ブン屋稼業の備忘録  老朽化した大阪府立成人病センター(大阪市東成区)の建て替え問題で、府庁舎のある大手前地区への移転に反対する地元住民らを集めた府の説明会が行われた。意見交換の場では住民側から激しい怒号が飛び、「咲洲庁舎への全面移転がなくなったからには白紙撤回すべき」「病院を建てれば賑わいづくりになるというのはまったく根拠がない」「もっと議論が必要」「橋下知事を呼んでほしい」との声が上がった。


 センターの建て替えをめぐっては、大手前地区への移転案と自民党が提唱する現地建替案との比較検証を行うため、府は病院長や病院建築の専門家で構成する諮問会議を設置。先月27日の第3回会合で「移転案に優位性がある」と府の計画を支持する意見がとりまとめられた。


 しかし移転先の中央区と現センターのある東成区の住民の反発が強いことや、2月議会で「地元住民への説明が足りない」と現地建替案を推す自民党議員に指摘されたことから、きょうの説明会が設けられた。定員200名のホールは、会場外に椅子が急遽用意されるほどの人いきれ。緊張感と熱気に包まれた異様なムードの中、府の職員と住民側との議論は徐々にヒートアップ。


 「きょうの意見は幹部会議に伝える」と紋切り型の回答に終始する府側に対し、「これだけの反対があっても移転するのか」「次回は橋下知事を連れてくると約束してほしい」と舌鋒鋭く迫る住民側。公務のため途中退席予定だった高山佳洋健康医療部長と堀正二センター総長へも、「責任者がいなくてどうするんだ」「何のためにこれだけの人数を集めたんだ」「これ以上の公務があるのか」「そんなものキャンセルしろ」と住民から詰め寄られる一幕も。夕方17時から始まった説明会は、長時間にわたって白熱した。


 これまで府は、咲洲庁舎への全面移転と連動させる形で、大手前地区再開発の中核施設として同センターの誘致を計画。しかし湾岸に位置する咲洲庁舎は防災拠点にふさわしくないとの専門家意見を受け、橋下知事は全面移転の方針を撤回。大正15年築の現庁舎を80億円かけて改修・使用することとなり、賑わいづくりを目的としたセンター移転の意義は薄れてしまった格好だ。さらに今度は大手前地区を首都機能のバックアップ拠点の候補地とする考えを示すなど、まちづくりは完全に迷走しはじめた。


 9月議会に建替予算を上程するため、31日の幹部会議でセンターの立地場所について一定の結論を出すと見られるが、常から「民意」を口にしてきた橋下知事。1日でも早い建て替えを望む病院機構側と、移転に反対する地元住民のはざまで、知事はどう決断するのだろうか。