「お!二人とも早かったな!」
有栖は帝と黒が部屋に入ってくるなりそう言った。
「早いって、俺らの能力のことはわかってるだろ?」
「ん?まーな!」
帝の言葉に笑顔で答えた有栖だがすぐにその顔は真剣なものへと変わった。
「それでだな。メールで連絡したが犯人はほぼ確実に伊家だ。」
「何でそこまで言い切れるんだ?」
有栖の言葉に帝は怪訝そうな顔を浮かべる。
「あぁ、そこなんだが、どうやら伊家のバックに誰かいる。というか伊家自体知らず知らずのうちに誰かに操られてる気がするんだ。張ってて伊家からは何か異様なものを感じた。」
有栖はそう言いながら机の上においていたパソコンを開き、伊家たちの会話の内容を打ち込んだものを見せた。
「これは俺が張ってたときの伊家たちの会話だ。」
帝は有栖からパソコンを受け取り画面を見た。
黒もそれを横からのぞく。
「・・・これは・・・。確かに明らかにおかしいわね。」
黒は眉間にしわを寄せる。
「で、薬の取引場所の調べはついてるのか?」
帝はパソコンを返しつつ聞いた。
すると有栖はもう一度パソコンを操作し、帝と黒に画面を見せる。
画面には島野町の地図が表示されており「自然大好き公園」から少し離れた場所に赤く色づけされた建物があった。
「この赤く表示されてる場所が伊家の職場だ。やつはそこで・・・」
ここで有栖は少し言いづらそうに間を空けた。
「そこで?」
黒と帝は続きを促す。
「そこで・・・ホストやってる。」
「ハァ?!」
「えぇ?!」
有栖の衝撃的な言葉に二人はそろって声を上げた。
伊家は別に不細工ではないが、別にイケメンというわけではないし、性格は不細工そのものだ。
そんなヤツがホストなんて二人にはにわかには信じられない。
「ってか、そんなホストクラブなんて誰が行くんだ!」
「いやいや、帝。別に伊家だけがホストじゃないんだからさ。それに島のホストクラブはここだけで、意外と繁盛してるみたいだし。」
そうやって帝に言って聞かせる有栖の横では黒がとてもいやそうな顔をしている。
「・・・つまり、そこへ潜入しないといけないわけ?」
「あぁそうなんだが・・・。俺たちはこの学校の生徒会長や副会長なわけで、そんな店に行く、ましてや働くなんてしたらどうなることかわからない。まぁ俺たちが直接行けば面倒なことになるのは目に見えてる。誰かを刺客として送り込めばいいわけだ。」
「ふ~ん、誰を送り込むんだ?」
話しを聞いていた帝がそう聞いた。
その顔はどうせ考えてないんだろ?と聞くような顔だ。
「う・・・考えて・・・ない!!後は考えてくれよ。帝の頭ならすぐだろ?」
きっぱり言うと有栖は帝に話を投げた。
有栖は馬鹿ではないがはっきり言って賢いというわけでもない。
詰まったら自分より頭のいいものにパスする。
要するに有栖は頭脳派というより行動派なのだ。
帝はあきれたような顔をしながらも顔見知りたちの顔を思い浮かべた。
女でホストクラブに送り込めるようなヤツはいない。
となると男だ。
それなら顔がいいヤツでないといけない。
まずさっき見たおっさんが思い浮かんだ・・・論外。
陽先生・・・って先生はだめだ。
結構顔はいいんだが、惜しい。
「・・・あ。」
「お?誰か思いついたのか?」
帝の顔を見て有栖は期待を込めた顔で聞いた。
そして帝が思いついたものの名を伝えると、有栖と黒は黙ったまま何も言わなかった。