今日は落語の話。カタチもない落語のことを書くのは苦手と渋っていたのですが、先日の落語は猫の噺。「猫定(ねこさだ)」を聴いての諸々を書こうと思います。
落語には本題に入る前に枕(まくら)があります。
自己紹介や本題に入るための流れを造ったり、本題でわかりにくい言葉の説明を入れたりと。この枕が面白い落語家は必ず面白いという定説も。
いつもながら三遊亭鳳楽師匠の独演会へでかけました。
着物好きの師匠は象牙色の夏物。羽織は日本の色辞典で調べると「御召茶」っていうのか? 青緑の夏羽織がなんと涼しげで、遠目からでもいい着物ってわかるんですね。なんとも着ている姿がいいし、さらりとしていてシワにもならず、ふっくら着ている感じがするんです。
「猫定」の枕には、
両国、回向院に「猫塚」があります。ネズミ小僧次郎吉の墓の右側に小さな墓(塚)が並んでします。石の表面に掘られた文字は判読できないのですが、これが猫塚ということ。今でも亡くなった猫のお弔いをする人がいるそうです。
で、そこに一番に入った猫の話という。
へ~! ここで掴みはOK。
関東火鉢は角火鉢の右側に引き出しのある袖机を一体化した、直方体の火鉢です。時代劇でよく出てくるキセルと一緒に使われているイメージの火鉢。置屋のやり手女将が座っている火鉢ですね。
猫がぬくぬくと火鉢の上にいるのでついた名前なのか? 袖机上にお盆の役目をするのが「猫板」と言うんです。
ホ~! とイメージを膨らましていくわけです。
もう少しで川に沈められる運命にあった真っ黒なカラス猫の恩返し? 飼い主の恨みをはらす噺です。
博打打ちの旦那が居酒屋で黒猫を貰い受ける。心優しい博打打ち定吉が一杯やるごとに、「恩返ししろよ」と言い聞かせていく。
猫は魔物というからと思い、サイコロを振って試してみると、サイコロの目が丁(奇数)が出たときは「ニャー」、半(偶数)が出たときは「ニャー、ニャー」と二声鳴く。サイコロが重なる「賽塔(さいとう)」のときは「プー」。何度、繰り返しても当てる黒猫。
博打打ちの定吉は懐に猫を入れて連れ歩くことから「猫定」とあだながつく。定吉は猫で羽振りがよく、周りからも慕われ「猫定」と呼ばれる親分さんだ。
猫は「クマ」と名前をもらい猫定に可愛がられる。
猫定が江戸にいては都合が悪いことができ、二ヶ月ばかり旅に出ている間に女房が間男をつくる。猫定が江戸に帰ったくると、亭主が邪魔になり女房は間男に殺しを依頼。
土砂降りの采女ヶ原。ざぁーと降りしきる雨。一杯立ち寄ったことを後悔しつつ雨の中を歩く猫定。間男がそっと後をつけている。立ち小便をしているすきを狙い、竹槍で脇腹をブスリ。懐にいた黒猫がダーっと間男目がけて飛び出して来る。
と噺は続いていきます。
ゾクゾクさせるのは噺家の技。登場人物が多いこと。人物描写と情景描写がしっかりしていると、どんどん物語が情景となり、人物がイメージされて噺の中に引きずり込まれていきます。
今回、登場してもらった黒猫「ポンタ」もその一匹。雨の日にママに拾われて、可愛がられたポンタは立派な猫になりました。病気をしたママに寄り添って励まし、お客さんにも可愛がられています。
子猫の時のポンタ。
おまけ
さて、実家の黒猫はいかがかものでしょう? 毛の色も変わり果てた黒猫。獣医さんに余命一カ月と言われた猫は、よく食べ、よく寝て、ようやく黒猫らしく真っ黒になりmした。今や暴れん坊です。
う~、こやつは恩返ししそうにありません。猫にも色々とあるんですね。