中年期の危機 | ファイブアカデミーの心理学入門

中年期の危機

皆さん、こんにちは。
前回はユングの「人生の午後」についてお話ししました。
今回も引き続き、アラフォーにまつわるお話を考えてみたいと思います。

ファイブアカデミーの心理学入門

皆さんは「中年期の危機」という言葉をご存じでしょうか。
青年期にアイデンティティの危機が訪れることは、よく知られていますが、
同じような危機が中年期に訪れることは、あまり知られていないかもしれません。

レビンソンによると、正常な大人のなんと80%が「中年期の危機」を
経験するといわれています。どういうことかと言うと、20~30代のあいだは、
社会に出て大人の世界での生活様式を身に着けていく時期ですよね。
就職や結婚をしたり、自分の能力や可能性にも満ちている時期です。

それが40歳前後になると、職場では中堅となり、自分の能力の限界を見たり、
家庭では、子どもが成長して家を離れたり、親の介護に直面したりもします。
育児が終了して、仕事にも行き詰まりを感じるなか、
夫婦の間もこれまでのモノから、新たな関係に変わってゆきます。

そして漠然と人生に対して幻滅したり、停滞を感じたり、
焦燥感を抱いたりするというのです。皆さんも、身に覚えはありませんか。
私はものすごく身に覚えがあります。「中年期の危機」という言葉を知らず、
とにかく翻弄され、アップダウンな毎日を送っていました。

いま、迷いのなかにいるアラフォーの皆さん、つらいのはあなただけでは
ありませんよ。80%もの人が通る道なのです。ユングも通った道ですから。
昔からみんな同じ。そう思うと少しだけ気持ちが楽になりませんか。

誰もが経験する「中年期の危機」ですが、メンタルヘルスにも注意が必要です。
この時期に陥りやすいものとして、昇進のプレッシャーなどが引き起こす
「昇進うつ病」や、自分の限界を知って意欲がなくなる「上昇停止症候群」、
極度の疲労から無気力となる「燃え尽き症候群」などがあります。

前回、アラフォーの時期には、人生を見つめ直し、転職をしたりする人も
意外と多いというお話をしました。画家のゴーギャンもその一人でした。
ゴーギャンが妻子を捨て、故郷のフランスからタヒチに渡ったのは
43歳のときでした。このように、中年期の葛藤から思い切った行動に出ることを
「ゴーギャン・コンプレックス」と呼ぶこともあります。

体力も思考力も若いときのようにはいかない、それを痛感するのは少し悲しい。
ついつい、もっとやれるはずと思ってしまうけれど、
いまの自分を受け入れて、認めてあげられるようになりたいですね。