2014.4 聖蹟桜ヶ丘 坂道と花と夕日 その2 | あおいとあさぎの旅行記 blue × blue journey

あおいとあさぎの旅行記 blue × blue journey

カメラの蒼生≪あおい≫と一緒にまわった、ひとりとひとつの旅のきろく。

東京の西にあって、東京の喧騒からひっそりと身を隠す、

坂道の多い穏やかな街。

聖蹟桜ヶ丘は、そんな場所。

*その1~春花~はこちら


午後も深くなり、浅い角度から射し込む暮れの光は

最後の輝きを残したいかのように強く目に沁みる。

森の木立を透かしながら、それは自分の元まで届く。




燃えさかる赤。







つつじの群生が光を浴びると、本当に燃えているかのように見える。

西日が日を追うごとに、強くなっていくのを感じる。


多摩聖跡記念館のあたりは、公園というよりは完全に森の中です。

背の高い木々に覆われて、一本の道が伸びる。

緩やかな起伏を越えていけば、散歩というより軽いトレッキングみたい。





白線。






あじさいのように、小さな花を団子みたいにくっつけた白い花がありました。

たくさんの綿が空中に漂っているような。

ただ、彼らの中には彼らの中だけにある規則があって、

それにしたがって並べられているような気もする。

真っ直ぐな白線です。


たまに、散歩している方とすれ違うくらいで

森のざわめき以外、音がしない。

ここは本当に東京なのか…








緑の季節へ。









軽井沢かどこかにいるみたいですね(笑)。

森の緑は、そんなことはお構いなしに

一年のうちで一番青々とした季節を迎えようとしている。

この営みを今年も繰り返す、そのはじまりの色。


記念館のまわりをぐるりと一周する道を辿って、やがて元の児童公園に戻ってきました。

歩き疲れた足を放り出すため、ベンチに座る。

さきほどまでいた親子の姿はもうなく、とても静かな空間に変わっていた。




二頭の馬。







誰も乗る者のない二頭の馬(一頭はシマウマだけど…)は

微動だにせず、じっと明日を待つ。

この遊具たちの「静」の感じは、いつも何か感じ取るものがあります。

絵になるというか。秘めた想いがあるというか。


一方、人ではないけれど、「動」も見つけました。





星を背負って。






春とともに風に乗ってやってくる、てんとう虫。

久しぶりに見た気がする…。

この背中の斑点模様がとても綺麗なのです。

それに「星」と名付けるセンスも好き。

ご自慢の橙色の背中は花に負けず鮮やかで、春の色のひとつ。


彼を追っているうちに、空の色が、気付かぬうちに少しずつ少しずつ、

赤い絵の具を混ぜていくように変化していく。

気付いた時には、いつも結構太陽が低い位置にいる。





もうそろそろ。






もうそろそろ、もうそろそろその時間がやってくる。

そういう予感をじわりじわりと胸に刻んでいく空の色味。

黄昏時というやつですね。

夕日の見える丘公園に移動しなければ。

棒になりかけた足を叩いて、もう少し先へ行く。


夕日の見える丘公園には、同じように夕日を最後まで見届けようという人たちが

集まってきていました。

その名の通り、ここの公園は空が広くて、

西の彼方、山あいの向こう側にまあるい太陽が沈んでいく様子がはっきりとわかる。

日の入りというのはなんでこういつも、感動的なんだろう。




目。







手前の木々にかぶって、そこからなお激しく身体を光らせ

丸い形を誇示しようとする姿は、強いプライド。

ひとつの黄色い目が、こちらを見ている。

その上を高く、尾を引いていく飛行機雲もオレンジ色に染まらされて、

世界はこのひとつの目に合わせて外見を変えていく。


あまり経たないうちに、山端の向こう側に消えていきました。

最後まで見送れてよかった。


太陽が沈むとほぼ同時に、地上の人間たちが明かりを灯す。

本当にその切り替えのタイミングがぴったりと合っていて、びっくり。

東京だとなかなか満天の星空は拝めないけど、地上に降る人工星はある。




地上の星たち。







ひとつ左に、ひとつ右に。

ぽつぽつと、小さな明かりたちが目を覚ます。

その明かりの下に、ひとつの生活がある。

地上に流れる銀河もまた美しいです。


たった半日で、自然も人も、たくさんの営みを目にすることのできる聖蹟桜ヶ丘という街は、

とても素晴らしいところだと思いました。

喧噪に包まれて、何かを忘れそうなときは、またここに来てみようかな。