中公新書、2016年8月発行。著者は、吉川 洋立正大学教授。

 

図書館で借りたが、かなり長く予約待ちした。

 

人口減少が進んで、就労人口が減っている日本。このままでは経済成長は望めないという、「人口減少ペシミズム(悲観論)」への批判と日本経済の課題を示している本。

なぜ経済成長しないといけないのか?という疑問もあり、読みたいと思った。

 

面白かった話。

小学生の時に、日本は資源がないので資源を輸入して、それを加工して輸出することで外貨を稼ぎ、発展しているのだ、と習った。しかし、この本で統計などの数値を示したうえでの説明によると、まったく実態は異なり、国内の旺盛な需要により高度経済成長を実現したということがわかる。

例えば、「3種の神器」と言われた、電気冷蔵庫、白黒テレビ、洗濯機を多くの国民が買った。それまで冷蔵庫は氷を必要とし、洗濯はたらいと洗濯板であった。

当然、当初は年収レベルだった価格も、たくさん売れることにより半額以下になり、ますます多くの家庭に普及していった。こうして日本は発展してきた。

というお話。そうだったのかぁ。

 

では、なぜ人口が減っても、それ程悲観しなくともよいと著者は言っているかというと。

まず、経済成長の鈍化は、なぜ起こるかというと、「需要の飽和」によって起こるからであって、人口減少によるのではない、という理屈。

「需要の飽和」とは、消費者がある物に飽きてしまったり、ひとりにひとつというように行き渡ってしまうって「もう、いらない」という状態になってしまうと、需要は減退するのだという。

だから、常に新しいものをイノベーションにより生みだして、新たな需要を作り出していけば衰退しないのだ。

面白い例が示されている。紙オムツだ。紙オムツは赤ん坊のものという発想では、需要は飽和してしまったが、21世紀に入って「大人用紙オムツ」の売り上げがどんどんのびて、今や赤ちゃん用を上回る売り上げになっている。つまり社会のニーズに応える、イノベーションにより新たな成長を生みだすのである。

 

また、AI(人工知能)の進化により、この先なくなる職業ということが話題になっているが、著者はこれについても、ノウハウや経営力といったソフトの部分やイノベーションを起こすのは、この先も人間の仕事になるので心配することはない、と言っている。

 

スマホもそうだな。そもそもあんなものは、この世にまったく存在しなかったが、いったん普及しだすと、消費者はすぐに新たな機能を求めるようになる。それに追いついていく、というか先を見越して対応=イノベーションしていかないと、スマホといえども、誰も買わなくなるということだ。

 

何か新たな物、ことを生み出す、ということが大事になってくる。