3人が自然公園に着いたのは、日暮れ時だった。
夕日をバックに3人が向かい合っているのは、何百人といる不良グループだ。
「テメーらが最近面倒ごとを起こしてるっつーカス共か?」
最初っからプチキレモードの帝は、何百人の不良共に恐ろしく傲慢な口調でたずねる。
その言葉を聞いて、不良共がいきり立った。
その中の一人が
「んだとゴラァ!テメーら3人だけのくせにでけー口たたいてんじゃねーよっ!!」
と鼻息も荒く叫ぶが、帝は余裕の笑みで
「ハッ。弱ぇやつがキャンキャン吠えてんじゃねぇよ。負け犬(ザコ)の遠吠えほど見苦しいもんはねーぞ。」
と言い返す。
さらにいきり立つ不良共に、間を取り持つため有栖が声をかけた。
「なぁ。テメーらのリーダーってのは誰だ?話あんだけど。」
すると不良どもの中から一人の男が進み出た。
「俺がリーダーだ。何の用だよ?」
「お前が、白 獅凰か?俺はヴィルトゥース学園の生徒会長、有栖 零斗だ。んで、そっちの暴言ヤローは・・・」
「鋼 帝だ。副会長をやってる。よろしくな?負け犬(ザコ)共。ま、テメーらごときとつるむ気なんてねーけどな。」
有栖の言葉をついで名乗った帝の、余計な一言のせいで、一旦静まった不良共がまた騒ぎ出す。
「帝!テメーは黙ってろ!話がややこしくなるだろーが!」
有栖が怒鳴ると、今度は不良どもの矛先が有栖に変わった。
「テメーも黙ってろよ!アリスちゃ~ん!!」
「そーそー、女の出る幕じゃねぇぜー?」
帝にザコ呼ばわりされた男が言うと、ほかの不良が囃し立て、周りの不良共がげらげら笑い出した。
その声を聞いてしまった帝は、先程の態度とは打って変わってビクリ、と固まり、ぎちぎちと音が出そうな動きで有栖を振り返る。
さっきまで黙って話を聞いていた黒もバッと有栖の方を見た。
有栖は無言。
凍ったような無表情で、不良どもの方を見ている。
不気味な沈黙の後、ふいに有栖の口角がにぃ、と上がった。
それを見た途端、帝と黒が有栖の周りから飛び退く。
すると、有栖の近くにいた不良共が糸の切れた操り人形のようにカクン、と崩れ落ち始めた。
有栖は嗤う、それを見ながら、とても楽しそうにくつくつと。
その嗤いは、帝が鳥肌を立てるほど冷たく危険な嗤いだった。
バタバタと倒れていく不良と、おののき逃げ惑う不良どもを見て、有栖はさらに嗤いを深めながら、ポツリと
「散らされた虫けらみたいだな。」
と呟いた。
見えない力の波が有栖を女呼ばわりしたやつらに及ぼうとした。
その時
「零斗!そいつらは俺の獲物だっ!!手ぇ出すんじゃねぇ!」
帝が叫んだ。
途端、力の波がピタリと止まった。
「・・・・・・・・・」
無言で振り返る有栖の顔はもう嗤っていなかった。
「そうよ、零斗。暴れるのは帝の役目であって、あなたはそれを止める役でしょ?」
黒も同意(?)する。
「・・・・・そういやー、そうだったな。」
そう言った有栖はもう普通に戻っていた。
「俺としたことが。女って言われてちょっとムカついたからか?」
ブツブツと一人で喋っていた有栖はバッと顔を体ごと白の方へ向ける。
「そうだ!まだ話の途中だったな。最初からやり直すのは面倒だから、用件だけ言うぞ。俺たちはお前らを制圧しに来た。だからおとなしくしてろ。以上!」
有栖の暴走を見て唖然としていた白はその言葉に我に返った。
「ハァ?!ふざけんな!何で俺たちが制圧されなきゃなんねーんだよっ!理由を言え!理由を!!」
「知るか。」
キレたように喚く白をバッサリ切り捨てたのは他でもなく、帝だった。
「理由なんてどーでもいいんだよ。俺たちはただ“暴れに”ついでに依頼を解決しに来ただけだ。」
「っざけんな!!理由もねーのに俺らがおとなしくやられるとでも思ってんのか?!」
さっきよりもでかい声で喚いている白に帝は
「うるせーなぁ。」
と、眉をしかめながら言う。
そして
「そんなに理由がほしいなら俺がつけてやるよ。」
と言うと、それはそれは見下したような視線+バカにするような口調と笑顔で
「テメーらがカスでゴミでうっとーしいから。」
・・・一瞬空気が凍った。
そして
「テメーら。ブッ殺してやれ!!」
白の叫びと同時に不良共が帝めがけて突っ込んできた。
「零斗!ちょっと遊んでくる!何人殺していい?」
「一人も殺すな!全員生かしとけよ!!」
「チッ、まぁいい。力の制御、頼んだぜ。」
そう言って帝も不良共の中に突っ込んでいった。