「また呼び出しかよ。」
有栖が不機嫌そうに言い、ノートパソコンを閉じた。
3人がヴィルトゥース学園へ入学して早数週間がたつ。
その短い間にも校長からの依頼として、3人は毎日のように仕事をこなし、今ようやく仕事が減ってきたところだった。
「え~っと、アンケートの回収と集計、グラフ化・・・。うん、これはOK。それからこの意見も通ったし、朝会の挨拶も考え終わった・・・。各委員会もちゃんと仕事してるし、マナーやルールのポスターもできた・・・と。」
黒はブツブツ言いつつ歩きながらパソコン画面を見ている。
「今日の放課後はようやくゆっくりできると思ったのにな~。」
有栖は残念そうに小さくため息をついた。
今3人はいつものように生徒会室へと向かっている。
と、いうのも授業が終わると同時に生徒会室への呼び出しメールが届いたからだ。
ここ何日か届いていなかった呼び出しメール。
そのメールの発信相手はさまざまで、教頭や、各委員会担当の教師などなど。
そして一番多いのが校長からの呼び出しだ。
と言っても校長本人が姿を見せたことは一度もなく、現れるのは名前と性別以外不明の赤眼の男「紅謳 羅威(クオウ ライ)」。
かなりインパクトのある見た目と名前なのだが、不思議と呼び出されたとき以外に彼の姿を見ることは一度もなく、教師たちでさえも彼の存在を知っている人はほとんどいなかった。
「・・・ったく。いつになったら終わんだよ。」
帝もたいそう不機嫌そうである。
3人とも生徒会の仕事がこれほどまでに多いとは思っていなかった。
「あの伊家ってヤロー・・・。あいつがいなけりゃ・・・。」
そう呟く帝からは殺気がたっている。
有栖と黒はそれを見て心の中で手を合わせた。
(ご愁傷様・・・。伊家よ、さらば。)
:
3人が生徒会室へつくと既に紅謳は部屋に来ていた。
「来たか。」
彼はソファに座ったまま、3人に早く座るよう促す。
3人が黙って向かいに座ると、紅謳は話し始めた。
「今回の依頼は薬の密売人の発見。そして薬の抹消だ。」
「ハ?!」
「え?!」
紅謳の言葉に3人はそろって驚きの声を上げた。
「そんなの生徒会の仕事に関係あんのか?」
有栖が驚いた表情のまま聞く。
「あぁ。」
紅謳はこともなげに返事を返し、話を続けた。
「その密売人というのがこの学校の生徒なんだ。」
と言うと彼はどこからか3枚の写真を取り出し、机の上に並べた。
「あ!!」
「コイツ!?」
その写真を見て3人は再び驚きの声を上げた。
写真に写っていた人物。
一人は気の小さそうな少年。
二人目は先日壊滅させた不良グループのリーダー、白。
そして3人目は伊家だった。
「この3人が容疑者だ。君たちにはこの3人に接触し、白か黒か確かめ、薬の仕入れ場所や黒幕について調べてほしい。こちらでも調査は進める。何かあったらここに連絡すればいい。頼んだぞ。」
紅謳はメールアドレスの書かれた紙切れを写真と一緒に残し、部屋から出て行った。
普段ならもっと情報はないか聞くところだが、今回は3人とも紅謳を引き止めなかった。
なぜなら3人はそれぞれ犯人の見当がついていたからだ。
そして3人はそろって写真を指差した。
「コイツが犯人だ!」
3人は全員違う人物を指差していた。