私たち一行はある目的地を定め、外に乗り出した。
懐かしい景色に少しジーンとしてしまう。
しかし、このまま突っ立っているわけにはいかない。
私たちは一刻も早く駆動しなくてはいけないのだ。
ふよさんのため、クラスメイト、いや、先生たちも含めた学校のみんなのため。
そしてもしかすると世界のために私たちは動かないといけないかもしれない。
そんな重荷を背負いつつも私たちは素早く駆けだした。
しかし、しょっぱなから邪魔が入る。
「見て!」
学校を出て程なくして。
町中を走り、駅に向かう私たちだったが、その上空に異様なものが見えた。
「何だあれ?!」
海谷も声を上げ、私たちは思わず立ち止まった。
私たちの周囲を歩いていた人たちもつられて空を見上げ、周囲にどよめきが起こる。
私たちが見上げる先、どんよりとした曇り空にぽつんと黒い丸が見えた。
その丸はまるで穴のように見える。
ここから見てサッカーボールくらいのサイズがあった。
空の色がのっぺりとしているので、私がいる場所からその丸までの距離ははっきりしない。
しかし、それは、何か不気味で、光もしなければ、動きもしなかった。
通行人の一人が携帯で写真を撮り始める。
私も携帯があったならそれで写真を撮っておきたかったが今の私の手元には携帯がない。
一体私の携帯はどこに行ったのだろう?
ズボンのポケットに入れて置いたのに。
これでは家族と連絡が取れない。
私の家族は無事だろうか?
「何だ、あれは?!」
「何か出てきてない?!」
私が家族の顔を思い浮かべていると、不意に周囲からそんな声があがった。
顔を上げた先のものを見て、私は思わず息をのむ。
「これ、やばいんじゃないか?」
私の横で海谷が呟くのが聞こえた。
今私の視線の先にある、空にある黒い丸。
それは本当に空にあいた穴のようだった。
私たちの周りにいた人々が、あまりの異様さに逃げ出していく。
ただ私たちだけはその場を動かなかった。
穴の中から表れた、まるで蜂の大群のような大量の黒い粒。
それらはどんどんと近づいてくる。
そして近づくと同時にその姿もはっきりとしてきた。
コウモリのような羽を羽ばたかせ、手には剣や槍など武器を握っている。
そしてどこからか男の人が助けを呼ぶような声がした。
視線を今私たちが向かおうとしていた先、駅のある方に向けると、私たちが立つ大通りの横道からスーツ姿の男性が飛び出してきた。
彼は青ざめた顔をして、「助けてくれぇ!!」と叫びながら猛スピードでこちらに向かってくる。
その様子は尋常ではなかった。
思わず固まってしまう私たち4人を突き飛ばしその人は走り去っていく。
そして男性が飛び出してきた横道から表れたのは……
「ガーゴイル・・・・・・」
忘れもしない悪魔の姿だった。