追加調査の争点だった地層の「ずれ」について、原子力規制委員会の専門家調査団は今回も、「活断層」と「地滑り」とで見解が分かれた。調査団に地滑りを専門とするメンバーはいないが、地滑り専門家によると、その区別は比較的容易だという。ただ明確に区別するには広範囲な掘削調査が必要で、施設がすでにある大飯原発では判断が難しいとも指摘されている。
この日の調査後、調査団メンバーの岡田篤正(あつまさ)立命館大教授(変動地形学)は「私が半世紀以上見てきた活断層とは明らかに違う」と改めて地滑りを強調。一方で、渡辺満久東洋大教授(同)は「別の活断層に伴って動いた」と活断層の可能性を譲らなかった。
問題のずれは、海中で丸く削られた石を多く含む地層(海成層)を切っており、活断層の特徴を持つが、見た目は地滑りの際のずれともよく似ている。
地滑りに詳しい京都大防災研究所斜面災害研究センターの釜井俊孝教授(応用地質学)は「断層かどうかの判断は広範囲に調べてみれば、それほど難しくない」と指摘する。地滑りは、地下水が流れ込むなどした結果、地盤が緩くなり高い所から低い所へ重力で滑り落ちる現象のことだ。釜井教授によると断層と区別する方法は2通りある。
一つは、地滑りのずれは局所的で底が浅いこと。地層全体が動く断層であれば、そのずれは地中深くまで達する。地震を起こす断層の場合、地表付近のずれは地形にかかわりなく、直線状に数キロ続く。
今回の追加調査では、ずれが見つかった海側の試掘溝(トレンチ)で西側に約40メートル、南側に約5メートル掘り進め、関電は「新たな地滑りの証拠が見つかった」と主張した。
もう一つは、地滑りの場合、滑り残った地形をみること。岡田教授は、原発周辺の地形を見た上で「馬蹄(ばてい)形にへこんでいる。これは滑っている地形の特徴だ」と指摘。だが団長役の島崎邦彦委員長代理は「活断層にもいろいろある」と話すなど、見解の溝は埋まりそうもない。(原子力取材班)