ふと辺りを見渡すと、目視できる程の距離にホテルが3件。さすが名古屋の栄町、都会だなと感心した。
いやしかし、肝心なのは空室の有無と宿泊料金である。近距離なので、徒歩で尋ねることに。
ホテル① 満室!
ホテル② 満室!!
ホテル③ 満室!!!
3球3振である…>_<…
いやいや、こんなところでくじけてたまるかと、数時間前にキム兄さんが発見してくれたエコホテルに問い合わせようと、携帯を取り出す。まだいける!
電話するや否や、満室!!!!
いやいや、負けてたまるか。次だ!必殺、名古屋駅前宿泊検索だ!!
すべて満室・・・。どうした、今夜の名古屋。まさか、千葉県民にだけ冷たいのか。
突然、不安に駆られた。このまま今夜は家なき子か。三河さんが恋しくなった。キム兄さんに会いたくなった。辺りにはネットカフェもカラオケ店も見当たらない。
ドラゴンボールで、ブルマの父親が経営するカプセルコーポレーションの製品である『ホイポイカプセル』があればなー、などとまたもや妄想が膨らむ。
ボケーっと途方に暮れていた時間も含め時計を見ると、すでに日付が変わろうとしていた。
もう、近場のコンビニで一晩中立ち読みでもしようかな!
と、暗闇の中に明るく光る『7』の看板目指して歩き始めたときだった。ふと路地裏にぼやっと光る看板を発見した。目をしかめてよく見てみると、○○ホテルと書いてある。
多分無理だな、今夜は名古屋中の宿が埋まってるさ、などと半信半疑でとりあえずその場所まで向かうことに。
しかし、看板が見えていてもけっこう距離がありそうだ。また、たとえそこまで歩いていってもまた満室な気がする。今夜は全戦全敗するという、なんだか精神的に疑心暗鬼になっていた。もう歩く気力も残っていない。
そこで、電話確認をしようと携帯を取り出すと、残りの充電1%…>_<…
最後の望みを託して、ホテル名から番号検索して、いざコール!!
「今夜泊まりたいのですが、空室はありますか?」
「大変申し訳ございません、あいにく満室となっておりまして・・・」
おーーーう!!一晩中立ち読み確定!!
と、その時だった。
「あっ、お客様、たった今シングルタイプのお部屋にキャンセルが出たようです。いかがなさいますか?」
「お願いします!!!」
「一泊7千円となりますが、よろしいですか?」
「はい!お願いします!」
なぜかテンションが高まっていて、この時ばかりは金銭感覚に狂いが生じ、即決してしまった。もう歩きたくない、夜勤明けから一睡もしていない、早くベッドに横になりたい気持ちでいっぱいだった。
電話を切ってしばらくすると、私より先に携帯があの世へ行った。しっかりと今日の仕事をこなしたな、携帯。さすが世界に一台だけの、みなモン直筆サイン入り携帯だ、などと自分の携帯を誇らしく思った。
ふと財布の中身を確認すると、所持金7300円。大変際どい(笑)
あらかじめ往復乗車券を購入しておいてよかった!
おーーーう!!と、さっきとは違う気持ちの掛け声で宿に向かう。受付を済ませる。5階の部屋へ向かう。鍵を開け、中に入る。荷物を置く。とりあえずベッドに横になる。
気が付けば、朝の6時だった。
8時には東京へ着かなければならない。ということは、6時半発の新幹線に乗らなければ!
かなり慌てふためきながら準備開始!といっても、昨夜この部屋に着いた状態のままなので準備も何もない、そのままである。
部屋の備品等、何ひとつ使っていないし動かしてもいない。シャワーも浴びず、トイレにも行っていない。ベッドに横になったが、布団には入っていないしシーツもそのまま。
なんだか7千円の宿に泊まったからには、何かしなければもったいないような気がしてきた。
そんなわけで、結局は顔を洗い歯磨きをしただけで、他は一切動かしていない状態である。
小学生の頃、担任の先生がよく言っていた言葉を思い出した。来た時よりも美しく!
その言葉を胸に、私はホテルの部屋を来た時よりも美しくして帰ろうと、時間がないくせに思った。
完璧である。私が部屋に着いた状態そのものである。きっとこの部屋を清掃に来た係の方は思うだろう。あれ、この部屋ってお客さんが一泊したよね?と。
さあ、係の人。気付くかな、部屋の変化に!私は部屋に到着したときの状態にしている!唯一、1ヶ所だけを除いて。
さあ、勝負だ、係の人!どこが変わっているのか!
まあ、すぐに気付くだろう。歯ブラシがなくなっているだけである。(笑)
そして、駅まで猛ダッシュ。
こうして、私の初めての名古屋遠征が幕を閉じた(^_^)