◆大物ブローカー凋落
大王製紙前会長の特別背任事件、オリンパスの粉飾決算事件、AIJ投資顧問の年金資産詐取事件…。
今年も社会を揺るがす大型経済事件が続発したが、捜査の主体はいずれも東京地検や警視庁。関西では世間の耳目を集める経済事件は鳴りをひそめ、今年唯一といえるのがセイクレスト事件だった。
証券業界で暗躍していたとされる証券アナリストだが、実際は多額の債務を抱え、逮捕前に産経新聞の取材に「千円の金にも困ることがある」と話していた。
大阪府警のある捜査員は「大物ブローカーと呼ばれる人物でも、多額の債務を抱えていることは珍しくない」とした上で、関西経済の現状についてこう嘆いた。
「地盤沈下している分、不正の絶対数も減っている」
◆進む企業の府外転出
実際、厳しい現実を示すデータが存在する。
11月末時点の東京証券取引所の上場企業数は、1、2部を合わせて平成15年末から11社増え2113社になった。一方、大阪証券取引所は338社減の699社にとどまり、減少率は3割を超える。
さらに、民間信用調査会社「帝国データバンク」大阪支社によると、昨年、大阪府から府外に本社を移した企業は259社。移転先の3割超が東京だ。
過去10年間に府外に転出した企業の売上高の合計は14兆683億円にも上るという。
戦後、商都として発展した大阪。大阪地検特捜部や大阪府警も競い合うように、巨額資金が闇社会に流出したとされるイトマン事件(平成3年)や、BSE(牛海綿状脳症)対策の国産牛肉買い上げ事業をめぐる牛肉偽装事件(同16年)など、戦後史に残る大型経済事件を手がけてきた。
だが、巨大市場を抱える東京への一極集中が加速する今、その面影はない。
◆検察不祥事の影響も
経済状況だけではないという指摘もある。捜査環境の変化だ。
企業のコンプライアンス(法令順守)が強化された結果、不正は潜在化し、捜査当局が核心的な情報を得ることが難しくなりつつある。加えて、取り調べの適正化により、任意段階の事情聴取にまで時間的制約を受けるようになった。
さらに拍車をかけたのが、法務・検察史上最悪の不祥事とされた大阪地検特捜部の押収資料改竄(かいざん)事件(同22年)である。
これを機に供述調書の証拠能力が著しく低下し、容疑者の内面ともいえる「犯意」を立証しなければならない贈収賄や詐欺などの立件が困難化している。
改竄事件後、独自捜査を控える大阪地検は府警に対する事件指揮も変化させているという。府警幹部からは「確実な物的証拠を求められ、立件のハードルは高くなる一方だ」との恨み節も漏れる。
経済の衰退や改竄事件のショックを乗り越え、事件をどう組み立てていくのか。捜査当局の真価が問われるのはこれからだ。
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