RAINBOW STORY - 150 Vicarious victim bottle | Another やまっつぁん小説

Another やまっつぁん小説

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 ネックレスを売っている店の隣の店も、建物からせり出すようにして商品が並べられた台が置いてあり、その台の横にはどこか謎めいた笑みを浮かべた目の細い男が立っている。
 そして台の上に置かれているものはなにやら不思議な透明の液体が入った瓶。


 女子3人を置いて、俺はその店へと近づいてみた。
 店員らしき例の細目の男が俺を見る。


「おや。お客さん冒険者ですね?」
 男は相変わらず怪しげな笑みを浮かべたままいった。
 その口元はほとんど動いていない。
 かなり不気味だ。
 この店員のせいかこの店には客が少なかった。


「お客さん、お目が高い。みんな私を見て、この店には近づかないんですよ?」
 男は口の片端を器用につり上げた。
 この男はどんな笑い方をしても不気味に見える。
 背は俺よりも少し低いけれど、年齢は俺よりは結構年上だろう。
 ただ、彼の見た目からはっきりした年齢を判別するのは難しい。
 30歳くらいかな。


「街でのんびり暮らすには私が売っているものはあまり縁がないんですけどね。冒険者ともなれば何が起こるかわからないでしょう? これ、持っておいて損はないと思いますよ?」
 男は台の上に並べられていた瓶を手に取り、俺の顔に向けて差し出してきた。


 透明な瓶に俺の顔が歪んでうつり、瓶に入った同じく透明の液体がコポコポと泡を立てているのが見える。
 そして次の瞬間その液体の中に目玉や、髪の毛、鼻や唇が浮かんでは消えた。
 赤い毛や、赤い瞳、これは俺の色?


「ふふ、驚きました?」
 すっと俺の前から瓶が消え、不気味な笑顔がかわりに見えた。
 驚く俺を見て、男は楽しそうに笑い、瓶のふたをなでた。
 瓶は赤や青などいろいろな色をしたガラスでふたをされている。
 でも、台に並ぶ瓶の中身はどれも同じようだった。
 みな泡をたてており、普通の液体ではないことが伺える。


「これ実は中身がモンスターなんです」
 男が不意に口を開いた。
「ここは身代わり屋。身代わり一瓶1000G、いかがです?」
「身代わり?」
 俺が聞いても男は不気味な笑顔を顔に張り付けたまま何も言わなかった。
 その細い目は一体何を見ているのかわからない。 


 それにしても1000Gは少し高い。
 これでろくでもないものをつかまされたらとんでもない無駄遣いだ。
 ここはただ立ち去った方がいいかもしれない。


 リリスやフラウのいる店へ戻ろう。
 そう考えて、俺がきびすを返そうとしたときだった。
 がしりと腕を捕まれる。
 やはり男が俺の腕を掴んでいた。


 そして俺は思いきり迷惑そうな表情を浮かべ、男を睨もうとしたのだが、彼の表情を見て俺の顔はひきつった。
 男の顔に終始張り付いていた笑みが消え、細かった目がわずかに開いていたからだ。
 ぎょろりと覗いた黒い目に俺は見つめられる。


「半額にしときましたから、持っておきなさい」
 男は俺の手に無理矢理瓶を持たせ、背中を強く押した。
 予期せぬことに俺は大きくよろけてしまい、人々の行き交う通りに思い切りつっこみそうになる。    

 そこをどうにか踏みとどまり、後ろを振り返ると、男の姿はなく、俺の手の中の瓶だけが変わらずにあった。