤巻の世話をかいがいしく焼く妙子の姿があった。

妙子は貧しい生活にかかわらず、竜巻のタバコが切れるとタバコ代を渡す。

それにほだされた竜巻は妙子と結婚すると、試験に合格し、設計事務所を立ち上げる。

大手建設会社の娘であるひとみは他人のものを欲しくなる性格で、ひとみに気に入られた竜巻は仕事をもらえるようになり、やがて野心を募らせ、大きな仕事を取る為なら、取引先の部長に妻の妙子を差し出すようにまでなる。

竜巻はひとみと結婚する為に、取引先の部長に抱かれた事を口実に妙子と離婚するが、それでも竜巻を愛する妙子はお手伝いとしてでも残してほしいと懇願し、残るが、妙子の心の闇は次第に大きくなり、これに薄気味悪さを感じた竜巻とひとみは妙子を殺害する。

しかし、この事件にはさらなる闇が隠されていた…。
続きはご自身で読んでもらいたいが、この作品のおもしろさは人間の心が魔王という邪鬼を作り出すという捉え方。
妖怪は古来から存在する生き物だが、邪鬼は人間の憎悪や歪んだ愛が生み出す。
それほど人間の心は強くもあり、恐ろしいものでもある。

この作品を描いた郷力也はキャラクターを生んだり、基本設定は作れるが、それを物語として紡いでいくのは苦手なようで、オリジナルとして描いたのは最初の一話だけで、二話以降は脚本協力という存在がいる。
一話の幼少のπ亜が目覚めようとするシーンの設定は説得力に欠けた甘い作りだったしね。

が、妖怪ものの娯楽作品としては十分楽しめるので、これで終わりにせず、機会があれば、また描いてもらいたいと思う。