「これは一体何。」
ずばり単刀直入に聞いてみることにした。
「ふへへへ。さすが冒険者やってるだけはあるな~。驚くのは最初だけってかぁっははは。んまぁ、3人いたらなんか落ちつかねーべ?ほれ、“僕”と“私”はさっさと仕事に戻りんさい!くっくっく・・・。」
ネアルはひとしきり笑いながら、後からやってきた二人を追い払った。
「くくく、この笑いはなぁ・・・ちょっと今の俺じゃどうにもなんないから、へっへっへ・・・。気にしない方向でな、ふふふふ。」
ネアルはそう前置きして話し始めた。
こいつは一体何に対して笑っているのかという疑問は今はおいておくことにしよう。
で、ネアルの話は笑いが混じってなかなか先に進まず、分かりづらいこと、この上なかった。
仕方ないので、ローブのポケットにしまっておいたメモ帳にネアルの話しをまとめてみることにする。
で、このメモを読み返してみると。
まずネアルは僕らと同時期に学校を卒業し、放浪の旅に出た。
で、いろいろあったらしい。
この“いろいろ”の部分は話すと一ヶ月はかかるといわれたので、話そうかとも言ってくれたけど丁重にお断りした。
で、そのいろいろの間に、いろんな危ない魔法を身につけたり怪しげな術を覚えたり、魔法関連の道具もたくさん見つかったし、知識もついたし、それなりに稼ぐこともできたという。
そして、アイテムも集まったし、けっこうな魔法の腕も手に入れたということで、貯めたお金で店を開くことにしたんだとか。
で、店を開いた理由が、しばらくこの町でゆったりしたかった、って言うのと、後継者を作りたいからだという話。
後継者ってところで僕は、結婚して子供でも作るのか?!と勘違いしたら、本気で大笑いされた。
どうやらネアルの言う後継者っていうのは才能のある人を適当に寄せ集めて、自分の会得してきた魔法やら何やらを伝授して、自分みたいな人を増やすということらしい。
もちろん、ネアルのような、といっても魔法の腕を受け継ぐだけで、性格までは受け継がない・・・らしい。
そんで、とりあえず活動の拠点としても生活を支えるためにしても、店を立ち上げた。
が、しかし、この店は町の外れだし、店(と本人の)怪しげな雰囲気やちょっと回りと比べて異質な空気から人は近寄らず、土地や店兼住居にする建物は確保できたものの誰も雇うことができなかったそうな。
で、ネアルとしては魔法の研究もしたいし、店もしたいし、後継者探しもしたいのに、手が回らなくなってしまった。
そこで、思いついたのが自分を増やすこと。
そして、旅で身に着けた術やら何やらを駆使して自分の分身を作り上げ、ネアル3人で働いているということらしい。