2014.7 小江戸川越タイムスリップ その1 | あおいとあさぎの旅行記 blue × blue journey

あおいとあさぎの旅行記 blue × blue journey

カメラの蒼生≪あおい≫と一緒にまわった、ひとりとひとつの旅のきろく。

駅から少し離れれば、そこには江戸の風景。

蔵造の街並みに、徳川家と縁の深い寺院。

夏の緑は濃く、視界を覆い隠し、時代を分からなくさせる。

時を巻き戻す街、川越


時の鐘の音を聞く前に、小江戸の街を散策しましょう。


駅前はファッションビルなんかもあってとても都会な川越ですが、

少し道を入れば、静かで爽やかな住宅街が広がっています。

やがて頭上を通り過ぎるのは屋根から木々に変わり、

足下に木漏れ日が落ちてくることが多くなる。


道を曲がって15分くらい歩けば、最初の目的地が見えてくる。

天台宗川越大師 喜多院です。




三つ葉葵。







と言いつつこちらは喜多院の南にある仙波東照宮

徳川家初代将軍・家康公が亡くなり、彼を駿府城から日光へ

移す途中にこの場所で大法要が営まれ、喜多院の境内に東照宮が祀られたそう。

法要を行ったのは、家康公から絶大な信頼を受けてこの地に呼び寄せられた、

天海大僧正

朱塗りの立派な門構えに、三つ葉葵が尊く光る。

この赤はいつ見ても美しいですね。


寺社仏閣はいつでも深い森に覆われていて、

人が住んでいる区域とは明確に違う領域を作り出している。

神様や仏様がいらっしゃる場所への敬意というか。




あかとみどり。







夏の濃い緑は本当に目に優しい。

少し冷やりとした空気を肌に感じるのが心地よい。

じりじりと遠くで蝉の声がして、そういう夏のひとつの映像。


東照宮にお参りしたあと、喜多院の本堂のほうへ向かいます。

慈恵堂と呼ばれる大きなお堂。

たくさんの人がお参りに訪れていました。







五色幕。










仏教でそれぞれの色が重要な意味を表す五色の幕が、

時折吹く夏風に、その裾をはためかせる。

真っすぐな屋根の直線が美しい、そしてどこかぬくもりのあるお堂です。


ここの別名は「潮音殿(ちょうおんでん)」と呼ばれ、その名の通り

昔々、この広いお堂の中で静かに耳を澄ましていると、やがて潮の満ち引きの

ざざーん…という音が聞こえてきた、という言い伝えがあるとか。

この地が昔は広く深い海だった、ということにも通じているのかもしれません。

海の中から生まれたお堂、とても興味深いです。


喜多院のちょっと不思議な言い伝えのある場所といえば、

裏手にひっそりと、何気なく架かっている「どろぼう橋」。




遠い昔の話。







今はコンクリートのなんてことない橋ですが、江戸のころは木造でした。

あるひとりの泥棒が、町奉行の捕り方に追いかけられて

この橋を渡り喜多院に逃げ込みます。

喜多院は神様の領域であり江戸幕府の重要な領地でもあり、

いわゆる聖域だったので、町奉行はそこに入ることができない。

泥棒はそれを知っていて駆け込んだそうですが、結局寺の人々に捕まり、

心から自分の罪を悔い改めて、善人に生まれ変わって真面目に生きたそうで。

そんな由来から「どろぼう橋」という名が付いたと。




人って大変だね。






橋のふもとの雑木林のなかには

数羽のニワトリが悠々自適に歩いていました。

この橋を渡る人をいつも眺めてはいるが、

そんな人間のことはまぁ自分には分からないけど、といった風。

こういう生活もどこかうらやましく感じる。


さて、喜多院にはお堂だけではなく、徳川家ゆかりの書院や客殿もあって

拝観することができます。





渡る。












長い木造りの渡り廊下は足元がひんやりとして、気持ちいい。

こういう真っ直ぐに整った道には気分も上がります。


さて、この書院には徳川家三代将軍・家光公が生まれた間や、

彼の乳母で「大奥」でも有名な春日局の化粧間などが残されています。

江戸時代、川越は大火に見舞われ、喜多院はほぼ全焼。

直後より、家光公は喜多院の再建を行い、天海大僧正が譲り受けた

江戸城の御殿をここに移築したそうです。

なので、江戸城のなかで行われた重要な歴史の間が今はここにあるわけです。

これぞお江戸タイムスリップ。


歴史に詳しいわけではないのですが、そういうものが紡がれて

時を越えてここにある、ということに対しての畏敬の念みたいなものがある。

自分もその大いなる流れの一部であることを知るというか。


これも江戸城にあったのかもしれない、遠州流の庭園。

縁石と植物の配置。




庭から宇宙。







こういう大きな石を配したお庭を、

どんな意味や意図を込めて作ったのか想いを馳せながら

ぼーっと眺めるのが大変好きです。

たぶん好きな人多いんだろうな。だからこういうお庭はたくさんある。

「何が楽しいの?」と思う人もいるかもしれませんが、別に楽しくはないです(笑)

少し自分の意識が遠くへ飛んで、何か別の時代や次元のものとリンクするような

そういう勝手な感覚が少しだけ心地よい、というくらい。


さて、次は喜多院のアイドル(?)さまたちのもとへ会いに行きましょう。

本当にかわいらしくて、木漏れ日が頭上をやわらかに揺れる様に癒される。

しかしその538体という数には圧倒されます。




五百面相。







五百羅漢像、その名の通り500体以上の羅漢さまが

ずらりと並んだ空間です。

ちっちゃいものから大きいものまでさまざま。

表情もポーズも十人十色。

ふたりで仲良さそうに談笑しているものや、すごい怒っているもの、

酒瓶片手に確実に酔っぱらっているもの、体育座りに顔をうずめて

引きこもっているもの…などなど、本当にたくさん。

その姿はどれも人間らしく、「どうした?何かあった??」と思ってしまうものも(笑)


「深夜にこっそりと羅漢さまの頭を撫でていくと、ひとつだけ温かいものがあり、

それは亡くなった自分の親の顔にそっくり」という言い伝えもあるとか。

なんだかとても心がほっこりする言い伝えです。

最後にとても癒されてしまいました…。


喜多院が川越の「静」だとすれば、これから訪れる中心街は「動」かもしれない。

羅漢さまに見送られながら、まだまだ小江戸川越の旅は続く。

*その2~縁結び風鈴~はこちら