Another fantasy - 63 - | Another やまっつぁん小説

Another やまっつぁん小説

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 先ほどのように僕が先、シーが後ろにつくような形で僕らは道を進む。
 


 できるだけ静かに歩きたいとこだけど相変わらず地面は泥だらけで一歩踏み出すたびに泥の跳ねる音がした。
 でも、なるたけ目立たないよう、前に進むのに困らないくらいの小さな光球をひとつだけ浮かべることにする。


「シー、大丈夫?」
 明かりを一つにしたことで、シーの方はかなり薄暗く、後ろがほぼ見えない。
「・・・うん。」
 それでもシーは泣くことはなく、ただ静かに返事を返してくれた。


 小さいのにずいぶんと強い少年だなぁと思う。
 僕がシーと同じくらいの年の頃はどうだったか・・・。
 僕が不安を振り払おうという意味合いもこめて、子供時代を振り返ろうとしたときだった。


 道の横に妙なくぼみが所々できていることに気づく。
 そのくぼみは作りかけて途中でやめた道みたいで、人が3人ほど入れるスペースがあった。
 くぼみには泥が溜まっている場所や、特に何もなく泥も少ない場所などいろいろあったが、最初は気にも留めなかった。



 しかし、歩くうちに考えてみると、今僕らがこうして通っている道は人一人が通るのに一杯一杯で、もし反対側から誰か来たら元来た道に戻らないといけないような状態だ。
 そんなときにこのくぼみに入れば、他の人が来てもあまり後戻りせずにすむというわけだな。
 なるほどさっきのくぼみは道を通る際の工夫ってわけか。
 


 ・・・いや、待てよ。
 他の人って一体誰が通るって言うんだ?
 


 そこで僕はとてもいやな考えが浮かんだ。
 僕はこうやって考えている間もペースを落とさず前に進み、前もきちんと見ていたのだが、音に関してはまったく無防備になっていた。
 つまり、音を小さくしようとしていた足音も普通にたててしまっていたし、周りの音に気を使わなくなっていたということだ。
 


 そして嫌な考えというのは、もしかするとこの道はさっきの泥お化けが常時巡回しているのではないかということ。
 歩き回っている泥お化けがすれ違うときに、道に所々あるくぼみを利用するのではないかということだ。
 


 僕は耳を澄ませる。
 すると恐れていた音がした。
 


 僕の歩く音、そしてすぐ後ろから聞こえる規則正しいシーの足音と混ざって、不規則な泥の跳ねる音が微かに後方から聞こえてきている。
 僕は怖くて、今行なっている動きを変えたりやめることができなかった。
 振り返ったりなんかしたらきっと恐ろしい光景が見えるに違いないと思うと、どうにも後ろを向くことができない。


 僕は気づかないフリをしながら歩いた。
 もしかしたら泥お化けは僕が歩くスピードより動きがずっと遅いかもしれない。
 そしたら追いつかれることもないだろう。
 それに目もよく見えないのかもしれない。
 そしたら、どうしても振り切れないときはくぼみに逃げ込んでしまおう。
 


 僕はいくつかの仮説を元に、ちょっとした対処法のようなことを思い浮かべ、幾分か安心できた。
 僕は少しずつ歩くペースを上げる。
 シーは黙ってそれについてきた。
 


 声を上げてしまうことなど、目立つ音を立てることが一番いけないことだと思っているかのようで、シーはまったく何もしゃべらない。
 いや、もしかしたら彼も後ろからする僕らとは違う泥音に気がつき耳を済ませているのかも。


 しかしスピードを上げたにも関わらず、少し歩くごとにだんだん泥音は大きくなる。
 後ろの音が大きくなる度にスピードを上げるが、泥音が小さくなることはない。


 道の果ては見えず、まるで延々とこの追いかけっこが続くような気がした。