それぞれの季節にしか無いものがあるように、
冬にしか見られないものがある。
いつか、誰かが言っていた、
「寒いところには寒い季節に行くのが一番いい」
という言葉が妙に引っ掛かって、
意を決して訪れてみることにしました。
氷の世界へ。
行くぜ、東北!
ということで、豪雪地帯・山形の旅。
2日間で、都会にいるときの数年分の雪を見て、体験した。
もうそれだけで別世界です。
厳しい寒さと雪。白い世界。
その中でなお温かい、人のこころ。
1日目は、いつか行ってみたいと思っていた
山寺(立石寺)へ。
ここは、「奥の細道」をたどり、松尾芭蕉が訪れたことで有名ですね。
山形駅からJR仙山線に乗り、山寺駅で下車。
この日は強風と雪で電車が遅れていたのですが、
ちょうど1時間前の電車がいい具合に来て、無事に行けました。
こんなところも自然の険しさを感じる。
山寺駅から山門まで、歩きます。
途中にはいくつかお土産屋さんが並び、
おばちゃんが声をかけてくれ、山寺に行くなら地図持ってき~
と紙の地図をくれました。
町は雪の中。
白く包まれて。
足下からさくさくという音が聞こえる以外は
静寂そのものです。
空は晴れていて、雪が眩しく、
それでも吐く息はどこまでも白い。
やがて登山口を見つけ、入山。
まずはお寺の根本中堂が迎えてくれます。
境内。
朝早めだったからか、この厳しい時期に
来る人は少ないからなのか、人はほとんどいません。
こんもりと雪に覆われて、人が通る道が申し訳程度に
作られていました。
その上を通らせていただいて、お参り。
境内を横切って奥へ進むと、彼の姿もありました。
おくのほそみち。
「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」
松尾芭蕉がここで詠んだとされている句です。
芭蕉が山寺に着いたのは夏みたいですが、
雪の中でじっと腰を下ろす姿もまた情感が湧きますね。
さて、いよいよ山門。
山寺は、文字通り「宝珠山」という山の中に開かれたお寺なので
奥の院までは基本、登山です。
しかも、冬…深い雪と氷に歩道を覆われて、
歩く場所もままならない。
正直生きて帰れるかだいぶ不安で、実際結構危ない思いも
したのですが(今でこそ笑えますが…)、その分景色は絶景でした。
冬山登山の準備を十分にしていった方がいいです。
靴は滑らないもの、スパイクとか付いてると良いと思います。
新雪ならいいのですが…その下はほぼ氷なので、
ものっすごい滑ります。危ない。。
写真を撮るときも、どうしたって片手or両手を離すことになるので
足場をしっかり確認しないと危ないです。
山門をくぐると、そこから先は、森の中。
深い森。
一面、青い光とコントラストの中を
少しずつ、少しずつ登っていきます。
階段は固く氷に閉ざされて、つるつる滑るので
手すりに必死にしがみついて、ほぼ腕の力で登っていきました。
森の中はしん…としていて、時折とさっ…とどこかで雪が落ちた音が
波紋のように響いてくるのみ。
自分の呼吸の音が、凛とした冬の冷たい空気に溶けて
空に消えていく。
この青い世界は、とても綺麗です。
登っていくと、崖には見たこともない大きな大きなつららが。
真っすぐに伸びて、その鋭さは冬の厳しさを映す鏡。
いくつもの線。
そして芸術。
冬は色のない分、造形美がよく映えます。
こんな景色も。
雪灯籠。
さらに上がっていくと、頭上を覆っていた針葉樹が開けて、
空が見えてきます。
そして、そこに聳える仁王門。
山へ迎える。
門の脇には、祈りのようにカラフルな千羽鶴が飾ってありました。
何かを明確に示しているわけではなかったけど、
この白の世界の中にあって、不思議な輝きを感じました。
凛とした冬の気配に乗って、届けたい人へ届くといい。
祈り。
まだ宝珠山の中腹。
このあとは、蒼空のもとをザクザクと歩いて登って、
青い山を、白い大地を見晴らす場所へ。
冬の似合う東北の、正真正銘冬の景色。
もう少しこの静かな空気は続きます。
*その2はこちら 。