矢場久根総長は、ニロの言った言葉が気になっていた。
総長「保険?」
ニロ「ええ、近いウチにラッパッパは、おそらく私たち夜瑠乃香にも影響を及ぼすでしょうからね」
総長「影響ねぇ。それで、あとどのくらい我慢すりゃいいんだよ?」
ニロは天井を見上げて少し間を空ける。
ニロ「あと半月くらいが、ちょうどいい目安ですかね」
総長は不満そうにイスに座った。
総長「あと半月も待たねえといけねえのかよ」
ニロ「ええ、半月後、ラッパッパのメンバー1人1人を潰していく。これが最善の策だと思いますよ」
総長「最善の策か……まあいい、半月待とうじゃねえか」
ニロは微笑をする。
ニロ「矢場久根さんとは、これからも末永くお付き合いをしたいですからね」
そうつぶやきニロは部屋を出て行く。
ニロが部屋を出て行くと、サナエが総長のもとへやってくる。
サナエ「総長いいんですか、あんな奴と同盟を組むようなことをして」
総長「いいんだよ。どうせあっちはウチらを利用してる気でいるからな。逆に利用してやらなきゃなあ」
高笑いをする総長。
翌日から優子は度々、ラッパッパのメンバーには、頭痛の追加検査と嘘をつき、ブラックを尾行していた。
普段歩くブラックは、一般人と同じスピードで、優子は普通に尾行できていた。
ブラックも優子が尾行していることは、一切気付いていない。
そんなある日、ブラックはある場所へ訪れた。そこは先日優子が検査を受けた病院だった。
そのままブラックはある場所へ向かう。優子はその場所を見て、目を丸くした。
優子「えっ、アイツ?……」
しばらくして、ブラックが病院から出ようとすると、目の前に優子が立っていた。
ブラック「大島さん?」
優子「ブラック……お前ってさ……腹に子どもがいるのか?」
重たい口調の優子。
優子が放った言葉に、ブラックは一瞬耳を疑った。
あのとき優子がみたのは、ブラックが産婦人科の受付口に向かった光景だった。
ブラックは今まで以上に悲しい目を優子へ向ける。
ブラック「知っちゃったんですね。大島さん」
ブラックはすぐさま立ち去ろうとしたが、優子はブラックの腕を掴む。
優子「何か協力できるかわかんねえけど、ウチらは協力する。だからブラック……」
ブラックは一粒涙を流す。