風もなく、じりじりと、太陽が静かに照りつける真夏日。
暑さに頭がクラクラして、視界が滲んでいるのか、
それとも陽炎が立ち昇って歪ませているのか、
焦点の合わない先の景色に、極楽浄土が広がって見える。
蓮の花はそんなイメージです。
蓮と言えば仏教の花という印象もありますが、
何千年も前の人も、暑く輝く太陽の下で、同じものを見て
同じものを感じ取ったのかもしれません。
ということで、蓮の名所、上野の不忍池に行ってきました。
池を覆い尽くす蓮の葉と、その葉に守られるように咲いている
淡い桃色の花。
背丈が高く、終わりの見えない池の姿は
永い時を感じさせます。
池の中心に、八角形のお堂である弁天堂がひっそりと佇んでいるのも
どこか中華的で、少し異国の雰囲気を味わえます。
埋め尽くす。
ずっと先には、上野動物園を望めます。
さて、少し蓮の花について調べてみました。
なんと、2千年も前から存在していたみたいです。
なるほど、悠久の時を感じる理由もなんとなくわかります。
可憐。
仏教では、生まれたばかりのお釈迦様が歩き出したあとに、
その足跡から咲いた花が「蓮」と言われているそうです。
インドでは、極楽浄土は蓮の形をしていると考えられているとか。
また、仏教だけではなく、古代エジプトでも「神聖な花」と
位置づけられているそうです。
花言葉は「雄弁」「休養」「沈着」「清らかな心」など。
見ていると心安らぐ蓮、確かに言葉通りな気がします。
桜の影。
蓮の手のひらのような形をした大きな葉に
桜の影が解き落ちている様子がとても綺麗でした。
夏の昼下がり。
静けさの中に包まれる、じわじわという声の主は、蝉です。
夏の暑さの中では聞いているだけで気が滅入りますが、
夏には欠かせない風物詩。夏を告げてくれる存在ですね。
枝垂れる。
カメラを向けていると、目の前に柳の先っぽが
ゆらゆらと揺れ始めたので、撮ってみました。
緑ばっかりですが、この深い緑の共演も夏ならでは。
桜並木と蓮。
画面の奥に一列に並んでいるのは桜の木です。
上野恩賜公園といえば、桜の名所としても有名ですね。
一緒に咲き誇っている姿を見られることはないと思いますが、
季節の変わり目を、バトンをつないでいるように見えました。
纏うように咲く。
まっすぐに伸びる葉を纏うようにして咲く姿は、
異国のお姫様みたいだなと思いました。
蕾がどこよりも一番高い位置に坐しているのが、凛としていて格好いいな、と。
不忍池は、それほど大きな場所ではないので
蓮を見るだけなら、あっという間に見終わってしまいます。
ですが、カンカンと照る太陽の光を遮るものもなく浴びながら、
流れる汗の一筋を感じながら、揺らめく空気の先にある蓮の花を
じ…っと眺めていると、心が水に浮くような感覚を味わえます。
昔の人はその先に、極楽浄土の姿を見たのでしょうね。
エキゾチックな気分に浸れる蓮の池、また次の見ごろのときにも
訪れたい場所のひとつです。